1997年にリリースされたCocco(コッコ)の2ndシングル「強く儚い者たち」は、彼女を広く知らしめるきっかけとなりました。
この楽曲は、深い感情を抱えた痛切なメッセージを伝えており、切なさや苦しさ、生々しさが鮮烈に表現されています。
歌われる悲恋のストーリーを一緒に読み解いてみましょう。
内なる感情を揺さぶる
今回取り上げるのは、1997年に発表されたCoccoのセカンドシングル「強く儚い者たち」です。
この曲は、Coccoのメジャーデビュー後のセカンドシングルとしてリリースされ、彼女のキャリアの中でも最もヒットした楽曲として知られています。
そのため、多くの人が一度は耳にしたことがあるかもしれません。
この楽曲のミュージックビデオでは、広大な草原で自由に歌うCoccoの姿が描かれており、その一方で影のような人物たちも映し出されています。
これらのシルエットからは、現実世界とは異なる存在たちの存在を感じさせます。
当時、Coccoの内面には歌うことへの葛藤が芽生えていたのかもしれません。
彼女はこの歌を、単に自分の感情を表現する手段として作りましたが、その歌は多くの人々に深い感銘を与えました。
筆者自身も初めてこの曲を聴いた時のことを鮮明に覚えており、Coccoの歌声、表現力、歌詞の意味に強い感銘を受けました。
このようにして、多くの人々の心に強烈な印象を残した「強く儚い者たち」。
以下では、その歌詞の背後に描かれた物語に迫ってみましょう。
この楽曲において、Coccoはどのような情景や物語を綴っているのでしょうか。
愛する人を守るため
大切なもの築くため
海へ出たのね
嵐の中で戦って
突風の中生きのびて
ここへ来たのね
この物語の中心には、恋人を故郷に残して旅に出た男性がいます。
彼は船に乗り、果てしない海を旅していたようです。
しかし、海の天候は不安定で読み切れないもので、彼の旅路は順調とは言い難いものだったようです。
荒れ狂う波や風、そしてとうとうは嵐に見舞われるなど、過酷な試練が彼を襲いました。
そうして流れ着いたのが、この物語の舞台となる場所なのです。
彼は心の支えとして、愛するお姫様の姿を胸に秘めていました。
その思いが彼を励まし、命を賭けた旅を続ける原動力となっていました。
そして、運命の波に乗って流れ着いた先で、彼は偶然にも一人の女性に救われる運命にあります。
この港はいい所よ 朝陽がきれいなの
住みつく人もいるのよ ゆっくり休みなさい
疲れた羽根を癒すの
男性は一命を取り留め、何とかこの場所に辿り着きました。
彼女は男性を心から歓迎し、食事と宿を提供しました。
彼女は優しく言葉をかけ、疲れた体を休ませるよう助言したでしょう。
男性はその温かなもてなしに感謝の念を抱き、この港でゆっくりと休む決心をしました。
この街は美しい景色に囲まれ、多くの優しい人々が住んでいる場所です。
その魅力に惹かれて、ここでの暮らしを選ぶ人々も多いことでしょう。
男性もその中の一人で、彼女の親切な行為に心から感謝しています。
彼女の思いやりが、男性の心を変え、徐々に彼の中に新たな変化をもたらしていったのです。
人は弱いものよ
とても弱い者よ
この歌詞は、まるで女性が男性に向けて発している言葉のように感じますね。
