クリープハイプの11枚目のシングル「イト」は、大ヒット映画「帝一の国」のために特別に制作され、100万人以上の観客を魅了しました。
この映画は生徒会長選挙をテーマにし、緊迫したバトルが描かれています。
その中で、「操り人形」という概念が重要な要素となっています。
物語は、誰かに操られているのか、それとも自分自身に操られているのかという疑問を投げかけます。
この曲「イト」は、さまざまな「イト」が登場し、何かに操られる様子が描かれています。
その複雑なテーマに焦点を当て、解説してみましょう。
クリープハイプの楽曲に触れると、尾崎世界観に特有の興味深い歌詞に引き込まれます。
特に、タイトルにもなっている「イト」に焦点を当ててみましょう。
最初に、「糸」というキーワードに注目します。
この度はどうも 末長くどうか
誰かの糸で ぎこちないお辞儀
操り人形を結ぶ糸、自身の本音からは程遠い、ぎこちないお辞儀。
主人公たちは組織の牢獄に閉じ込められ、その息苦しさが鮮明に伝わります。
そして、「帝一の國」の一場面で登場する糸電話。
糸は人と人を結ぶ象徴です。
操り人形と糸電話が直接的に繋がっているわけではありませんが、映画を鑑賞する際に「これは同じ糸だ！」と気付く瞬間があります。
こうした遊び心も非常に魅力的です。
そして、もうひとつのキーワードである「意図」についても考えてみましょう。
この旅はどうも 雲行き怪しい
誰かの意図で やるせない動き
映画のプロットにおいて、非常に重要なキーワードとして浮かび上がるものです。
この学園生活はまるで旅のようであり、他者の指示に従い、誰かのために動くという不安な感情が強調されます。
操り人形の象徴は、操る者には独自の意図があり、同時に操られる者にも独自の意図が存在することを示唆しています。
心理的な駆け引きの中で、相互に翻弄し合いながら、最終的に糸がプツンと切れ、自分自身の本来の姿に戻る瞬間が物語のクライマックスとなります。
いつかこの糸が千切れるまで 今は踊れ手のひらで
どうか重ねた手の温もりで 何度でも探せ
いつか纏わりつくこの糸を 運命と呼べるその日まで
どうか重ねた手を掴むまで 何度でも壊せ
“手のひらで踊らせる”という表現は、前向きな側面を持っています。
他者に操られることは、必ずしも快い経験ではありませんが、相手を信頼し、我慢することで、自己評価を高める機会に変えることができます。
そして、この見えない糸が、運命と結びついていると信じることで、望む手を掴むことができるというのが、尾崎世界観が育んできた「イト」の哲学です。
人間の内面に潜む欲望と巧妙さを、敢えてポップなスタイルで表現したのが『イト』です。
この主題歌は、一つの作品に対して適度な距離感を保ち、相乗効果を発揮しています。
映画制作と音楽制作の両サイドが協力し、優れた作品を創り上げるための”意図”が、一本の”糸”として繋がっています。
実際、映画は尾崎世界観の洗練されたアイデアから生まれた作品なのです。
