【One more time, One more chance/山崎まさよし】歌詞の意味を考察、解釈する。

この曲は、1997年にリリースされた山崎まさよしの4枚目のシングルで、本人初の主演映画「月とキャベツ」の主題歌として使われました。
その後、2007年には新海誠監督作品「秒速5センチメートル」の主題歌として再び起用され、スペシャルエディション版が発売されるなど、長い間愛されている曲となっています。
「One more time, One more chance」の歌詞に迫ってみましょう。

自分にとって大切なものは何か

この曲はさまざまな解釈がされています。
「デビュー当時の夢を追い求める歌」とも、「阪神淡路大震災で被災した彼女を想う歌」とも言われています。
しかし、共通しているのは、大切な何かを追い求める想いが込められているという点です。
この想いは、誰もが持つ普遍的なものでしょう。

生きる上で、忘れたくないものや手放したくないもの、そして手に入れたいもの、それは私たちにとって大切な存在です。
それは誰にでも必ずあることでしょう。

自分にとって大切なものは何だろうと考えながら、この曲を解釈していくことが大切です。
そうすることで、その深層にあるメッセージにより近づくことができるでしょう。

一貫している想いとメッセージ

これ以上何を失えば 心は許されるの
どれ程の痛みならば もういちど君に会える
One more time 季節よ うつろわないで
One more time ふざけあった 時間よ

物語の導入は、「これ以上何を失えば」という哀しみに満ちたフレーズで始まります。
この歌詞から相手がもはや近くにいないことが伝わります。
言い換えれば、相手は亡くなってしまったのかもしれません。
それでもなお、彼または彼女に会いたいという想いが強く、時が過ぎ去ることが無情で残酷に感じられます。

過ごした時間を取り戻したい気持ちが、歌詞から伝わってきます。
特定の誰かを思っているのかもしれないですね。

くいちがう時はいつも 僕が先に折れたね
わがままな性格が なおさら愛しくさせた
One more chance 記憶に足を取られて
One more chance 次の場所を選べない

この歌詞は、亡くなったあなたとの思い出を回想していく内容です。
喧嘩や上手くいかなかったことも、今では大切な記憶として心に刻まれています。

忘れたくても忘れられない思い出は、誰にでもあります。
一歩踏み出すことができない焦燥感が表現されています。

いつでも捜しているよ どっかに君の姿を
向いのホーム 路地裏の窓
こんなとこにいるはずもないのに
願いがもしも叶うなら 今すぐ君のもとへ
できないことは もうなにもない
すべてかけて抱きしめてみせるよ

心の中の想いがまっすぐ伝わる部分です。

「向かいのホーム 路地裏の窓」

日常の中で、突然君が現れるかのような予感が湧いてきます。
あり得ないような予感や願いが常に心を揺さぶっています。
失った時間を取り戻したいという強い願いがサビに込められています。

寂しさ紛らすだけなら
誰でもいいはずなのに
星が落ちそうな夜だから
自分をいつわれない
One more time 季節よ うつろわないで
One more time ふざけあった時間よ

この歌詞に登場する「星」は、君を象徴しているように受け取れます。

「星が落ちてしまうこと=君を悲しませること」

どこかで君が見ているかのようで、自分も含めて偽ることはできません。
誰でも良いわけではなく、君以外は受け入れられないという思いが、2番の導入部分に感じられます。

いつでも捜しているよ どっかに君の姿を
交差点でも 夢の中でも
こんなとこにいるはずもないのに
奇跡がもしも起こるなら 今すぐ君に見せたい
新しい朝 これからの僕
言えなかった「好き」という言葉も

この歌詞では、人々が行き交う交差点や夢の中で君を探している様子が描かれています。
もしもう一度君に会うことができるならば、君が感じることができなかった世界を見せたいと思っています。

そして、君と離れても、きちんと君を想っていた自分を伝えたいと願っています。
伝えきれなかった想いも、しっかりと伝える決意が歌詞に込められています。

夏の想い出がまわる
ふいに消えた鼓動

心臓の鼓動がふと消えた瞬間を思い出します。
まさに一つの命の灯火が消え去った瞬間です。
歌詞では「うつろわないで」と歌っている季節ですが、季節はどんどん移り変わり、夏が訪れるたびに大切な思い出が再び巡ってきます。

いつでも捜しているよ どっかに君の姿を
明け方の街 桜木町で
こんなとこに来るはずもないのに
願いがもしも叶うなら 今すぐ君のもとへ
できないことはもう何もない
すべてかけて抱きしめてみせるよ

「明け方の街 桜木町で」

この歌詞には、実際に山崎まさよしがデビューに向けて上京した当時に住んでいた街の情景が描かれています。
アルバイトをしながら不安や期待を抱え、曲作りに没頭していた頃の様子が浮かびます。
夢や希望、さまざまなものを探し求めていた時期でしょう。

そして、特にこの部分が印象的です。

「こんなところに“来る”はずもないのに」

「来る」という言葉が使われています。

失ったものも、未来の夢もただ待っているだけでは訪れることはありません。
それらを手に入れるためには、自ら向かい、掴み取りに行かなければならないというメッセージが込められています。
この部分だけをみると、夢を追い求めることが示唆されているように感じられます。

いつでも捜しているよ
どっかに君の破片を
旅先の店 新聞の隅
こんなとこにあるはずもないのに
奇跡がもしも起こるなら 今すぐ君に見せたい
新しい朝 これからの僕
言えなかった「好き」という言葉も

「旅先の店 新聞の隅」

これまでは自分が知っている場所や君がいそうな場所を探してきましたが、ここでは更に範囲が広がります。
自分が知らない街の店や知らない場所で起こった出来事。
その中にもしかしたら君の面影があるのかもしれません。

それは名前かもしれませんし、写真に写り込む似ている姿かもしれません。
どんなに遠く離れていても、どこかには君が存在しているのではないかと思いを馳せるような感情が入り混じってきます。

いつでも捜してしまう どっかに君の笑顔を
急行待ちの 踏切あたり
こんなとこにいるはずもないのに
命が繰り返すならば 何度も君のもとへ
欲しいものなど もう何もない
君のほかに大切なものなど

「急行待ちの 踏切あたり」

他のサビの歌詞は場所を二つずつ提起してきましたが、最後だけは特定の1つの場所を指し示しています。

踏み切りを渡っていつも君の笑顔に会いに行ったのか、あるいは踏み切りで別れがあったのか、、
さまざまなことを想像させます。

そして、たとえ生まれ変わっても、また君と出会いたい。
再び出会って、一番にそばに置きたいという強い願いで締めくくられています。

1曲を通して、展開が少なく、同じ言葉が多く使われている印象を受けます。

願い、奇跡、命。
祈りにも似た感情が込められているようにも感じられます。

言葉が大切に扱われており、具体的な場所を挙げることで、情景が心にじわりと広がります。

失ってしまったもの、失いたくないもの、一番大切なもの。

この曲は自分にとって何が一番大切なのかを強く教えてくれる1曲となっています。