2005年11月にリリースされたコブクロの12枚目のシングル「桜」は、春の代表的な楽曲として知られています。
この曲にはどのようなメッセージが込められているのでしょうか?
思い入れのある曲が5年後にシングル化
コブクロの12枚目のシングル「桜」は、2005年にリリースされましたが、この曲は実はその前から存在していました。
彼らがインディーズで活動していた時代から大切に歌われていた楽曲であり、その思い入れのある曲が5年後にシングル化されたのです。
失恋を乗り越え、思い出へと変わっていく
コブクロの「桜」では、主人公が別れた恋人の幸せを祈る自分を、春を待つ桜に例えて歌われています。
曲は冬の寒さと失恋の心境を重ね合わせ、その厳しい冬を乗り越えて花を咲かせる桜として描かれています。
また、桜の散りゆく様が失恋を乗り越え、思い出へと変わっていく前向きな心情に例えられています。
人を愛する気持ちを失わずに
名もない花には名前を付けましょう この世に一つしかない
冬の寒さに打ちひしがれないように 誰かの声でまた起き上がれるように
「桜」というタイトルの曲ですが、”名もない花には名前を付けましょう”という冒頭から始まります。
これにはどのような意味が込められているでしょうか?
この部分での花とは、恋心を指しており、主人公の失恋によって冷たくなった心を、再び温かいものにするために花を咲かせることができるよう、まずはその恋心に名前を付けることが必要だという意味が込められています。
その名前を付けることで、再び恋愛をするための準備が整うのです。
土の中で眠る命のかたまり アスファルト押しのけて
会うたびにいつも 会えない時の寂しさ
分けあう二人 太陽と月のようで
“土の中で眠る命のかたまり”というフレーズは、チューリップなどの花をイメージすると理解しやすいでしょう。
チューリップは球根を土に植え、そこでじっと成長を待ちます。
このイメージとフレーズが重ね合わされていると考えられます。
球根から芽が出るまでには時間がかかり、その様子は2人の男女が出会うまでの時間を連想させます。
芽が地上に出た後、土の中の「球根」と成長する「芽」を「太陽」と「月」に例えていますが、一般的にはこれらの天体は同時には見られません。
しかし、この曲では寂しさを共有することで心が軽くなり、輝くことができるというイメージが表現されています。
太陽と月が会えない距離にあっても、お互いに影響を与え合う関係性が描かれています。
実のならない花も 蕾のまま散る花も
あなたと誰かのこれからを 春の風を浴びて見てる
花には全てが開花するわけではなく、実を結ばない花や蕾のまま散っていく花もあります。
恋愛に置き換えて考えると、恋が実ることもあれば、実らない恋もあります。
相手への気持ちが膨らんだまま散っていく恋もあるでしょう。
これらの様々な光景を、春の風を浴びながら見ているのがこの曲のタイトル「桜」の意味として捉えられます。
また、これを恋愛に限らず広く解釈すると、「何もかもが順調にはいかない」という意味にもなります。
自分が望むことでも、すべてがうまくいくとは限りません。
その思いだけが募り、結局挑戦できなかったこともあるでしょう。
恋愛に限らず、誰かに伝えたかった気持ちも同様です。
謝りたいと思っても、感謝の気持ちを伝えることができなかった経験もあるでしょう。
これらすべてが、咲き誇ることができなかった蕾のように表現されています。
しかし、これらの経験は人生の糧になります。
同じ失敗を繰り返さないようにし、同じ苦しみを味わわなくて済むように、蕾も生きる糧にしていこうという前向きなメッセージが込められています。
桜の花びら散るたびに 届かぬ思いがまた一つ
涙と笑顔に消されてく そしてまた大人になった
追いかけるだけの悲しみは 強く清らかな悲しみは
いつまでも変わることの無い
無くさないで 君の中に 咲く Love…
サビに入ると、桜の花が散っていく様子と、想いが届かず失恋を経験した人物の感情が重ね合わされます。
しかし、”そしてまた大人になった”というフレーズからは、失恋を経て成長する前向きな意味が読み取れます。
失敗した恋を責めるのではなく、その失恋の悲しみは強く、清らかであり、これから先も変わらないことから、その気持ちを忘れないでほしいというメッセージが込められているように感じられました。
また、歌詞の最後のフレーズは、タイトルの「桜」にかかっています。
