今回は、星野源の楽曲『不思議』の歌詞の意味についての考察です。
『不思議』は、星野源さんがドラマ「着飾る恋には理由があって」の主題歌として制作した楽曲です。
このタイトルは非常に印象的で、歌詞にはどのような感情やメッセージが込められているのでしょうか。
ドラマ主題歌
『不思議』は、星野源さんが2021年6月23日にリリースした12枚目のシングル曲です。
この楽曲は、TBS系火曜ドラマ『着飾る恋には理由があって』の主題歌として使用されました。
『不思議』の制作期間は、新垣結衣さんとの恋愛が進行していた時期ですが、星野源さんは自身の恋愛についての歌詞ではない、とはっきり否定していました。
今回は「自分にとっての愛とか恋はこういうことだと思っている」というのをちゃんと歌にしようと。
だから、ラブソングというテーマから逃げずに、“愛”というものを僕なりに表現したらこういう曲ができた、という感じです。
このインタビューによれば、「不思議」の歌詞は、これまでの星野源さんの楽曲とは異なり、愛や恋に対して初めて直接的に向き合ったものと考察されます。
ドラマ「着飾る恋には理由があって」は、川口春奈さんが主演する恋愛ドラマです。
ストーリーは、ミニマリスト男性(演じるのは横浜流星さん)との恋愛を描いた「うちキュン」ラブストーリーとなっています。
物語は、常に周囲の視線を気にしてライフスタイルを着飾ってきた主人公が、さまざまな人々と共同生活を始めることで友情や恋愛を知り、徐々に自分の本当の姿を見つける過程を描いています。
彼女は次第に「ナチュラルな生き方」を求める姿勢に変化していく様子が描かれています。
不思議な力
君と出会った この水の中で
手を繋いだら 息をしていた
ただそう思った彷徨う心で 額合わせ
口づけした 正座のまま
ただそっと笑った
1番のAメロ部分は、イントロのない静かな始まりとなっています。
「君と出会った この水の中で」というフレーズは、辛い状況や困難な世界にいた時に君と出会ったことを表現していると解釈できます。
水の中では呼吸が苦しく、自由に身動きを取ることも難しい状況です。
苦しい時にもがけばもがくほど苦しくなりますよね。
そのような辛い世界にいた自分を「君が救い出してくれたんだよ」ということを伝えたいのではないかと思います。
また、この表現はドラマ「着飾る恋には理由があって」のストーリーともリンクしています。
主人公である真柴くるみ(川口春奈さん)は、SNSで着飾ることに必死で本当の自分を見せられなくなっていますし、藤野俊(横浜流星さん)もミニマリストでありながらさまざまな悩みを抱えています。
このようなドラマのストーリーや現代社会で生きる人々の息苦しさを体現しているのではないでしょうか。
さらに、「彷徨う心で 額合わせ」という部分からは、二人はまだ完全にお互いの気持ちを理解し合っていないと解釈できます。
どこか遠慮している部分があるというか、好きという思いがあるからこそ口づけをしているけれど、まだお互いに迷いがあるようにも感じます。
希望あふれた この檻の中で
理由もない 恋がそこにあるまま
ただ貴方だった幼い頃の記憶 今夜食べたいもの
何もかもが違う
なのになぜ側に居たいの
他人だけにあるもの
「理由もない 恋がそこにあるまま ただ貴方だった」
この部分は、恋をすることに明確な理由はなく、ただ相手のことが好きなだけという恋の不思議な魅力を表現しています。
星野源さんは実際にこの部分について、以下のようにインタビューで語っています。
歌詞の中に「理由もない 恋がそこにあるまま」とありますが、例えば自分が誰かを好きになって、「どういうところが好き?」って聞かれた時、その理由を綿密に辿っていけば「こういうところが素敵だから」と説明できたりもしますが、それって全部後付けというか、パズルをはめ込んでいくようなものなんですよね。
「なんかわからないけど好き」というのがほとんどじゃないですか。
そして、「何もかもが違う なのになぜ側に居たいの 他人だけにあるもの」。
このフレーズは、同じ記憶を持っているから好きになるわけではなく、なぜか相手が自分と異なるものを持っていることに魅力を感じる、恋の「不思議」を表現していると解釈できます。
