今回は、あいみょんの「君はロックを聴かない」という楽曲の歌詞の意味について考察していきたいと思います。
この曲は、2017年8月にリリースされた彼女の3rdシングルであり、彼女の知名度を急上昇させた超人気曲です。
どこかノスタルジックな雰囲気も感じられるメロディが、心地よさを引き立てています。
この曲は、「あるフレーズ」を元に作られたと言われていますが、そのきっかけとなった言葉は一体何だったのでしょうか?
こちらのポイントも合わせて紹介していきたいと思います。
言葉選びのセンスは抜群
「君はロックを聴かない」は、2017年8月にリリースされた「あいみょん」の3rdシングルです。
この年、全国のAM/FMラジオ系42局でパワープレイを獲得し、まさに「あいみょん」の代表曲となりました(※2017年8月度パワープレイ)。
タイトルには「ロック」という言葉が使われていますが、その実、落ち着いた雰囲気と心に染みるようなメロディが特徴的な楽曲となっています。
耳に心地よい旋律と、微かな切なさを含んだ歌声は、多くの人々に共感を呼び起こしたことでしょう。
この楽曲は、あいみょん自身が突然思いついた特定のフレーズを起点にして制作されたものです。
あいみょんはインタビューの中で、以下のようにその経緯を語っています。
この曲は、去年の8月末(リリースの1年前)にできた曲で「あの頃」の青春や「今」の青春、少し懐かしいようなくすぐったいような青春の音や匂い、思い出を歌った曲です。
ふとした時に「僕の心臓のBPMは190になったぞ」っていう歌詞が浮かびました。
普段から歌詞とメロディを同時に作るので「僕の心臓のBPM?」から物語を派生させていったと思います。
瞬間的な思いつきで曲を作ることが多いので歌詞が浮かんだ時とか曲を作った時の記憶が曖昧なんですけど(笑)
その時感じたこと思ったことそのまま書いてます。
特に「こだわり」というものを考えながら作詞する事も少ないのですが、曲の始まりの一言目は印象的なワードが良いな。とか思ったりはします。
「君はロックを聴かない」というタイトルは、物語的な要素を含み、興味を引きます。
しかも、そのタイトルとは裏腹に、曲を聴いてみるとまったくロック調ではなく、むしろフォークソングに近い雰囲気が漂います。
このタイトルの小さな意外性が、聴衆を引き込み、その後の歌詞の世界に没頭させる手助けとなっています。
あいみょんの言葉選びのセンスは抜群であり、その才能が光ります。
ちなみに、この曲における特定のフレーズ、「僕の心臓のBPM」について、解析を通じて詳しく説明していきたいと考えています。
二人の関係性は
それでは、今からはあいみょんの「君はロックを聴かない」の歌詞の意味について、考察と解釈を深めていきたいと思います。
この曲は、聴く人それぞれの青春がテーマとされており、その視点から解釈を行ってみたいと思います。
この楽曲において最も重要な要素は、聴く人の個々の経験や感情によって異なるという点です。
そして、歌詞の中で想像をかき立てる表現があいみょんの好みであるとも言えます。
この歌に込められた大切な要素は、「君」によって受け取る意味や感情が、歌う「僕」の心情によって変化することです。
この歌詞を通じて、どのようなメッセージや感情が伝えられているのか、また「君」に対する「僕」の思いが具体的にどのように表現されているのか、これらを解き明かしていきたいと考えています。
少し寂しそうな君に
こんな歌を聴かせよう
手を叩く合図
雑なサプライズ
僕なりの精一杯
まず始めに、この楽曲の中で登場するキャラクターは「僕」と「君」の二人です。
歌詞の中で、二人の関係性に関するいくつかの要素が描かれています。
要約すると以下のようなポイントがあります。
- 登場人物は2人。
- 「君」は落ち込んでいる。
- 「僕」は「君」を励ますことを望んでいる。
- 「君」と「僕」の関係性ははっきりしない。
特に注目すべきは、二人の関係性です。
歌詞に登場する「僕」と「君」の表現から、男女の関係を連想しがちですが、その他にも様々な可能性が考えられます。
彼らの関係性が具体的に何なのかは歌詞からは分からず、恋人かもしれないし、片思いかもしれないし、親友かもしれない。
さらには別の可能性も考えられるでしょう。
歌詞の中で描かれているシーンは、「僕」が「君」が寂しそうな様子に気づき、彼(または彼女)を元気づけようとする場面です。
しかし、どうすればいいのか迷いながらも、「パンッ!」と手を叩く合図を出します。
この行動は、「僕」の中で迷いがある中での行動であり、どうしても何かしてあげたい気持ちから来ているようです。
彼が後ろから近づいて手を叩く音で、「君」は驚き、そして「僕」の方を振り向きます。
この光景が詠まれている様子が感じられます。
このシーンは、「僕」が不器用ながらも、何かをして「君」の気持ちを和らげようとする姿を描いており、その真摯な努力がサプライズとして表現されていると感じられます。