愛が咲くとは、自分の心の中に生まれる愛おしい気持ちのことでしょう。
実らない恋を経験すると、人は愛することに対して臆病になりがちですが、この楽曲ではそのような臆病さは必要ないと歌っています。
恋が実らなかったとしても、その経験は確実に人生に繋がっていくという前向きなメッセージが込められています。
そして、その温かな気持ちがあれば、いつか別の人と出会い、その人に愛情を注ぐことができるでしょう。
人を愛する気持ちを失わずに、いつまでも大切にしてほしい。
そのような願いも込められているように感じられますね。
失恋を恐れずに前進してほしい
街の中見かけた君は寂しげに 人ごみに紛れてた
あの頃の 澄んだ瞳の奥の輝き 時の速さに汚されてしまわぬように何も話さないで 言葉にならないはずさ
流した涙は雨となり 僕の心の傷いやす
失恋を経験して少し成長した主人公は、街の中で叶わなかった恋人と再会します。
彼女は人混みの中で寂しげに立っている姿でした。
主人公は以前の彼女の輝きが失われるのではないかという不安を感じましたが、彼女にやさしく接し、「何も話さないで」と声をかけます。
彼女はただ泣くばかりでしたが、その涙は主人公の心を癒やしていきました。
涙さえも、人の心を潤し成長させる影響を持つことを主人公は感じます。
雨が大地を潤し、花や草の成長を促すように、涙も人の心を潤し、成長させるのです。
泣くことが苦しくても、その涙が悪いことを洗い流してくれることを知ります。
時には涙を流すことも許されるし、それが優しさとなることを感じます。
人はみな 心の岸辺に 手放したくない花がある
それはたくましい花じゃなく 儚く揺れる 一輪花
花びらの数と同じだけ 生きていく強さを感じる
嵐 吹く 風に打たれても やまない雨は無いはずと
2番のサビに入ると、同じメロディーでありながら、1番とはまったく異なる歌詞が歌われます。
心の岸辺にある手放したくない花とは、何を意味するのでしょうか?
これは、プライドや誠実さのようなものを連想させますが、ここでは「純粋な心」「正直な心」といったニュアンスで捉えることができるでしょう。
その純粋な心は必ずしもたくましいとは限りませんが、一輪の花のように儚く揺れる様子から、そこに生きていく強さを感じることができます。
そして、どんなに雨や風に打たれようとも、その心が消えることはないと伝えています。
一輪で表現されることから、その心が不安定であることがわかりますが、同時に一輪で咲き続ける強さやたくましさも感じられます。
例え強い雨風に晒されても、例え花びらが吹き飛ばされても、その心はしっかりと根を張り、いつか立ち直れる日が来ることを信じています。
人生でも同様に、立ち向かえないほどの辛いこと=嵐に見舞われることもあるでしょう。
その風で大きく揺れても、「純粋な心」「正直な心」を失うことはありません。
じっと耐え忍び、いつか幸せ=晴天が訪れることを待ち続けているのでしょう。
桜の花びら散るたびに 届かぬ思いがまた一つ
涙と笑顔に消されてく そしてまた大人になった
追いかけるだけの悲しみは 強く清らかな悲しみは
いつまでも変わることの無い
君の中に 僕の中に 咲く Love…
ラストの大サビでは、失恋を経験するたびに成長し、大人になっていくことを歌っています。
悲しい思いもするけれど、その感情は桜のようにいつまでも美しく君の心の中で咲き続けるんだ。
だから失恋を恐れずに前進してほしいという、力強いメッセージが込められています。
まるで人生の教訓のよう
名もない花には名前を付けましょう この世に一つしかない
冬の寒さに打ちひしがれないように 誰かの声でまた起き上がれるように
最後のフレーズを再度振り返りながら、これまでの曲全体から伝えられてきたメッセージを考えてみました。
失恋を経験し、新たな恋愛をするためには、自分の中にある「名もない花」に名前を付けることが重要です。
この花には、新たな恋愛への希望や温かい気持ちが込められています。
その名前を付けることで、人の心はより強くなります。
人生で辛い時が訪れても、愛した経験やその時に抱いた温かい気持ちが支えとなります。
そういった意味で、散ってしまった花であっても、その花に名前を付け、大切にしておくべきだと感じます。
これはまるで人生の教訓のようであり、生きていく上で大切なことが歌詞に込められています。