だれについてのことを歌っているのでしょうか。
長い歴史の中で、男性はしばしば社会から「強くあれ」と言われる存在とされてきました。
しかし、男性も人間であり、時には強さを保てない瞬間があるでしょう。
そうした瞬間に、「あなたは強くなくてもいいの。人間なんだから、弱くても大丈夫」と言われることがあるかもしれません。
自分の弱さをさらけ出してもいい、という支えるようなメッセージに触れたら、男性たちも思わず心が揺れ動くことでしょう。
その言葉によって、彼らは自分を素直に見せることへの勇気を持つかもしれません。
女性の前では弱さをさらけ出しても良い、といった誘惑的なメッセージが、男性の内なる感情を揺さぶるのかもしれません。
こうして、彼女の魅力が彼の心にじわじわと影響を及ぼし始めるのです。
人々は強くあるが、心は儚いもの
私の部屋へいらっしゃい 甘いお菓子をあげましょう
抱いてあげましょう
言葉だけではなく、女性の誘惑は態度を通じてもじわじわと進行します。
男性を自宅に招き入れ、美味しいお菓子を用意し、お茶を楽しむことになりました。
しかし、男性の内心は揺れ動いています。
自分がどのような未来を迎えるのか、大切なお姫様のもとに戻れるのかという不安が彼の心を襲います。
そんな男性の心を癒すべく、女性は彼を抱きしめることで慰めを伝えます。
不安や心配で弱っている時に、優しい抱擁を受けると、誰しもその温かさに支えられることでしょう。
女性も彼の心情を理解しており、その行動は計算ずくかもしれません。
彼女は、人の心をつかむ巧みな手法を持っているようです。
最初はお姫様のことを忘れることのできなかった男性。
しかし、彼の心は次第に揺れ動くようになります。
こうした状況を見極めつつ、女性は最終的な一歩を踏み出します。
だけど飛魚のアーチをくぐって
宝島に着いた頃
あなたのお姫様は
誰かと腰を振っているわ
時間の経過は、人々の心情を容易に変える力を持っています。
かつては、あなたもお姫様と深い絆を感じていたかもしれません。
彼女の帰りを待ち望んでいたこともあるでしょう。
しかし、現在の彼女の心情に変化がないことを確証する手段はありません。
かつてお姫様と共に過ごした時間、そして共有した愛情。
それは、今はもはや過去のものである可能性があります。
彼女が新たな誰かに心を寄せているという可能性を男性に囁いたのかもしれません。
その言葉は、男性の心に深い影響を与え、不安や葛藤を引き起こすことでしょう。
もし彼女の言葉を信じてしまえば、男性の気持ちも揺れ動くことでしょう。
彼女の言葉が真実かどうかは確かめられないし、逆にそれが嘘である可能性も排除できません。
彼女の影響力は強く、男性の心を揺さぶっています。
男性自身も、自分の心情が変わりつつあることに気づいているかもしれません。
そのため、彼が自身の心変化を考えてしまうのも理解できます。
彼女の言葉が、男性に自身の感情と向き合わせるきっかけを提供したのかもしれません。
人は強いものよ
とても強いものよ
さて、この強くて謎めいた人物は一体誰なのでしょうか。
巧妙に、次の男性の元へと移り行くかもしれないお姫様でしょうか?
それとも、傷ついた男性を勇気づけるための言葉をかける存在なのでしょうか?