「君」は失恋をした
ここで少し個人の考えを述べさせていただきます。
あいみょんの楽曲「君はロックを聴かない」のテーマは、「それぞれの青春を思い出してほしい」と述べられているように思えます。
そのため、手を叩く合図がショッピングでの「パンパン!はい店員さん、これを持ってきて!」のような派手なサプライズとは異なり、何か別の意味を持っていると考えられます。
このような展開は少々不自然であり、またそれに関連する店員さんの持ってくる物が埃まみれになる可能性もあるため、そのような方向性ではないでしょう。
「君はロックを聴かない」の歌詞の中で言及されている青春は、おそらく小学校高学年から中学生くらいの年齢層に該当するものと推測されます。
特に音楽に興味を持ち始める時期として中学生の時期が関連性があるため、このシーンは「君」が落ち込んでいる状況から気をそらすための行動として位置づけられるのではないかと考えます。
ただし、この時点ではまだ「君」が「青春中」なのか、過去の出来事として語られているのか、はっきりとしたことは分かりません。
徐々に歌詞の全体像が明らかにされていく構造が見受けられます。
それでは、考察に戻りたいと思います。
埃まみれ ドーナツ盤には
あの日の夢が踊る
真面目に針を落とす
息を止めすぎたぜ
さあ腰を下ろしてよ
ここから更に状況が明確になりました。
表現から、「埃まみれ」というフレーズを通じて、年月が経過したことが分かります。
また、「あの日の夢」という表現も使われており、過去を懐かしむ気持ちが反映されています。
こうした描写から、「僕」は過去の出来事を回想する年齢になっていることが示唆されます。
言い換えれば、「僕」は成人していることが考えられます。
そして、「君」に対して、過去に共有した音楽体験を再び味わわせたいという願いが描かれています。(ただし、「君」の正体についてはまだ分かりません。)
その上で、特別な音楽体験を「君」に提供するために、レコードの針を置くことの大切さも理解できます。
レコード再生においては、針の重さや角度などが音質に影響を与えるため、慎重になるのは自然なことです。
歌詞の中に登場する「息を止めてそっと置いた針」という表現から、その繊細な行動が伝わります。
また、「さあ腰を下ろして」というフレーズから、「君」を異なる場所から連れてきたことも伺えます。
この場所は、特別な音楽体験を楽しむための部屋であるかもしれません。
歌詞に登場する「ドーナツ盤」という表現も特筆すべき点で、ロックのジャンルに関連して楽しむ音楽の種類を想像させます。
タイトルに「ロック」とあるため、さまざまな種類のロックをイメージしながら物語を考えてみるのも興味深いかもしれません。
あいみょん自身が愛好する音楽として、ビートルズや浜田省吾などが挙げられるのも理解できますね。
フツフツと鳴り出す青春の音
乾いたメロディで踊ろうよ
この部分では、音楽の描写が行われています。
歌詞中に登場する「僕」が愛してやまない、そしてよく聴いていた思い出の曲が描かれています。
この曲は恋愛に限らず、さまざまな出来事と共に過ごしてきた可能性が考えられます。
曲の特徴を言葉で表現している部分でもあります。
パーンッと響くドラムのスネアの音、歪んだ音でかき鳴らされるギターの音、そして重低音でグルーヴ感を演出するベースの音。
これらの音が描写されているところです。
この音楽の要素が、聴いている人々に自然なリズム感を引き起こし、ロックの魅力に魅了されることを示唆しています。
君はロックなんか聴かないと思いながら
少しでも僕に近づいてほしくて
ロックなんか聴かないと思うけれども
僕はこんな歌であんな歌で
恋を乗り越えてきた
このサビ部分から読み取れるのは、「君」がいつも聴いている音楽はロックではないこと、そしてそのことについて「僕」は知っているということです。
この部分にはいくつかの関係性が考えられ、それによって歌の意味合いも変わることが示唆されています。
・片思いの相手である「君」に、自分の好きなロックの曲を聴かせて、元気づいてもらいたいと思っている。
・失恋した「娘」に、父親(僕)が、自分も恋を乗り越えてきた経験から選んだ曲を聴かせている。
・失恋した「息子」に、父親(僕)が自分の好みに近い曲を提案し、気分転換を促している。
これによって、曲の受け取り方が異なる可能性があり、様々な楽しみ方ができることが分かります。
ただし共通しているのは、「君」が落ち込んでいる理由が恋愛関連であるということです。
また、「僕」は恋を乗り越えてきた経験から、「元気出すならやっぱりロックだよね!」と考えていることが示唆されます。
この部分で「恋を乗り越えてきた」という表現が用いられているため、寂しそうな「君」が失恋を経験している可能性が考えられます。
「僕」の心境
僕の心臓のBPMは
190になったぞ
君は気づくのかい?
