「宿命」は、Official髭男dism(ヒゲダン)の曲で、甲子園をテーマにした情熱的な楽曲です。
この歌詞は夢を追い求める情熱を描いており、その中に込められた意味を考察していきます。
夏にしか味わえない特別な場所
「宿命」はOfficial髭男dism(ヒゲダン)の3rdシングルで、2019年7月31日に発売されました。
この曲は「2019 ABC 夏の高校野球応援ソング／『熱闘甲子園』テーマソング」として採用され、高校野球で全力を尽くす選手たちの思いを歌った歌詞が特徴的です。
甲子園は夢の舞台であり憧れの地。
高校球児が命を賭けてその舞台を目指す情熱や思いは、実際に立ち会ってみないと理解しがたいものがあります。
楽曲制作の前に、実際に甲子園球場で観戦したり、グラウンドに立ったりして生の雰囲気を感じたメンバーがいました。
楽曲から伝わる熱気は、このような生の体験から生まれたものと言えるでしょう。
作詞作曲を手がけた藤原聡は、夢の舞台を経験した貴重な感情を見事に歌詞に表現しました。
若者たちが情熱を燃やす特別な世界を、ヒゲダンが爽やかな歌声で軽やかに歌い上げます。
長い人生の中の短い瞬間かもしれませんが、その一瞬を野球に捧げる高校球児たちにとって、甲子園を目指すことは大きな目標であり、使命感を持って挑んでいる人もいます。
高校3年間、夏にしか味わえない特別な場所。
では、『宿命』の歌詞を再考していきましょう。
目の前の可能性に全力をかけて戦う
心臓からあふれ出した声で
歌うメロディ振り向いた未来
君から あふれ出した声と
合わさって響いた 群青の空の下
「心臓から湧き出る声」という表現は、まさに高校球児の情熱や応援団の熱気を思わせます。
言葉を歌うというよりも、自然に口から出る声がメロディに乗り、歌となっていく様子が印象的ですね。
考えるよりも心が引っ張られ、身体が動く感覚は、まるで高校野球のような情景です。
澄み渡る空の下に響く熱い声援。
この歌詞の冒頭だけで、甲子園球場に広がる熱狂の声が耳に響いてくるかのようです。
夢じゃない 夢じゃない 涙の足跡
嘘じゃない 嘘じゃない 泥だらけの笑顔
夢じゃない 夢じゃない 肩を組んで叫びたい
僕らの 想い 届け!
甲子園という舞台に立つことは、選ばれた一握りの人々にしか許されません。
その道のりは険しいものであり、多くの場合、血の滲むような努力が不可欠です。
何度も挫折し、這いつくばるように前進しても、夢をつかめない人もいます。
そんな中で、「夢じゃない」と自分に言い聞かせながら、涙や泥にまみれながらも必死に夢に向かって奮闘するのです。
「僕らの 想い 届け!」という歌詞には、甲子園に行きたいという切実な思いが込められています。
夢の舞台を目指す心の震えや、その喜びと緊張について、果たしてその苦闘が報われたのかどうかは分かりません。
しかし、聴いている側もその情熱に引き込まれ、力強く応援したくなるのです。
奇跡じゃなくていい 美しくなくていい
生きがいってやつが光輝くから
切れないバッテリー 魂の限り
宿命ってやつを燃やして 暴れ出すだけなんだ
努力の成果が実を結べば、それは美談として称賛されるでしょう。
しかし、実を結ばなかった努力は誰からも評価されず、忘れ去られるかもしれません。
奇跡のような大きな成功である必要はありません。
ただ、目の前の可能性に全力をかけて戦うことが大切です。
夢を追い求める人にとって、心の中に燃え続ける情熱が何よりも重要なのです。
バッテリーが切れるまで、倒れるまで前進し続ける。
そんな闘志が感じられます。
「宿命」として受け入れる覚悟
沈黙 が続いた イヤフォン
自分の弱さに遠ざかってく未来
「大丈夫」や「頑張れ」って歌詞に
苛立ってしまった そんな夜もあった
多くのアスリートは競技前に精神統一のために音楽を聴きます。