こうした言葉が男性の心に響くことで、彼女はまるで魔法のような存在となっています。
出会わない方が無難かもしれません。
この策略は、結果的に魔性の女性が勝者となったようです。
彼女は、傷ついた男性を手中に収め、その心と体を巧みに支配しました。
何度も男性に「お姫様はもうあなたのことを気にしていないのよ」と言い聞かせながら…。
人は強いものよ
そして 儚いもの
最後の言葉は、「ちょろかったわ」と笑みを浮かべているようにも聞こえます。
恐ろしいほどの女性であることがうかがえます。
しかしこの女性が、誰かを魅了し、自分の虜にすることが初めてではないことは明らかでしょう。
人々は強くあるが、心は儚いものです。
自分の内なる葛藤や傷ついた部分をさらけ出されるような、痛切な歌詞で描かれた曲と言えるでしょう。
Coccoの精神力と意志の強さ
20歳の頃、Coccoはこのような歌を作り上げました。
彼女の他の楽曲も、まるで内なる暗闇を引き出すような歌詞で満ちています。
こうした歌詞を書く人物は、怖いと思われるかもしれません。
しかしながら、実際はとても傷つきやすく、繊細な一面を持っています。
自分の中に隠し持てない感情や不安を、歌を通じて吐露しているのです。
それでも、歌うこと自体が彼女にとって苦しい経験であるかもしれません。
外から見れば、Coccoはシンガーとして成功を収めているように見えたかもしれません。
しかし、その裏側には彼女自身の内面の苦悩がありました。
拒食症や自傷行為といった苦しみにも悩まされていたのです。
音楽の仲間たちのサポートによって、Coccoは再び歌う力を取り戻すことができました。
彼女は音楽だけでなく、絵を描いたり芝居をしたりすることで、感情を表現する幅を広げることができるようになりました。
この新たな表現の手段は、歌以外でも感情を解放する手段を提供しました。
そして、その中で歌うことへの愛情が再燃し、「歌いたい」という気持ちにつながっていったようです。
拒食症や自傷行為との闘いも、彼女は克服することができました。
しかしそれは病気が完全に消えたわけではありません。
体調や心の状態によって、時折再発することもあるかもしれません。
これは一生を通じて向き合う必要のあることかもしれません。
それでも、Coccoは前向きな姿勢で強く生きています。
その精神力と意志の強さが、彼女の特徴的な魅力なのです。
表現者「Cocco」
近年のCoccoの活動は、彼女が「歌手」としてだけでなく「表現者」としても存在感を放っています。
2004年に歌手としての活動を再開して以来、舞台出演や単行本・絵本の執筆、映画出演など、その活躍の範囲を広げています。
2017年7月には自身の20周年を祝うライブを成功させ、さらに音楽フェス「FUJI ROCK FESTIVAL 2017」と「SWEET LOVE SHOWER 2017」にも出演しました。
ファンとして特に嬉しいのは、Coccoが歌って踊って楽しむ姿を見ることです。
彼女の生き生きとした姿勢が、その楽しみを伝えてくれます。
以前の活動休止期間中の印象とは対照的に、こんなにも生き生きと歌う姿を見ることができるなんて思ってもいなかったでしょう。
これからもCoccoの歌声を楽しめることは、ファンとしてはとても喜ばしいことです。
まとめと歌詞全文
どうでしたでしょうか?
今回は、Coccoというアーティストのバックグラウンドを含めつつ、彼女の曲「強く儚い者たち」についてご紹介しました。
その儚さと美しさが同居し、人間らしい感情を胸に抱きながら生きていくCoccoの姿。
彼女の力強い歌は、これからも多くの人々を魅了し続けることでしょう。
歌詞全文
愛する人を守るため
大切なもの築くため
海へ出たのね
嵐の中で戦って
突風の中生きのびて
ここへ来たのねこの港はいい所よ
朝陽がきれいなの
住みつく人もいるのよ
ゆっくり休みなさい
疲れた羽根を癒すのだけど 飛魚のアーチをくぐって
宝島が見えるころ
何も失わずに
同じでいられると思う?人は弱いものよ
とても弱いものよ愛する人の未来など
遠い目のまま言わないで
声が聞こえる?
私の部屋へいらっしゃい
甘いお菓子をあげましょう
抱いてあげましょう固い誓い交わしたのね
そんなの知ってるわ
“あんなに愛し合った”と
何度も確かめ合い
信じて島を出たのねだけど飛魚のアーチをくぐって
宝島に着いた頃
あなたのお姫様は
誰かと腰を振ってるわ人は強いものよ
とても強いものよそうよ飛魚のアーチをくぐって
宝島が見えるころ
何も失わずに
同じでいられると思う?きっと飛魚のアーチをくぐって
宝島に着いた頃
あなたのお姫様は
誰かと腰を振ってるわ人は強いものよ
そして儚いもの
Ah…
Ah…