【チューリップ/indigo la End】歌詞の意味を考察、解釈する。

川谷絵音が率いるindigo la End(インディゴ・ラ・エンド)、彼らが2020年にリリースしたシングル『チューリップ』の歌詞に込められた意味を解釈してみたいと思います。

別れに戸惑う主人公

染まりきった私
今更変えられない色
物語った私
あとがきへの助走ルート

ここでは、主人公である女性の現状が歌われています。

最初の行で使われている「染まる」という言葉は、彼女が好きな人の影響を受けてその人の考え方や感情に染まっていく様子を表していると思われます。

2行目と3行目では、彼女がその影響を消すことができないことに諦めの念が伝わってきます。

なぜ彼女は好きな人からの影響から逃れたいのでしょうか。

恋人との関係が既に終わったか、もしくは終わりかけている可能性が考えられます。
それが4行目の「あとがき」という表現からも読み取れます。

「あとがき」は通常、本の終わりに著者が書く締めくくりの言葉であり、物語や体験に対する感謝や思いを述べるものです。

この表現を使っていることから、彼女がある大きな物語(恋愛や関係)の一章が終わったことを暗示していると考えられます。


振り解いたあなた
情がちょっと見え隠れ
それだけでもう終わりなの?
散文的な変わり目

「あなた」というのは彼女にとっての好きな人、つまり恋人を表していると思われます。

この部分から読み取れるのは、彼女がその好きな人から別れを切り出されたということです。

2行目では、その別れの際に彼の優しさが垣間見えていると考えられます。

突然の別れにより、彼女が戸惑っている様子が3行目の歌詞から伝わってきます。

4行目の「散文的」という言葉は、「味気なかったり、面白みが薄かったりするもの」に対して使われることがあります。

この文脈では、彼女が別れ方に対して淡白過ぎると感じていることが分かります。

分かっていても受け入れられない

優秀賞なんていらない
過去になっていくあなたの
置き土産の色が濃くなって
ひたすら苦しいよ

このパートでは、恋人に別れを切り出された後の主人公の心境が描かれています。

物語は、2行目以降の言葉で直接的に描写されていると考えられます。

別れの後もう会えなくなってしまった恋人に対して、主人公の愛情が薄れていくどころか、逆に日々募っていく様子が伝わります。

そのことに対して主人公は、胸が締め付けられる苦しさを感じています。

彼女が「好きな人からの影響から逃れたい」というのは、このような苦しさが原因かもしれません。

以前隣にいた人の不在が、逆にその存在を強く意識させることになっているのでしょう。


さよならが
もうどうにもならないなら
せめて私を寒くなさって
あなたが切った夜は
少し大きすぎた

このパートでは、別れに対する主人公の願いが描かれています。

主人公は、もう覆らない別れに対して、恋の熱が早く冷めて欲しいという願いを抱いています。

彼女がまだ彼のことを思い出してしまうのは、彼の影響が色濃く残っていたことを示しています。

4行目と5行目の歌詞は、2人で過ごした夜の存在の大きさを表現しているようです。

2人での時間が主人公の心に深く刻まれており、まだその思い出が強く残っていることが伝わってきます。

彼女は別れを受け入れることができず、自分の気持ちに苦悩しているかもしれません。

突然訪れた別れによって、現状を受け入れるのに時間がかかっているのでしょう。

彼の変化には気づいていた

雲ゆきは
ずっとわかってたけど
一縷の光に期待してたの
私馬鹿だからさ
まだ願いたいよ

以前から主人公が感じていた彼との心の距離。

主人公はいつか2人の間に別れが訪れることを予感していたようです。

それでも、彼女はその予感が嘘であることを願い、彼との愛情を育み、2人での未来を夢見ていました。

しかしそんな予感は不運にも的中してしまい、彼は彼女の元を去っていきました。
現在では2人の思い出だけが残っています。

それでも、別れを経験した後でもなお、4、5行目に記されている通り、主人公は彼との未来を夢見ています。


色を変えたあなた
壊れきった私を見て
差し出そうとした手を
引っ込めた
そう見えたの

この楽曲では、「色」という言葉やそれに関連した言葉が頻繁に登場しています。

これらの歌詞は、主人公にとって大切な存在である「あなた」の変化する色について言及しているようです。

彼の色が、これまで主人公を染めていたものとは異なっていく様子が描かれています。

2行目以降の歌詞により、主人公と彼の現在の距離が感じられます。

かつては彼が主人公を助けてくれる存在だったはずなのに、今ではもう助けてくれないことが理解できます。

主人公は彼の変化により、以前とは違う彼との距離を感じ取っているようです。

もうどうしようもない

終われないって私がいくら喚いたとて
あなたは首を横に振る
冷たくなった光
やけに青白くて
過去にならなきゃ2番目でも構わないって
口を開こうとしたけど
閉じてしまったものは
もう戻らなくて

