TVアニメ『呪術廻戦』第2期「渋谷事変」編のオープニング主題歌であるKing Gnu(キングヌー)の『SPECIALZ(スペシャルズ)』は、悪役たちにフォーカスを当てた楽曲です。
彼らの狂気的な心情を描いた歌詞の意味を解説します。
自分では制御できなくなる恐ろしい力
King Gnuの『SPECIALZ(スペシャルズ)』は、2023年8月31日から放送のTVアニメ『呪術廻戦』第2期「渋谷事変」編のオープニング主題歌として制作されました。
「渋谷事変」編では、ハロウィンの賑やかな渋谷で、亡くなったはずの呪詛師・夏油傑が一般人を巻き込んで犯した呪術テロにより、多くの犠牲者を出した史上最悪の大事件が描かれています。
これまでの『呪術廻戦』の主題歌は、作品の主人公である呪術師たちに焦点を当てた楽曲が多かったですが、『SPECIALZ』は悪役である呪詛師と呪霊たちの視点から描かれているようです。
タイトルの「SPECIALZ」は「SPECIALS」をもじったもので、「特別な・特殊な」を意味するspecialの複数形と思われます。
そして末尾がアルファベットの最後の文字である「Z」になっていることから、特別な感情や戦いに向かう情熱が最終形態に達していることを示唆しています。
常田大希が作詞を手掛けた『SPECIALZ』では、呪術廻戦のヴィランたちにとって何が特別なのか、なぜ彼らは呪術師たちとの戦いを続けるのかについて、どのように表現されているのか、その意味を解釈していきましょう。
“U R MY SPECIAL”
今際の際際で踊りましょう
東京前線興の都
往生際の際際で足掻きましょう
お行儀の悪い面も見せてよ
彼らにとって特別なものは、「“U R MY SPECIAL”」の言葉から明らかです。
これは、「You are my special」と表現され、つまり「あなたは私の特別」という意味になります。
たとえば、過去の戦いで虎杖を殺すことに執着する特級呪霊・真人にとって、虎杖は明らかに特別な存在です。
「今際の際」も「往生際」もともに「死に際」を示す言葉です。
「踊りましょう」という表現から、真人が虎杖との戦いを楽しんでいることが窺えます。
さらに、「お行儀の悪い面も見せてよ」と挑発することで、この戦いをさらに興味深くすることを求めていることが分かります。
“i luv u 6a6y”
謳い続けましょう
如何痴れ者も如何余所者も
心燃える一挙手一投足
走り出したらアンコントロール
「“i luv u 6a6y”」は、「I love you baby」を当て字で表現したものです。
アルファベットと数字が混在したこのフレーズは、愛情と憎悪が入り交じる彼らの複雑で奇怪な心情を物語っていると考えられます。
呪いという強力な力を持つものの上では、誰もが強制的に謳い踊るように狂わされていきます。
一度走り始めたらもう自分では制御できなくなる恐ろしい力です。
その力に後押しされるように彼らの感情が高まり、戦いが白熱していく様子が見て取れます。
これまでの行いを後悔したくない
無茶苦茶にしてくれないかい?
一切を存分に喰らい尽くして
一生迷宮廻遊ランデブー
眩暈がする程”U R MY SPECIAL”
有耶無耶な儘廻る世界
No!No!No! そう冷静にはならないで
一生迷宮廻遊ランデブー
誰が如何言おうと”U R MY SPECIAL”
“WE R SPECIAL”
自らが殺してやりたいと決意する一方で、無茶苦茶にされることを望む悪役たち。
彼らは圧倒的な力で「一切を存分に喰らい尽くして」ほしいと願い、一生一緒にこの世界を楽しみたいという狂気的な愛を示しています。
自分自身さえも追いつかないほど特別に思っていることが表現されています。
情熱的な恋で自我を忘れるように、冷静になることなくこの関係を心ゆくまで楽しみたいと願っているようです。
その気持ちを誰かが否定しようとも、「 “U R MY SPECIAL”」と断言し、「“WE R SPECIAL”(私たちは特別)」と主張することで、その想いの強さを示しています。
土俵際の際際で堪えましょう
東京沿線大荒れ模様
報道機関氣裸氣裸血走ります
冷静と俯瞰は御法度です
「報道機関氣裸氣裸血走ります」というフレーズは、混乱が極限に達している状況下で、報道機関が目を血走らせながら懸命に取材活動を行っていることを表しています。
当事者の彼らは「冷静と俯瞰は御法度です」と語り、この戦いに身を投じて狂った者が勝つとでも言いたげです。
言葉は静かに見えるかもしれませんが、その心情は愛憎に狂っていることが伝わってきます。
“get 1〇st iπ 31”
自分を庇う言葉ばかりを
いつまで言い聞かせるの?
