「蛍」という楽曲は、サザンオールスターズによって制作され、映画「永遠の０」の主題歌として提供されました。
この曲の歌詞には、非常に強力な平和へのメッセージが込められており、私たちの生きる意義を考えさせられる歌詞となっています。
今回は、この歌詞の世界に少し触れてみましょう。
愛の歌が途絶えるように
心の灯りが消えたの
たった一度の人生を捧げて
さらば友よ 永遠（とわ）に眠れ
大切な友達が亡くなったことにより、この歌詞は深い悲しみを表現しています。
歌詞の中で「たった一度の人生を捧げて」という一節は、なぜ友達が亡くなってしまったのかという疑問や怒りを感じさせます。
しかし、その後の歌詞で「永遠に眠れ」と歌われる部分は、友達の平和な眠りを願う気持ちを表現しています。
青空は悲しい空
揺れる木漏れ日が切なくて
夏が来るたびあの日と同じ
風が通り過ぎて行ったよ
晴れわたるような青空を見ると、通常は気分が明るくなるものですが、零戦のパイロットが主人公の映画を考えると、その意味合いは異なりますね。
「青空は悲しい空」という歌詞には、青い空を仰ぐたびに、仲間たちが散っていったことを思い出す深い悲しみが表れています。
毎年夏が訪れ、吹く風はかつての仲間たちと共にいた日々と同じなのに、仲間たちと再び会うことはできず、生き残った自分が感じる切ない思いが続きます。
涙見せぬように
笑顔でサヨナラを
また逢うと約束したね
「涙見せぬように笑顔でサヨナラを」は、非常に印象的なフレーズですね。
戦時中は、大切な人を戦場に送り出す際、涙を見せることは相手に辛い思いをさせるだけでなく、生きて帰って来ること自体が不確かであるという時代でした。
そのため、笑顔で別れを告げ、再び会おうという約束を交わすことがより一層愛に溢れた行為とされました。
このような悲しい状況でも、笑顔を保ちながら別れることが、その時代の特有の愛情表現であったことは感動的ですね。
何のために己を断って
魂だけが帰り来るの?
闇に飛び交う蛍に連れられ
君が居た気がする
「己を断って」という歌詞には、自己の意志を捨てて戦場に身を投じる覚悟と、戦場で命を捧げる意味が表現されています。
そして、死んでも魂だけが帰ってくると歌われています。
自分の夢や人生を犠牲にしてまで戦場に立ち向かい、命を捧げたにも関わらず、友人たちと笑顔で過ごすことは叶わない現実に向き合う中で、なぜこんな過酷な選択をせざるを得なかったのか、亡くなった仲間たちに問いかけると同時に、人間に対して、戦争の意味や目的に疑問を投げかけています。
また、蛍の舞う美しい光景を通じて、亡くなった仲間たちの魂を想像し、切なさを感じさせる情景が描かれています。
生まれ変われたなら
また恋もするでしょう
抱(いだ)き合い命燃やすように
特攻で亡くなった人たちについて、私たち現代人とは異なる思考や感覚を持つ人々のように感じることがあるかもしれません。
しかし、映画でも描かれているように、戦争で命を落とした人々もまた、家族や恋人を持ち、私たちと何ら変わりのない人々でした。
彼らと異なるのは、生まれた時代だけであり、極めて過酷な運命に巻き込まれたのです。
この歌詞は、そんな人々の姿を思い浮かべつつ、もし生まれ変わることができるのなら、恋をし、大切な人と共に生きて、自分自身のために命を全うしてほしいと願っています。
涙見せぬように
笑顔でサヨナラを
夢溢る世の中であれと
祈り
戦時中とは異なり、今の時代では自分の夢を追い求め、大切な人と笑顔で日々を楽しむことができ、悲しい時には涙を流すことも受け入れられる幸せな世界に生きています。
この歌の最後の部分で歌われる「夢溢る世の中であれ」という言葉は、亡くなった人々の思いを代弁しているかもしれませんし、戦争を生き抜いた人々の心情を反映しているかもしれません。
過酷な運命に立ち向かい、あるいは命を捧げても、細い糸で私たちの命を繋いでくれた人々がいることを思うと、私たちは彼らの犠牲を忘れず、この世界をもっと「夢溢る」、明るい未来にしていかなければならないというメッセージが歌われているのかもしれません。
サザンオールスターズの「蛍」は、歌詞が伝える平和への祈りの深さを改めて感じることができます。
この歌詞は単なる平和への祈りだけでなく、戦争で亡くなった人々への思いも含まれています。
そして、それは現代の平和な世界で生きる私たちが、亡くなった人々への感謝や思慮を持つべきであることも示唆しています。
私たちが生かされていることの尊さや、命の重要性を考える時に、この曲を聴くことは価値があります。
時折、辛い瞬間や絶望に襲われることもあるかもしれませんが、そのような時にこの曲を聴いて、自分が生きていることの意味や、未来に果たすべき役割について考えてみることは、新たな希望を見つける助けとなるでしょう。