彼への深い想いから、別れを受け入れられない主人公は、「あなた」に対して「別れないで欲しい」と懇願しているようです。

しかし、彼はその言葉を受け入れようとはせず、彼の心にはもう主人公への愛情がないようです。

彼女が近づきたいと願うのに対して、彼は彼女から遠ざかろうとしています。

5行目は、主人公の彼への深い愛情を感じさせる言葉です。

同時に、この部分の言葉からは彼の心が既に他の女性に向かっていることが分かります。

つまり、「あなた」が主人公の元を離れたのも、彼が他の女性に心を寄せたことが原因なのでしょう。

彼女はたとえ彼が他の女性に惹かれていたとしても、彼のものであり続けたいと願っています。

そういった気持ちが主人公の心には根強く存在しているのです。

しかし、6行目以降の言葉からは、その言葉は実際に彼に届くことはなかったことが分かります。

彼女が彼に対して想いを伝えるほどの勇気がなかったのか、あるいは2人が一緒にいられるほどの力が彼女にはなかったのかもしれません。


2つに割れた夜に
移ろうチューリップの香り
夢を満たして涙を誘うよ

私には
もうどうにもできないから
あなたの袖を掴むことくらいしかできない

1行目の歌詞は、主人公と彼の関係に亀裂が生じたことを表現しているようです。

そして2行目では、楽曲のタイトルでもある「チューリップ」という花が登場します。

この「チューリップ」という花が、2人の関係を象徴していると言えるでしょう。

「チューリップ」から漂う香りによって主人公は2人の夢を思い出します。

しかしその夢は今では幻となり、悲しみに暮れる彼女の涙を引き起こしています。

4行目以降では、彼へ縋っていた彼女にできることが残されていないことが分かります。

復縁の可能性もなく、彼を引き止めて別れの時が来ないように時間稼ぎをすることしかできない状況です。

その無力感を感じながらも、彼が去ってしまわないように彼女は彼の手を引っ張ります。

彼女の心は終わりが来ないで欲しいと願い、その苦しみと悲しみが歌詞パートに表れています。

赤から白へ

赤かった2人は今日で終わって
雪に混じり合った
あなたの望む色になった
ああ、寒いな

前述の歌詞パートでは、主人公は2人の恋を「チューリップ」と表現していました。

このことから連想できるのは、1行目の歌詞で登場する「赤」が赤いチューリップの花を指す可能性です。

赤いチューリップの花言葉には「真実の愛」という意味がありますが、そんな2人の愛も今では終わってしまったようです。

2行目の「雪」という言葉からは、赤かった「チューリップ」の色が白く変わっていく様子を連想させます。

主人公がMVでも赤い服から白い服へ変わっていることから、2人の恋が「赤」から「白」へ色を変えていったと考えられます。

白いチューリップの花言葉には「失われた愛」という意味があり、この色の変化は2人の愛が終わってしまったことを示しています。

彼女が彼の色に染まって真っ赤だった過去も、今では恋が終わり、元の白色に戻ってしまったのでしょう。

彼にとっては、彼女との別れこそが望ましいものであり、この恋の終わりは初めから決まっていたことかもしれません。

別れを告げられた時にはまだ彼に縋ろうとしていた主人公ですが、今ではそんな恋の熱も冷めていき、「雪」のような白さと冷たさだけが残りました。

寂しさを感じながらも、彼女は今では2人の思い出に浸って独りきりなのでしょう。

まとめ

今回はindigo la Endの楽曲「チューリップ」の歌詞を丁寧に解説してきました。

川谷絵音の得意とするラブソングであり、切なさと美しさが織り交ぜられた言葉たちが魅力です。

彼ならではのワードセンスにより、「チューリップ」の花言葉が歌詞の世界観を更に深めています。

この歌詞を失恋した時に聴くと、心に寄り添ってくれることでしょう。