「流星」に込められた藤巻亮太の想いとは？
レミオロメンの名曲「流星」は、藤巻亮太が手がけた歌詞とメロディーの美しさが際立つ作品です。
しかし、藤巻自身が「語るのが難しい曲」と表現するように、その真意を完全に理解するのは容易ではありません。
「流星」は2006年にリリースされたアルバム『HORIZON』に収録されており、アルバムのラストを飾る楽曲として、特別な位置づけを持っています。
切なくもどこか希望を感じさせるこの曲は、藤巻が少年時代に抱いた記憶や感情をもとに作り上げたものです。
藤巻がこの曲で表現したかったのは、流れる星のように儚く消えてしまう何かに対する憧れや敬意。
そして、それが人生の一部として受け入れられる様子を描くことでした。
流星を目撃した一瞬の驚き、そしてそれが瞬時に消え去る寂しさ。
その間に浮かび上がる感情は、人間が生きる上で避けられない「時の流れ」や「夢の終わり」を象徴しています。
こうしたテーマを歌詞に落とし込むことで、誰もが共感できる深い物語が生まれています。
「流星」の歌詞を紐解く：少年の視点と母の愛
「流星」の歌詞は、一見シンプルな表現が並んでいますが、その奥には複雑な感情と物語が隠されています。
歌詞の冒頭、少年が「ママ、あれは何なの」と母親に問いかける場面は、多くの人に懐かしい幼少期の記憶を呼び起こさせます。
このシーンでは、流星に惹かれる少年の純粋さと、母親が「飛行機よ」と答える何気ないやり取りが描かれています。
しかし、この「飛行機」という答えは、流星の本質を正確に説明するものではありません。
それゆえ、少年は説明が欲しいという気持ちを抱きながらも、それを忘れてしまうのです。
母親と少年の間に流れるこの微妙な感情のズレが、曲全体を通して繰り返されます。
母親は少年の視点に完全に寄り添いきれていませんが、それでも少年にとっては母親がすべての答えを持つ存在です。
このテーマは、母親から子供へ、あるいは子供から母親への愛の形を示しており、流星という儚い存在を介してその関係性を表現しています。
夢と現実：流星が象徴する儚さのメッセージ
「流星」の中心テーマの一つは、夢と現実の間にあるギャップです。
歌詞の中で登場する流星は、少年時代に抱いた純粋な夢を象徴しています。
一方、シャトルの描写は、周囲から注目を浴びる「大人の成功」や「永続性」を象徴しており、これら二つの存在が対比されています。
流星は、一瞬の輝きを放ちながら消えゆくものであり、儚さの代名詞ともいえる存在です。
夢を追いかけていた頃の無邪気さや、未来に対する無限の可能性を秘めた状態がこれに重ねられています。
しかしながら、歌詞の中で流星は「忘れてしまった」とされ、現実の厳しさや挫折によって夢が遠ざかる様子が暗示されています。
一方で、「永遠が蹴飛ばした星」という表現は、夢が叶わなかったとしても、それが無意味ではないことを示唆しているように感じられます。
時間と記憶の流れ：消えゆくものの美しさ
「流星」の歌詞では、時間の流れと記憶の関係性が巧妙に描かれています。
「過ぎてゆく時はいつも過ぎてゆく」というフレーズは、誰もが体験する「時の流れ」という普遍的なテーマを取り上げています。
この中で、記憶は色褪せていくものとして表現されていますが、それを「頼りにしてそっと大人になる」というフレーズにより、消えてしまうのではなく、人生の一部として活かされるものだと示唆しています。
歌詞の中で、「かいた汗もいつか乾いてしまう」とあるように、過去の努力や経験は時間の中で形を変えていきます。
しかし、それらの記憶が無駄になるわけではありません。
それどころか、消えゆくものだからこそ、そこに美しさや価値が生まれるのです。
この観点が「流星」というタイトルにも表れており、時間の儚さを歌った楽曲として際立った存在となっています。
「笑っていて」の祈り：母から息子へのメッセージ
「流星」の歌詞の中で、最も感動的な部分は、「笑っていて」というフレーズが繰り返される場面です。
この言葉は、母親が息子に対して願う祈りのようにも、息子が自分自身に向ける励ましのようにも解釈できます。
特に、夢を追いかける中で挫折を経験した人々にとって、この言葉は心に深く響くものとなっています。
母親の視点で捉えれば、「笑っていて」という言葉は、息子がどのような状況でも幸せでいてほしいという純粋な願いを示しています。
一方で、息子自身が「笑っていて」と自らに語りかける場面は、過去の夢や挫折を受け入れながら前に進む決意を表しています。
この二重構造のメッセージ性が、「流星」の魅力をさらに引き立てているのです。