“get 1〇st iπ 31”
生き様を悔いるなんて
そんなの御免だわ
「”get 1〇st iπ 31″」は、「get lost in me(私に夢中になる)」という言葉の当て字と解釈されます。
渋谷事変が起こった10月31日の数字が含まれているのが興味深いです。
このフレーズから、自分が相手に夢中になるだけでは不十分で、相手にも同じように感じてほしいという願いが伝わります。
彼らが渋谷事変を起こしたのは、自己顕示のためだけでなく、自らのプライドと信念を守るためかもしれません。
今更自分を弁護しても仕方がないという気持ちから、これまでの行いを後悔したくないという思いが表現されています。
悪役たちの喜びに満ちた宣言
応答してよ其体温感じたいの
低体温のフローが点けた青い炎
ロマンティックに誤魔化さないで単刀直入に切り裂いて
熱っぽいラブソングには酔えないよもう
この部分はよりロマンチックな要素の強い歌詞になっています。
「青い炎」は一見すると熱くないように見えますが、実際には1000度以上もの高温であることから、外見では分からない心の中の燃える情熱を表す際に使われる表現です。
自分の心に燃える情熱の炎を灯した以上、もっと一緒に愛し合うためにも殺し合いのように戦おうと呼びかけているように感じました。
その感情は「甘い恋愛ソング」というような単純なものではありません。
恋愛のような甘さは必要なく、むしろ「単刀直入に切り裂いて」あなたに自分の全てをさらけ出したい、またはあなたの全てをさらけ出したいという暗く狂気的な想いに圧倒されます。
無茶苦茶にしてくれないかい?
未来を存分に喰らい尽くして
一生迷宮廻遊ランデブー
眩暈がする程”U R MY SPECIAL”
有耶無耶な儘廻る世界
No!No!No! そう冷静にはならないで
一生迷宮廻遊ランデブー
誰が如何言おうと”U R MY SPECIAL”“WE R SPECIAL”
冷静にはならないで
“WE R SPECIAL”
あなたはそのままで
“WE R SPECIAL”
どこまでも特別よ
“WE R SPECIAL”
誰が如何言おうと
“U R MY SPECIAL”
「未来を存分に喰らい尽くして」という言葉から、未来を共に過ごしたいという強い願いが感じられます。
それは願いがかなえられたとも言える結末であり、「有耶無耶な儘廻る世界」を一緒に彷徨うことさえも幸せと感じるでしょう。
冷静な思考が失われ、対象に夢中になれるほどの喜びを感じているようです。
そのため、相手にも自分と同じように冷静さを失って、一心に戦うことを望んでいます。
しかし、自分自身を理解してほしいとは思っていないようです。
相手との対立が楽しいからこそ、ぶつかり合うことを楽しめるため、「あなたはそのままで」いてほしいと考えています。
相手は自分にとって運命の相手であり、彼らの関係は「どこまでも特別」なものであるという悪役たちの喜びに満ちた宣言が、心を揺さぶります。
まとめ
King Gnuの『SPECIALZ』は、渋谷事変で荒れ狂う悪役たちの感情を表現した、ダークで狂気的なサウンドと歌詞に魅了される楽曲です。
愛情と呼ぶには歪みすぎ、憎悪と呼ぶには明るすぎる彼らの感情が、印象的なフレーズで表現されています。
歌詞とアニメのストーリーを重ね合わせながら、彼らの心情をより深く探ってみることをお勧めします。
