【ただ/クリープハイプ】歌詞の意味を考察、解釈する。

今回は、クリープハイプの「もうすぐ着くから待っててね」のEPに含まれる「ただ」という楽曲の歌詞についてお話ししたいと思います。

ただそばにいて とか言えなくて いつもその理由を考えてしまう
ただそばにいての ただが何かを 恥ずかしくなって考えてしまう
ただ ただちゃんと
ただ 伝えたいのに

尾崎の歌詞に特徴的なのは、単語を反復し、その単語に多層の意味が感じられるようにすることです。
この楽曲「ただ」においても、この単語は感情や利益を超え、純粋に行動そのものを追求していることを示していると考えます。

「お前と一緒にいたい」という言葉が相手に伝えられる際、その背後に「ヤりたい」といった欲望があると疑念を抱かれることもあるでしょう。
しかし、主人公はそのような隠れた動機を持っていなく、単純に「一緒にいる」ことを求めているのです。
この点がこの歌詞の核心でしょう。

そして、行動そのものを求めることに対して、主人公はなぜそれを欲するのか、その理由について自問自答することで、一層複雑さが増しています。
言葉と本心の齟齬がここで明らかにされ、思いを正確に伝える難しさが描かれています。

要するに、この歌詞では「ただ」という言葉に主人公が引っかかり、その言葉を頻繁に繰り返すことで、自身の思いを伝える難しさが強調されているのです。

初めて会った瞬間にとかわかりやすくなくてごめんね
それでも質には何の問題もないから
それはもう典型的な失って初めて気づく系の
ありふれた気持ちでわかりやすくてごめんね

自分の気持ちはかなりストレートなものなのですが、それを適切に伝える方法がうまく見つからないというジレンマがあります。
「気持ち=シンプルで理解しやすいもの」なのに、「その気持ちを伝える方法=難解でわかりにくい」ということです。

しかし、大切なのは、これらの気持ちは本物であるということです。
したがって、その質には何の問題もありません。

ってどっちでも良いよ どっちでも良いよ どっちでも良いから
早くしてよほら 気が変わらないうちに
どっちでも良いよ どっちでも良いよ どっちでも良いのに
そんな事はもう どうだって良いのに

尾崎の特徴的な技法、連呼が再び登場しました。
この場合、「どっちでも良いよ」という言葉を「どっちでも良いのに」という表現に切り替えることで、気分や意見の変化を表現しています。

しかし、気になるのは「どっちでも良い」という言葉が具体的に何について言及しているのかという点です。
歌詞ではその部分に触れられていないため、詳細については歌詞の続きを見て、より詳細に考察したいと思います。

もうやめた もうやめた もうこんなことやってられるかよ
もう決めた もう疲れた 今日でやめてやるよ クソ クソ クソ
あっ、嘘 こっちみて
ねぇ、ただ好きなんだ

「やめた」という言葉は、主人公が自分の本当の気持ちをどのように伝えようとしているのかを考えさせられます。
これは、彼が関係を続けるかどうか、またはその関係を終了しようとしているかの一環かもしれません。

彼は相手に振り向いてもらうために必死に努力し、しかし相手が注意を引いたら興味をなくして冷淡に接し、離れそうになると再び関係を取り戻そうと必死に努力する男性の典型的な行動を示しています。
彼の言葉はしばしば矛盾しており、一貫性がないように見えます。

このような主人公の行動によって、彼のキャラクターにはクズ的な一面があるように感じられますが、それが尾崎の特別な表現方法である「尾崎マジック」によって、文学的な魅力として表現されているのです。

ついにようやく言えたとも 今更何言ってるんだとも言える
苦いようで甘いようで何とも言えない
帯に短し襷に長し イノチミジカシコイセヨオレ
苦くて甘くて何とも言えない

最終的に口にできたのは「好き」という言葉だったのかもしれません。
「ただ」という言葉に縛られ、自分の本当の気持ちを伝えることが難しかった主人公が、偶然にも本音を口にした瞬間です。
しかし、おそらくこの二人は長い付き合いがあるため、今更こんなことを言っても「何言ってるの?」としか受け取られない可能性が高いでしょう。
そうした微妙な距離感は、甘くも苦いものと形容できます。

ってどっちでも良いよ どっちでも良いよ どっちでも良いから
早くしてよほら 気が変わらないうちに
どっちでも良いよ どっちでも良いよ どっちでも良いのに
そんな事はもう どうだって良いのに

最初のテーマは「そばにいてほしい」ということであり、この願いを伝えたいのに、周り道ばかりしてしまい、偶然にも「好き」という本音を口にしたものの、最終的な答えである「そばにいてくれるのかどうか」についてはまだ明らかにされていません。

「甘い」「苦い」とか、「伝えるか伝えないか」といったことはどうでもいいのです。
重要なのは、その答えよりも、相手の内に秘められた気持ち、つまり、彼がどんな気持ちを抱いているのかです。

ただそばにいて とか言えなくて いつもその理由を考えてしまう
ただそばにいての ただが何かを 恥ずかしくなって考えてしまう

そして、再びこのフレーズに注目することで、主人公の「真実の気持ち」を再確認させる意図があります。

どこにもないどこにもないどこにもない物なんてどこにもない
けど どこにでもある物が どこにもない物になる瞬間
どこにもないどこにもないどこにもない物なんてどこにもない
けど どこにでもある物が どこにもない物になる瞬間が今

ただ ただちゃんと
ただ ただ好きなんだ
ただ ただちゃんと
ただ ただ好きなんだよ

「どこにもないもの」とは、一生涯あなたを思い続ける気持ち、つまり、愛を指すのかもしれません。
一方、「どこにでもあるもの」は、人々が経験する普通の感情である恋を表しており、これは多くの人が持つ感情です。
ただし、恋はすぐに変わる、不安定な感情であることがあります。

愛とは、相手に変わることなく思い続ける気持ちであり、簡単に言えば、それが愛と言えるでしょう。
多くのカップルが結婚式で一生の愛を誓うものの、その鮮度を維持し続けるのは難しい現実もあるでしょう。
愛は時折、日常のルーチンになることもあるのです。

それゆえ、「愛なんてどこにもない」という言葉を口にすることがあるのかもしれません。
しかし、恋という瞬間的な感情が、愛という不変のものへ変わる瞬間が存在し、それが今なのかもしれません。
この歌は、その感情が「ただちゃんと好きなだけ」に向かう過程を歌っているのかもしれません。