この曲は不倫愛をテーマにしたドラマの主題歌で、既婚者が恋に落ちた際の心情が繊細に描かれています。
その描写は非常にリアルで、たまに「桑田サンって不倫していたの!?」などという疑念を抱く人もいますが、桑田佳祐さんの才能は、その実体験がなければ書けないようモノではなく、さらに奥様である原さんがキーボードを担当し演奏している点もあるのでそんなことはないでしょう。
曲のイントロは美しく、大人の甘さで心をくすぐり、華やかな雰囲気が広がります。
ライブ会場での歓声が入ることで、その魅力が一層引き立ちます。
この曲のプロモーション・ビデオは、ライブ映像と横浜の街で愛し合う男女の映像が交互に映る構成です。
サザンのライブは、桑田さんと観客との間に性愛のような恍惚感が漂う場であり、このPVはその感覚を効果的に伝えています。
夜明けの街で すれ違うのは
月の残骸(かけら)と 昨日(きのう)の僕さ
二度と戻れない 境界(さかい)を越えた後で
嗚呼 この胸は疼(うず)いてる
薄明かりがまだ残る早朝の街角。
昨日と何かが異なることに気づく。
そう、ついに彼女との関係が新たな段階に進展した。
その責任を背負うべきだと感じている。
妻帯者である自分が、彼女との一歩を踏み出して正しかったのか、そしてその行動から生まれる後悔。
「あひみてののちのこころにくらぶれば」の和歌にあるように、抱きしめ合い、ますます深まる感情。
振り向くたびに せつないけれど
君の視線を 背中で受けた
連れて帰れない 黄昏(たそがれ)に染まる家路
嗚呼 涙隠して憂う Sunday
通常の恋人同士でも、別れる瞬間は切ない瞬間だ。
ずっと一緒にいたくて、一瞬も離れたくない気持ちがある。
しかし、彼は既婚者で、自宅には妻や子供が待っている。
彼女が彼の背中を見送る瞬間に、どんな気持ちでいるのか、彼は痛切に理解している。
ずっと一緒にいたい気持ちは変わらないが、それは実現しないことを理解している。(自分の立場を壊すつもりはない)
日曜日、普通の夫や父親として家族と過ごす中で、彼女のことで胸がいっぱいだ。
君無しでは 夜毎(よごと)眠らずに
闇を見つめていたい
ここで彼は彼女に注意を払っている。
妻を置いて、君のことに集中しているよ、と。
マリン ルージュで愛されて
大黒埠頭で虹を見て
シーガーディアンで酔わされて
まだ離れたくない
マリン ルージュは、横浜港を巡る洗練された観光船で、白い船体が特徴です。
シーガーディアンは、横浜のホテルニューグランドに位置する、大人らしい雰囲気ただようバーです。
非常に洗練された大人のデートの場所。
楽しいほどの刺激と、胸が高鳴る瞬間を楽しむ時間。
早く去(い)かなくちゃ 夜明けと共に
この首筋に夢の跡
だけど、彼は最終的には家族が待つ家に戻らなくてはならない。
夜は二人で共に過ごせても、朝になると彼は別の人生に戻る。
だれにも知られてはいけない秘密の愛の関係。
それが悔しくて、彼女が彼の首筋につけたキスのあとが残っている。
少々困ったが、彼女の熱い思いが嬉しくて、帰り道、彼はそっと自分の首筋を撫で、彼女の唇を思い出す・・・・。
愛の雫(しずく)が 果てた後(あと)でも
何故(なぜ)にこれほど 優しくなれる
歌詞は非常に美しく表現されていますが、内容は現実的です。
おそらく、奥さんとの関係が終わった後、お互いに何も言わずに眠りにつくのだろうと思います。
「疲れているんだ。」
この言葉を使って、それぞれが自分の場所へと引き換えにするのです。
奥さんも、もうその光景に慣れてしまっているでしょう。
しかし、彼女に対しては、いつまでも髪を撫でたくて、そのかわいらしい顔を見つめたいと思っています。
そうするうちに、ますます彼の内から愛おしさがあふれ、溢れ出てくるのです。
彼は単なる「遊び」を求めて彼女との関係に身を投じているのではなく、どうしようもなく純粋な恋心が彼を導いているのです。
二度と戻れない ドラマの中の二人
嗚呼 お互いに気づいてる
不倫については、自分には一生縁がないと思っていた。
しかし、今、まるでドラマの主人公のように状況が変わっていることに驚いている。
「お互いに気づいてる」とは、何を気づいているのだろう?