音楽は心を落ち着かせ、勇気づけ、本番を迎える最後の力強い後押しをしてくれますが、時には精神を乱すこともあります。
自分の未熟さや力不足に悩んでいる時、前向きな歌詞は心を追い詰めることがあります。
“大丈夫”や”頑張れ”という言葉は、前進する意志がある時にこそ心に響くものです。
一方で、立ち止まってしまっている状態では、これらの言葉が大きなストレスとなることもあります。
励ましの言葉に反発し、その反発が自己嫌悪につながることもあります。
負の連鎖の中で苦しむ姿が、とてもリアルに伝わってきます。
夢じゃない 夢じゃない あの日の悔しさと
忘れない 忘れない 掌の爪痕
無駄じゃない 無駄じゃない それも全て讃えたい
もうあと少し
勝利を掴みそうなのにわずかに手が届かない時、自分がチームを引っ張り下げてしまうかもしれないと感じます。
そのような自分の未熟さを味わい、流した悔し涙は、心の力に変わります。
喜びも悔しさも、すべてを経験して人は成長していくのです。
目指した夢に手が届く瞬間が不格好でも、それは問題ではありません。
自分に「夢じゃない」と言い聞かせ、最後の一歩を踏み出します。
夢がかなう直前の高揚感と緊張感が満ちる歌詞です。
願いの熱さに 汗まみれになったり
期待背負って立って 重さに臆病になるけど
僕らの背番号 それは背中じゃなく 瞳の奥のアンサー
重なって 照らし合ってく FOREVER
簡単に手に入るような小さな夢ではなく、大きな願いを抱くなら、粉々になるまで戦わなければなりません。
華やかな様子を演じる余裕はなく、汗にびっしょり、泥まみれになりながら必死に努力するしかありません。
強い願いは力を与える一方で、同時に不安をも生み出します。
期待が高まれば高まるほど、責任の重みも増し、期待に添えない恐れも生じるでしょう。
自分だけが背負う番号には、他人には理解できない重圧が存在します。
緊張から不安が芽生えて
根を張るみたいに 僕らを支配する
そんなものに負けてたまるかと
今 宿命ってやつを燃やして 暴れ出す
見えない重圧を受けながらも、闘志を燃やし、一球一球に真剣に向き合います。
不安に立ち向かうことが試合の行方を左右します。
周囲からのプレッシャーや期待、不安。
これらすべてを「宿命」として受け入れる覚悟が必要です。
「負けるわけにはいかない」という強い気持ちが、夢を掴む最後の力となります。
人生そのものへの称賛
野球は単なるゲームではありません。
その中には人生の重みが込められています。
試合の結果が、その後の人生を大きく左右することもあるのです。
届け!
奇跡じゃなくていい 美しくなくていい
生きがいってやつが光輝くから
切れないバッテリー 魂の限り宿命ってやつを燃やして 暴れ出すだけなんだ
ただ宿命ってやつをかざして 立ち向かうだけなんだ
甲子園という夢の舞台への到達や、そこでの勝利の成否。
人生には数多くの分かれ道が存在します。
しかし、今この瞬間において、野球に情熱を捧げる者たちは、自らの「宿命」に向き合い、全身全霊で精神をぶつけ合います。
野球というスポーツの一試合にも、選手たちの強い思いが詰まっています。
「宿命」という言葉は、聴く人によって異なる意味を持ち、その魅力が存分に現れています。
それぞれが抱える宿命に向き合い、それを燃やし、目標に向かって突き進む様子が描かれています。
甲子園をテーマにしたこの歌は、野球を超えて、人生そのものへの称賛となっています。
今日では、努力することが時には非難される時代です。
しかし、この曲は冷たい空気が漂う現代においても、情熱を持ち、心を燃やすことの素晴らしさを伝えています。
時には、心を素直にさらけ出し、困難に立ち向かい、諦めずに頑張ることも、素晴らしいことなのではないでしょうか。
