「花いちもんめ」とは?—はっぴいえんどが描く日本の情景
「花いちもんめ」は、日本の伝説的ロックバンド はっぴいえんど が1971年に発表したアルバム『風街ろまん』に収録されている楽曲です。
このタイトルを聞いて、まず思い浮かぶのは日本の童謡「はないちもんめ」でしょう。
幼少期に遊んだ記憶のある人も多いかもしれません。
童謡「はないちもんめ」は、売り手と買い手のやりとりを描いた遊び歌ですが、はっぴいえんどの「花いちもんめ」は、直接的にこの童謡をテーマにしたものではありません。
それでも、日本のノスタルジックな風景や、都市と地方の対比、そしてどこか寂しさを感じさせる歌詞が、童謡の持つ郷愁と重なる部分があります。
歌詞の中には、「ぼくらが電車通りを 走りぬける頃に」「左手の煙突 右手の煙突」など、日本の都市景観を思わせる情景描写が散りばめられています。
これは、戦後の高度経済成長期における日本の変化を象徴するものとも捉えられます。
まさに、はっぴいえんど流の「日本の情景詩」といえるでしょう。
歌詞の意味を考察—細野晴臣と大瀧詠一の関係性
「花いちもんめ」の歌詞は、一見すると都市の風景を淡々と描いているように見えますが、実は はっぴいえんどのメンバー間の関係性 を暗示しているという説があります。
この楽曲の作詞を担当した松本隆は、「右手の煙突が細野晴臣で、左手の煙突が大瀧詠一」と語っています。
これは、バンドの中心人物である二人の関係性を象徴しているとも取れます。
はっぴいえんどは、日本語ロックの先駆けとして称賛される一方で、メンバー間の方向性の違いも表面化していました。
細野晴臣はより 実験的な音楽 に傾倒し、大瀧詠一は ポップス路線 へと向かっていました。
このズレが、後の解散につながる要因の一つでもあります。
「花いちもんめ」というタイトルは、もしかすると バンドのメンバーが選別される過程 を暗示しているのかもしれません。
童謡「はないちもんめ」の遊びが、売り手と買い手に分かれるように、バンドのメンバーもやがて別々の道を歩むことになる——そんな象徴的な意味が込められているのではないでしょうか。
はっぴいえんどと日本語ロックの変革
はっぴいえんどは、1970年代初頭に活動した日本のロックバンドであり、「日本語ロックの黎明期」を支えた存在です。
それまでの日本のロックシーンは、英語歌詞を中心とした楽曲が主流でした。
しかし、はっぴいえんどは 日本語の美しさや響きを生かした歌詞 にこだわり、新たな表現を模索しました。
『風街ろまん』に収録された「花いちもんめ」も、その実験の一つと言えます。
歌詞は、決してストレートなメッセージではなく、詩的で映像的な表現 を多用しています。
これにより、従来のロックとは異なる 日本的な叙情 が生まれました。
また、はっぴいえんどは フォークとロックを融合させたサウンド を展開し、日本独自の音楽スタイルを確立しました。
彼らの試みは、後の 山下達郎、荒井由実(松任谷由実)、サザンオールスターズ など、日本のポップミュージックの礎となっています。
音楽的アプローチ—鈴木茂の作曲スタイルとは?
「花いちもんめ」の作曲を担当したのは、はっぴいえんどのギタリストである 鈴木茂 です。
彼のギターワークは、日本のロックギターのスタイルに大きな影響を与えました。
この楽曲の特徴の一つは、流れるようなギターリフと穏やかなメロディライン です。
鈴木茂のギターは、フォークの要素を持ちながらも、どこか シティポップの原型 を感じさせる洗練された響きを持っています。
また、はっぴいえんどの楽曲には 音数を抑えたアレンジ が多いのも特徴です。
「花いちもんめ」でも、派手な演奏ではなく、シンプルなバンドサウンドが曲の雰囲気を支えています。
このミニマルなアレンジが、歌詞の持つ 郷愁や孤独感 をより際立たせているのです。
「花いちもんめ」が現代に響く理由
はっぴいえんどの音楽は、リリースから半世紀以上経った現在も、多くのリスナーに支持されています。
その理由の一つが、「花いちもんめ」のような楽曲が持つ 普遍的なテーマと郷愁 ではないでしょうか。
この楽曲の歌詞は、特定の時代や場所に縛られない普遍性を持っています。
また、「右手の煙突」「左手の煙突」といった 具体的なイメージを持つ言葉 が、聴く人の記憶と結びつきやすいのも特徴です。
さらに、はっぴいえんどの音楽は、現代の シティポップリバイバル の流れとも合致しています。
1980年代の日本のシティポップが再評価される中、そのルーツとも言えるはっぴいえんどの音楽が再び脚光を浴びています。
「花いちもんめ」は、単なる懐古的な楽曲ではなく、現代のリスナーにも新たな発見を与えてくれる音楽 なのです。
まとめ
「花いちもんめ」は、はっぴいえんどの楽曲の中でも特に 詩的で象徴的な歌詞 を持つ楽曲です。
その背景には、メンバー間の関係性や日本語ロックの革新 というテーマが込められており、音楽的にも シンプルながら洗練されたギターサウンド が特徴です。
時代が変わっても、この曲が持つ 日本的な情景描写と普遍的なテーマ は色褪せることなく、多くのリスナーに響き続けています。