・・・・このドラマチックな恋において、お互いが通常の枠を超えていること。
・・・・このドラマには決して幸せな結末はないこと。
・・・・この恋自体が現実と幻想の境界にあること。
既婚の男と恋に落ちても、どんなに俺に心を開いても、その関係から生まれるものは何もない。
若い彼女に、そのような愛に巻き込むことは、美しい時間を浪費させる重い罪だ。
頭ではそう理解していても、心と体は離れられない。
棄(す)ても失(な)くしも 僕は出来ない
ただそれだけは 臆病なのさ
とても厳しい言葉かもしれませんが、実際に正直に言うと、私は妻子を捨てることができないし、一方で、君を失うことも耐え難いのです。
自己中心的な言葉を口にしている自分がいることは自覚しています。
しかしながら、どれだけ自分に選択肢を迫っても、・・・答えが出ないのです。
・・・こんなに素直に自分の気持ちを語ることができる男だな。
彼はおそらく楽しい人だけど、根底には真剣な一面があるのでしょうね。
女性は、そんな男性に魅かれることがあるのです。
連れて歩けない 役柄はいつも他人(たにん)
嗚呼 君の仕草を真似る Sunday
二人はお互いが極めて大切な存在で、お互いを必要としています。
「恋人」の関係ではありますが、彼は既婚者です。
「恋人」としての存在にはなれないのが現実です。
いつも一緒に過ごしたい気持ちは強いけれど、実際にはかなり制限された行動しかできません。
他人に見られないようにする緊張感も、時には刺激的ですが、どれだけ愛し合っていても、職場(日曜日以外で会うというのは職場不倫と言えるでしょうか?)では、彼女を特別扱いすることはできませんし、彼女も自分のことを「○○サン」としか呼べません。
他人を演じる以外に方法はありませんし、彼女が自分のものだとは誰にも言えません。
時折、非常に悔しく、焦燥した気持ちに襲われます。
会えない日曜日、自分の何気ない仕草が彼女と同じであることに気づくことがあります。
例えば、朝のコーヒーにミルクを注ぎ、ゆっくりとティースプーンでかき混ぜ、模様を作ること。
これは彼女の日常の仕草です。
自分はこれまで行わなかったことです。
彼女とカフェで過ごした時間の会話を思い出し、彼女の声や笑顔が脳裏に浮かびます。
・・・彼女に会いたくなります。
台所で料理をする妻は、ダイニングテーブルでコーヒーを飲む彼の内面に気づいていないようです。
新聞を読むふりをしながら、思わず笑顔を隠します。
好き合うほど 何も構えずに
普通(ただ)の男でいたい
お互いに深い愛情を抱くにつれて、もっと相手にしてあげたいことが増えます。
しかしながら、実際にはできないことが多く存在します。
自分は彼女よりも年上で、社会的な地位もある立場にいます。
それでも、彼女の前では、すべてを忘れて、ただ彼女を愛する一人の男性として存在したいと思っています。
自己中心的な主張かもしれませんが、彼女と過ごす時間は、私の社会的な肩書や立場を越え、自分自身としての純粋な自由さを感じさせてくれます。
ボウリング場でカッコつけて
ブルー ライト バーで泣き濡れて
ボーリングは、おそらく彼の得意なスポーツでしょう。
かつての腕前を、彼女の前で披露したことがあるのかもしれませんね。
「ブルー ライト バー」は、スターホテル横浜内にあるエレガントなピアノバーです。
以前紹介した「シーガーディアン」が位置するホテル・ニューグランドとは隣接しています。
ハーバー ビューの部屋で抱きしめ
また口づけた
一節が美しく歌われるこの部分は、非常に魅力的です。
口づけをしながら、抱き寄せられていく感覚が心地よく感じられます。
感情の起伏が激しい瞬間です。
ボーリング場で楽しく盛り上がり、ピアノバーでお酒を楽しむと、やはり切なさが二人に広がります。
ホテルの部屋で抱き合い、愛情が溢れ出る瞬間。
