2015年4月に放送されたドラマ『マザー・ゲーム』のテーマソングとして知られるSuperfly(スーパーフライ)の「Beautiful」。
その感動的な歌声は、2015年の紅白歌合戦で初めて耳にされた方も多いだろう。
この曲は、力強い自己肯定のメッセージを歌い上げ、日々奮闘する女性たちに大きな勇気を与える。
今回は、その歌詞に込められた深い意味に焦点を当てた。
新たなSuperflyを築き上げることができた
「Beautiful」は、2015年のNHK紅白歌合戦でSuperflyが初めて出場した曲として知られています。
この出場をきっかけに、Superflyは音楽ファンのみならず、幅広い層に知られる存在となりました。
しかし、この曲を生み出すことは、Superflyのボーカリストである越智志帆さんにとって容易ではありませんでした。
これまでのSuperflyの音楽は、ボーカルの越智志帆さんが作詞し、ギタリストの多保孝一さんが作曲、そして蔦谷好位置さんが編曲する3人体制が主流でした。
お互いの専門分野を活かしつつ、役割分担することで、Superfly独自の音楽性を追求してきました。
しかし、志帆さんは今後さらにポジティブで素晴らしい曲を制作するためには、これまでのアプローチでは限界を感じていました。
3人の関係は仲間であると同時に競争相手でもあり、新たな音楽を作り出すためには、関係性を変える必要があると考えました。
そこで、彼女は新たなSuperflyの音楽を追求するために、決断を下すことにしました。
仲間としての距離感が足りない場合は、一度距離を置く必要があると判断したのです。
この決断により、長年Superflyのロックの象徴として活躍してきた多保孝一さんが一時的にグループを離れることになりました。
彼女は孝一さんの力強いメロディーを世界に広める使命感を持っており、この決断は彼女にとって大きなものでした。
結果として、彼女は孝一さんに頼ることなく音楽活動を続けなければならず、初めてプレッシャーを感じるようになりました。
彼女は体制の大幅な変更の中で、積極的にアルバム制作に取り組みました。
「WHITE」というアルバムには、「Beautiful」の他にも、越智志帆さんや蔦谷好位置さんだけでなく、Tomoya.S、Bonnie McKee、Chris Cesterなど、さまざまなミュージシャンが作曲に参加しています。
様々な個性豊かなミュージシャンからの刺激を受けながら、彼女はアルバム制作の最後に「Beautiful」という曲を完成させました。
越智志帆さん自身は過去のインタビューで、「この曲がアルバムを代表する曲になった」とコメントしています。
彼女が1年間をかけて模索し続けた結果、新たなSuperflyを築き上げることができたという実感が生まれた瞬間でした。
自分らしい生き方を実現する覚悟
「Beautiful」は、葛藤を抱えながらも作り上げられた曲であり、その歌詞には自己肯定と前向きな生き方への決意が込められています。
ここでは、その歌詞に込められた深い意味を紹介します。
遠くに伸びる影 夜の波が消した
涙を流したなんて 気づかれないまま心を捨てるなら 傷付く方がマシさ
冷たい風を切って 逃げるように走るいつかこの雫は 宝石になるのでしょう
美しい心に 生まれ変わる
そう信じて
きっと彼女にも辛い出来事や落ち込む瞬間があったのでしょう。
しかし、その感情は他人には見せず、心の奥深くにしまい込まれました。
だから誰も自分が涙を流していたことに気づかないのです。
それでも、心を捨てて生きるよりも、傷つくことを覚悟してでも自分らしく生きる道を選びたいと、彼女は自らの気持ちを表現しています。
そして、彼女は願います。
自分が流した涙を無駄にしたくないと。
今は涙が流れることもあるかもしれませんが、将来の自分はより美しい心を持つことを信じています。
世界で一つの 輝く光になれ
私でいい 私を信じてゆくのさ
遠回りしても 守るべき道を行け
私でいい 私の歩幅で生きてくのさ
そして、活気に満ちたメロディーと広がるボーカルに乗せて、彼女は次のように歌います。
「(今は違うけど)いつか、この世界で唯一無二の輝く存在になりたい。その光は、もちろん私自身なんだ。たとえ見た目では遠回りに見えるかもしれないけど、自分の心から守りたいと思う道を進もう。自分らしさが最高だ。自分のペースで歩いていけばいいんだ。」
日々の生活の中で、思うように事が運ばずに悔しい思いをすることもあるでしょう。
そのとき、注目を浴びている友人や先輩が羨ましく感じることもあるかもしれません。
自分が不器用だったり、かっこ悪かったりすることを否定し、憧れの人になりたくて自分を変えようとする気持ちに駆られることもあるでしょう。
しかし、Superflyはそんな風には考えません。
見た目がかっこ悪くても、完璧でなくても構わない。
彼女たちは、自分の心が求める道を自分のペースで進むことを応援してくれるのです。
誰かをうらやむのは 避けられない心情?
