くるりの軌跡:頻繁なメンバーチェンジの背景とは?
1996年、立命館大学の軽音サークル「ロックコミューン」で結成されたロックバンド「くるり」は、デビュー以来、数多くのメンバーチェンジを経てきました。
初期のメンバーである岸田繁(ギターボーカル)、佐藤征史(ベース)、森信行(ドラム)の3人から始まり、その後、多彩なメンバーがバンドの音楽に新しい息吹を吹き込んできました。
現在までに正式メンバーとして名を連ねたミュージシャンは10名以上にも上ります。
頻繁なメンバーチェンジの背景には、「音楽そのものを優先する」というバンドの独特な姿勢が大きく関わっています。
ボーカル兼リーダーの岸田は、作品ごとに求める音楽性を具体化するため、柔軟にメンバーを入れ替えることを厭わない決断を続けてきました。
その結果、バンドの編成や楽器構成が大きく変化するたびに、くるりの楽曲は多様性を増し続けています。
ファンの間では、メンバーチェンジそのものがくるりの進化を象徴する要素と捉えられることも少なくありません。
岸田繁と佐藤征史:不動の核としての役割
数多くの変化を経験してきたくるりの中で、不動の核としてバンドを支え続けているのが、結成時から在籍する岸田繁と佐藤征史の二人です。
岸田は、バンドのメインソングライターとして数々の名曲を生み出し、その叙情的な歌詞や大胆なアレンジによって「くるりらしさ」を形作ってきました。
一方、佐藤は、独特なベースラインと多彩なコーラスワークでバンドのサウンドに深みを与えています。
彼ら二人のパートナーシップは、単なる音楽活動にとどまらず、バンドのアイデンティティそのものを支える柱となっています。
時には他のメンバーが抜けるたびに、岸田と佐藤は二人体制で新たな音楽を模索し、結果的にその挑戦が次のくるりを形成するきっかけとなってきました。
このような柔軟さと強固な信頼関係が、バンドの長寿と進化を支えているのです。
メンバーチェンジがもたらす音楽性の進化と多様性
くるりの特徴的な点は、アルバムごとに大きく変化する音楽性です。
初期のインディーズ時代には、ギターロックやフォークに根ざした楽曲が多かったものの、メジャーデビュー以降はダンスミュージック、エレクトロニカ、クラシック音楽など、ジャンルの枠にとらわれない挑戦が続けられています。
この進化を可能にしたのが、メンバーチェンジによる新たな才能の注入です。
例えば、2001年にリードギタリストとして加入した大村達身は、バンドに繊細でテクニカルなプレイスタイルをもたらしました。
また、トランペットを担当したファンファンの加入により、くるりのサウンドは一気に色彩豊かなものとなりました。
このように、くるりはその時々で必要な才能を迎え入れ、多様な音楽性を展開してきました。
「作品重視」の哲学が形作るくるりのクリエイティビティ
くるりの音楽制作における哲学は、一貫して「作品重視」にあります。
バンドのリーダーである岸田は、「音楽を追求するためなら、友情や固定観念に縛られる必要はない」と語っています。
この姿勢が頻繁なメンバーチェンジの背景にあると同時に、バンドのクリエイティビティの源泉でもあります。
その例として、2003年にリリースされたアルバム『アンテナ』は、短期間の在籍だったクリストファー・マグワイアをフィーチャーし、彼のプレイスタイルを生かした楽曲で構成されました。
また、海外のプロデューサーを起用するなど、外部の影響を積極的に取り入れる柔軟性も、くるりの独自性を支える重要な要素です。
新アルバム『感覚は道標』と現在のくるり
2023年、くるりは新アルバム『感覚は道標』をリリースしました。
このアルバムは、初期メンバーである岸田、佐藤、そして2002年に脱退した森信行が再び集結し制作されたもので、バンドの原点と進化を同時に感じさせる内容となっています。
『感覚は道標』では、リバーブを活用したスタジオ録音の質感が重視され、温かみのあるサウンドが特徴です。
楽曲には、バンドの持つ多様な音楽性と「現在のくるり」が映し出されています。
この作品は、懐古的ではなく、今を生きるバンドの姿勢を示す一枚となっています。
くるりの軌跡を振り返りながらも、進化し続ける彼らの未来がさらに期待されるところです。