逢いに行かなくちゃ
儚(はかな)い夢と 愛の谷間で溺れたい
彼女とのデートは誰にも秘密にしています。
巧妙な口実を考えながら、時に後ろめたさを感じつつも、彼女との待ち合わせを楽しみに胸が高鳴り、その鼓動が罪の意識を薄めてしまいます。
出会ってしまった運命に導かれるように、彼は彼女への恋に夢中です。
「谷間」とは、二つの山があることを指します。
二つの山、つまり妻と彼女。
彼はこれら二人の女性への愛の間で、苦しんでおり、もがいています。
そして、ここでも彼女との関係は「儚い夢」とされ、将来性がないことが示唆されています。
言い換えれば、彼は離婚の意思を全く持っていないわけです。
ただし、「溺れたい」という気持ちも、この恋によって、社会的なリスクを無視してでも進みたいという衝動を抱いているようです。
彼は自身がかなり危険な行動をとっていることを自覚しているようです。
マリン ルージュで愛されて
大黒埠頭で虹を見て
シーガーディアンで酔わされて
この箇所から、二人のデートの場所が特定できます。
山下公園は、横浜港を一望できる素晴らしいデートスポットです。
ここには観光船マリン ルージュの発着桟橋があり、近くには「シーガーディアン」(ホテル・ニューグランド)、「ブルー ライト バー」(スターホテル横浜)もあります。
大黒埠頭は、山下公園から港を眺めると正面に見えます。
どれほど素晴らしいでしょう・・・・!
ここでのデートは、ロマンチックなムードに浸れることでしょう。
二人はおそらくマリン ルージュのランチクルーズに参加したのでしょう。
歌詞に「愛されて」とありますが、マリン ルージュには個室の客室が存在しないため、「虹を見て」いるというのはにわか雨が降ったことを示唆しています。
クルーズではベイブリッジを渡り、大黒埠頭を一周するでしょう。
そこで、二人は非常に美しい幸せな瞬間を共有したのです。
船を降りた後、高級ホテルのバーでカクテルを楽しんでいます。
この日のデートは、おそらく彼が考える理想的な計画でしょう。
彼が大切な彼女のために練り上げた、理想のデートです。
そして、これは家族とは絶対に行かないであろう選択肢です。
旅行先ではなく、近くの横浜で観光船に乗ることは通常はしないことであり、妻や家族と一緒にホテルのバーで高価なカクテルを楽しむこともありません。
第一に、妻や家族と一緒に来ても、このようなドキドキ感を味わうことはできないのでしょう。
まだ離れたくない
早く去(い)かなくちゃ 夜明けと共に
この首筋に夢の跡
だから愛の谷間で溺れたい
楽しいほど、別れの瞬間が辛く感じられます。
余韻が心に残る中で、時計の針が急かすように進みます。
安定したがつまらない帰宅が待っています。
まるでシンデレラが夢の城から現実の家へと戻るような気分でしょう。
最後に、この恋が「夢」であると繰り返し、「愛の谷間」で「溺れ」る苦悩を表現しています。
彼は必ず家に戻り、離婚の考えはまったくありません。
では、彼女はどうでしょうか?
彼は「お互いに気づいてる」と解釈していますが、果たしてそうでしょうか?
彼が既婚者であることは最初から分かっており、離婚が容易ではないことも理解しています。
彼らは秘密の関係を築いており、関係が深まるにつれて独占したいという気持ちは一般的です。
「ただの遊びではない。本当に愛している。」
この言葉を信じることはできても、高い壁が常に立ちはだかり、足を踏み入れることができない現実があります。
愛情が深まれば深まるほど、哀しみも増すつらい恋愛です。
この曲「LOVE AFFAIR〜秘密のデート〜」は、美しいメロディーで不倫の恋の胸の高鳴りをリアルに表現し、同時に、男性の自己中心的な側面も率直に描き、幅広いリスナーに共感を呼び起こします。
この曲は、不倫に対する辛辣な視点を持つ作品として評価されています。