【歌詞考察】[Alexandros] VANILLA SKY (Feat. WurtS)に込められた未練と再生の物語とは?比喩表現とコラボ背景を徹底解釈!

「VANILLA SKY」というタイトルの背景と象徴性

『VANILLA SKY』というタイトルには、単なる語感の美しさを超えた深い意味が込められているように思えます。英語圏では「Vanilla Sky」は“バニラのように淡く柔らかな空模様”を指し、映画『バニラ・スカイ』(2001年公開)では、夢と現実の曖昧さを象徴する重要なキーワードでもあります。

本楽曲でもこのタイトルは、現実と空想の境界を揺れ動く心情や、変わってしまった関係性に対する未練と幻想を象徴しているようです。青く澄んだ“未開の空”=まだ誰にも染まっていない心の余白、あるいは理想化された恋の記憶。そうしたイメージがタイトルから漂っています。

また、[Alexandros]とWurtSという異なる音楽性をもつ2組が描く“空”は、音楽的な自由さや遊び心を表すキャンバスのようでもあり、このタイトルが抽象的であることにより、より多層的な受け取り方が可能となっています。


歌詞に描かれる“恋愛と葛藤”の心象風景

歌詞全体において印象的なのは、「I got my feeling hanging down to the sky」「U just stuck in my head」など、感情のやり場をなくした主人公の葛藤です。相手に対する未練がありながらも、自分の気持ちをどう伝えていいのか分からず、心が空中に浮かんでいるような不安定さが描かれています。

特に「やっぱ未練なんてないって言ったのはウソだった」の一節からは、強がって前に進もうとしていたものの、内面では未だに忘れられない相手が存在しているという切なさがにじみ出ています。

また、「君が鍵を閉めたから僕は開けられなくなった」という比喩的な表現は、恋人との関係において自分ではどうしようもない“閉ざされた感情”を象徴しており、もはやどうしようもできない距離感と孤独感が滲んでいます。

このように、歌詞は恋愛の終わりに直面したときの“揺れる心”をリアルに描きつつ、聴き手自身の経験と重ね合わせる余地を多く残している点が特徴です。


“This is a Car, number 3?”など記号的表現の意味を考察

歌詞冒頭の「This is a Car, number 3?」という一節は、一見意味不明に思えるかもしれませんが、実はこの表現こそが本楽曲の鍵を握る重要なメタファーだと考えられます。

「Car」は移動する手段=“前に進むもの”の象徴であり、「number 3」は恋愛における順番、または代替可能な存在(ex: 3番目の選択肢)として読み取ることができます。「君は僕を3番目として見てるのか?」「これは本当に進むべき車なのか?」という、曖昧な関係性への不信感と焦燥がこの一文に凝縮されているようです。

また、「君が鍵を閉めた」という表現とあわせて考えると、“車=関係性”が閉ざされており、自分では進むことも戻ることもできない…そんな閉塞感を強調するための装置として使われているのかもしれません。

このような記号的な表現が歌詞に散りばめられている点も、[Alexandros]らしい文学的なアプローチといえるでしょう。


コラボ制作背景:川上洋平 × WurtS の創作プロセス

この楽曲は、[Alexandros]のフロントマン・川上洋平と、マルチアーティストWurtSとのコラボによって生まれました。WurtSはこの楽曲でAメロや一部のBメロを担当し、川上は全体の構成を取りまとめたとのことです。

WurtSの楽曲に見られる実験的なポップ感と、[Alexandros]特有のギターロックが融合したこの曲は、どちらのファンにとっても新鮮な驚きを与える仕上がりになっています。制作は「遊び心から始まった」とも語られており、その自由な姿勢がサウンド面にも反映されています。

また、対談などでも語られているように、「相手に何かを“言わされる”ことなく、自然と湧いてくるメロディに乗せて言葉を置いていった」という制作スタイルも、本楽曲の“素の感情”を生々しく伝える要因となっているようです。


音楽性とアレンジ:“ラフさ”と融合された現代ロック

『VANILLA SKY』のアレンジは、アコースティックギターを主体としながらも、細部にエレクトロやポップの要素を加えることで、柔らかく、どこかラフな印象を醸し出しています。

この“肩の力を抜いた”感じは、WurtSのスタイルにも通じており、[Alexandros]のもつシリアスなロック感と絶妙なコントラストを描いています。メロディラインはシンプルながらも耳に残るフレーズで構成されており、特にサビの「I’m gonna keep it」からの展開は、一気に感情が高まるような演出がなされています。

ジャンルを意識的に混ぜ合わせるというより、“自然とそうなった”という印象を受けるこのアレンジには、現代のリスナーに寄り添う柔軟さが見受けられます。結果として、軽やかさの中に深みのあるサウンドが生まれ、リピートしたくなる中毒性を持った楽曲に仕上がっています。


まとめ:『VANILLA SKY』が描くのは“未練と前進”の共存

『VANILLA SKY』は、恋愛における未練や後悔といった感情に焦点を当てながらも、それを内に秘めて“前に進もうとする”人間の姿を描いています。タイトルが示す柔らかな空のように、はっきりとしない曖昧さこそが人の感情であり、それをラフな音楽と比喩的な言葉で表現することにより、より共感性の高い作品となっています。

[Alexandros]とWurtSという異なる感性が交差することで、ただの失恋ソングではなく、感情と音楽の“狭間”に生まれたような唯一無二の楽曲が完成しました。