誰かをゆるすのは 難しい心情?ないものを探せば 数えきれないけれど
ゆっくり愛してみよう 私というこの命を
そして、この部分でイントロの涙の理由が明らかにされます。
それは、自分よりも優れていると感じる他者への嫉妬や、その他者によって傷つけられたという怒りの気持ちでした。
こうした感情に苦しむからこそ、歌詞の冒頭でより美しい心を望んでいたのです。
自分の感情と葛藤しながらも、歌の主人公は結論を導き出します。
自分には数えきれないほどの素晴らしいものがあると自覚します。
それでも、そんな自分という存在をゆっくりと愛することを心に誓うのです。
世界で一つの輝く光になれ
明かりのない
明日を迎えたとしても
悲しみの先に孤独が押し寄せても
息をしてる
今日も息をして生きている世界で一つの私に幸あれ
涙に幸あれ
明日に幸あれ
Superflyは言います。
自分に自信を持ち、自分を肯定するためには、特別な条件は必要ありません。
日常生活では、失敗や裏切り、孤独などの辛い瞬間もあるかもしれません。
しかし、そうしたことで自分を否定する必要はありません。
なぜなら、たとえ明日が見えなくても、孤独を感じても…。
そう、今日ここで息をしている限り、自分が幸せになるチャンスがあると彼女は私たちに伝えています。
世界で一つの 輝く光になれ
泣いてもいい 私を歩いてゆくのさ
涙は頬を 流れる星のようさ
私になれ 私を叶えて生きてくのさ
こうして、一人で涙を流す時間を過ごした後、その涙を流した自分をも受け入れます。
たとえ涙を流しても、その涙は星のように頬を伝って落ちると考えれば良いのです。
そしていつか、自分の望む道や自分らしい生き方を実現する覚悟を固めるのです。
ドラマの主題歌
ドラマ「マザーゲーム」は、シングルマザーである主人公が、偶然息子をセレブが通う幼稚園に入れたことがきっかけで展開されるヒューマンストーリーです。
経済力や価値観など、立場の異なるセレブ主婦と対立しながらも、主人公の前向きさと正義感が、お互いの立場の違いを乗り越え、セレブママとの友情を築いていきます。
一見裕福で幸せそうなセレブママたちであっても、それぞれに人には言えない悩みや葛藤があります。
彼女たちもまた、人目に触れずモラルハラスメントや不倫、ギャンブル依存などに苦しんでいました。
そして社会において当たり前とされる縦社会の暗黙のルールに従い、仮面をかぶって幸せを装って生活していました。
そんな環境の中で、年収や環境に恵まれていないシングルマザーの主人公は、異質な存在として扱われます。
セレブママたちのいじめグループの標的にされてしまいますが、曲がったことが嫌いで、はっきりと意見を述べる彼女のまっすぐな姿勢が、セレブ主婦たちに次第に影響を与えていきます。
ドラマのプロデューサーである新井順子氏は、このドラマの主題歌を選曲する際に、次のように述べています。
さまざな問題を抱えながらも力強く生きる女性たちに贈る、パワフルで爽快な応援ソングを作りたい! そう思った時、真っ先にSuperflyさんの力強い声が浮かびました。 ラブコールが実り、時に優しくも元気に、時に切なくも寄り添える、素敵な楽曲に仕上がったと思います。このドラマにどんな味わいがプラスされるのか、ご期待ください!
新井順子
自分を大切にすることから始める
いかがでしたでしょうか?
今回は、テレビドラマ「マザーゲーム」の主題歌として選ばれたSuperflyの「Beautiful」についてご紹介しました。
この曲に込められた歌詞のメッセージについて、越智志帆さんは次のように述べています。
自由で自分らしく生きるというのは、いつでも難しいことです。誰かに愛を求めるのではなく、かっこ悪くても、コンプレックスだらけでも、自分自身が《私》を大好きでいられることが、とても大切なことのように思います。
越智志帆
自分自身を大切にして、周りの誰かを今よりもっと大切にできますように、そんな願いを込めた曲です。
日常生活の中で、自信に満ちた毎日を送ることは容易ではありません。
多くの人が、常に自問自答しながら生活しています。
そんなとき、「Beautiful」に込められたメッセージは、自分に希望と力を与えてくれます。
自分に不足しているものはたくさんあるかもしれませんが、まずは自分自身をゆっくりと愛することから始めることの大切さを教えてくれるのです。
自分を否定すると、周囲の環境も暗いものに見えがちです。
自分を大切にすることから始めることで、周囲の人々に対する見方も変わっていくことでしょう。