“好き”を持った日々を ありのままで
文字にできるなら 気が済むのにな
まだ やだ 遠く 脆い
愛に足る想い
瞳にいま 宿り出す
この部分では、自分の持つ「好き」という思いをすべて相手に伝えられたらいいと思っている一方で、「まだ やだ 遠く 脆い」というフレーズが続くことで、『好き』という感情がポジティブなだけではないことも表現されています。
相手のことを想うからこそ感じる『つらさ』や『哀しさ』も同時に抱えていることを示しているのです。
好きだからこそ相手と過ごす時間は楽しい一方で、相手に対して嫉妬を抱くこともある。
この複雑な感情こそが恋が持つ不思議な魅力なのではないでしょうか。
理由なんてなくていい
きらきらはしゃぐ この地獄の中で
仕様のない身体 抱き締め合った
赤子に戻って
2番のAメロでは、「きらきらはしゃぐ この地獄の中で」という歌詞が特に印象的ですね。
通常、きらきらはしゃぐ世界は良いイメージを持つことが一般的ですが、ここでは「地獄」と表現されています。
これは、主人公がきらきらはしゃぐ世界に対してあまり良い印象を持っていないことを意味し、むしろその「キラキラさ」が苦痛に感じられる部分を表しているのかもしれません。
また、「赤子に戻って」というフレーズも、現実の苦しさを受け入れることがつらく、それゆえに幼いころの無邪気な時期を思い返しているのかもしれません。
躓いて笑う日も 涙の乾杯も
命込めて目指す
やがて同じ場所で眠る
他人だけの不思議を
「躓いて笑う日も 涙の乾杯も」という表現は、本来の感情とは逆の内容が含まれていますね。
通常、躓いたら痛くて泣くことが多く、喜びの時には乾杯をすることが一般的です。
しかし、ここでは人それぞれの価値観が異なり、同じ状況でも感じ方が異なることを示していると解釈できます。
さらに、それぞれが異なる感情を持っているからこそ、それを共有できることが喜ばしいという思いも込められているのではないかと考えられます。
”好き”を持ったことで 仮の笑みで
日々を踏みしめて 歩けるようにさ
孤独の側にある
勇気に足るもの
「”好き”を持ったことで 仮の笑みで 日々を踏みしめて 歩けるようにさ」という部分は、好きという感情を持ったからこそ、「毎日を乗り越えて生きていける」という意味合いを持っていると感じます。
「仮の笑みで」という表現は、完全に心から笑うまでの途中段階での笑顔を指しており、ポジティブな感情を抱いていることが伺えますね。
遺らぬ言葉の中に
こぼれる記憶の中に
僕らはいつも居た
「僕らはいつも居た」のフレーズは、恋に落ちる理由は特にないけれど、日常を過ごしていく中で不思議と相手のことを想っているということを表現しています。
ドラマ「着飾る恋には理由があって」でも、シェアハウスに暮らすそれぞれの男女が恋に落ち、さまざまな感情を抱えながらも共に生活をするストーリーが展開されます。
このフレーズはドラマのストーリーともリンクし、いつ恋に落ちたかの説明はできないけれど、確かに恋に落ちているということを表現しているのではないでしょうか。
”好き”を持った日々をありのままで
文字にできるなら 気が済むのにな
まだ やだ 遠く 脆い
愛に似た強い君想った日々を すべて
乗せて届くように詰め込んだ歌
孤独の側にいる
愛に足る想い
二人をいま 歩き出す
1番のサビと同じ歌詞から始まりますが、1番とは異なり、そこには明確な決意と強い思いが感じられます。
また、「二人をいま 歩き出す」の部分からは、二人が未来に向けて一緒に歩み出すという意味が読み取れます。
恋に落ちた理由は明示されていないけれど、お互いを信じてこれからを共に歩んでいこうという愛情が表現されているのではないでしょうか。
まとめ
今回は、星野源の楽曲『不思議』の歌詞についての意味を解釈・考察しました。
歌詞は、恋に落ちた理由が特にないけれども、「相手のことを想う気持ちが恋である」という強い感情を伝えています。
また、同じ記憶を持っているわけではなく、自分とは異なる部分に魅力を感じることで、恋の持つ「不思議」な力を表現しています。
これらの要素が星野源さんらしい特徴的な楽曲として響いていますね。