なぜ今笑うんだい?
嘘みたいに泳ぐ目
「BPM」とは、一分間における拍数のことを指し、メトロノームのテンポと同義です。
このテンポに合わせて音楽が進行します。
例えば、「BPM190」と言うと、非常に速いテンポの曲を指します。
RADWIMPSの「前前前世」のような速さを想像してみることができます。
このように、190のBPMを考えながら、心臓の拍動が同じテンポであることを想像してみると、その速さが理解しやすくなるでしょう。
鼓動が190のBPMになっているのは、ドキドキしているからです。
この部分では、「僕」のテンションが高まっていることが伝わってきます。
しかし、この速さのドキドキは、「君」に気づかれてはいけないものとしても描かれています。
ここで、「君」の存在が少しずつ明らかになってきました。
最初は、「君」に近づくことで「僕」がドキドキしているのかと思われましたが、そのドキドキが「僕」の好きな曲をかけている状況とは一致しないことに気づかされます。
この部分では、曲のテンポに合わせてテンションが上がるドキドキと、君に気づかれてはいけない緊張感のドキドキ、両方が同時に存在しているようです。
そして、その様子に「君」も気づいているのか、そして笑顔で気づいているのか、そう思っているうちに「君」がクスッと笑った場面が描かれます。
この笑顔に対する「僕」の反応が、興味深い描写として浮かび上がっています。
ダラダラと流れる青春の音
乾いたメロディは止まないぜ
「僕」は、胸が高鳴りながらも、この瞬間が永遠に続いてほしいと思っています。
ロックのリズムに乗った音楽が、このまま終わらないで欲しいと切望しています。
会話する必要もなく、ただ音楽が流れる時間が、「僕」にとっては極上の時間なのかもしれません。
そして、2番のサビで、「僕」の心情もより明確に伝わってきます。
君はロックなんか聴かないと思いながら
あと少し僕に近づいてほしくて
ロックなんか聴かないと思うけれども
僕はこんな歌であんな歌で
恋に焦がれてきたんだ
「あと少し近づいて欲しい」というフレーズには、なかなか縮まらない距離感を感じる要素が含まれています。
ここまでの歌詞を通じて、「君」の存在が恋愛対象であることがようやく理解されてきます(ただし、確定したことではありません)。
1番のサビと内容はほぼ同じですが、ラストの部分が「乗り越えてきた」から「恋に焦がれてきたんだ」と変化しています。
この変化には、「僕」の現在の心情が反映されており、その感情が非常に切なく伝わってきます。
君がロックなんか聴かないこと知ってるけど
恋人のように寄り添ってほしくて
ロックなんか聴かないと思うけれども
僕はこんな歌であんな歌で
また胸が痛いんだ
Cメロ部分に登場する「恋人のように」というフレーズは、歌詞の答えとなる部分です。
このフレーズが示すのは、恋人同士のような親密さや距離感を持って、僕と君が寄り添いたいという気持ちです。
「君」には好きな音楽とは異なる趣味があることを理解していますが、それでも「僕」は自分の方法で元気づけようとしています。
そして、「また胸が痛いんだ」という表現から、「君」の気持ちが「僕」に向いていないことを「僕」自身も感じ取っていることが伺えます。
まとめ
お察しの通り、この曲は恋に傷ついた「君」を元気づけようとする「僕」の姿を描きながら、同時に「僕」自身も恋の痛みをロックを通じて味わっているという対比が織り交ぜられています。
このような解釈で、切なさと甘酸っぱさが共鳴する楽曲として受け取ることができます。
ロックに興味がない「君」に対しても、少しでも元気を与えられるきっかけを探している「僕」の姿勢や、微妙な距離感を音楽を通じて縮めようとする願いが、青春の感覚を醸し出しています。
また、レコードで好きなロックを聴かせるというストーリーは、少年の個性やこだわりを象徴する素晴らしい要素です。
このシーンを通じて、「僕」の特別な一面が表現され、不器用ながらも心温まる優しさが感じられます。
さらに、2番の歌詞では、「君」が少しだけ元気になってきている様子も描かれており、その変化も歌詞の見どころの一つです。
あいみょんは、心情を音楽に反映させる巧みな表現力を持っており、この曲もその一例です。
彼女の他の楽曲も同様に心に響くものがたくさんありますので、ぜひ興味がある方は聴いてみることをおすすめします。