ずとまよは2021年6月18日に「あいつら全員同窓会」という楽曲をリリースしました。
この曲は、オンラインRPG『PSO2 ニュージェネシス』とのコラボレーション曲として知られています。
歌詞や曲名に登場する同窓会は、一体何を意味しているのか、興味深い部分を考察してみましょう。
自分自身や周囲と戦う主人公の姿
思い通りに起きれない
急いで飲み込む納豆巻き
当たり障りのない儀式みたいな
お世話になってます
歌詞の冒頭では、朝に納豆巻きを食べることが「儀式」として描写されており、歌の登場人物は単調な日常を送っているように見えます。
手帳開くともう過去
先輩に追い越せない論破と
明る日も来る日も 道草食って帰るが贅沢
歌詞の中で手帳が「開くともう過去」と表現されており、これは時間の経過を感じさせます。
また、「先輩に追い越せない」というフレーズがありますが、通常であれば「先輩を追い越せない」と言い表されることが一般的です。
しかし、「に」が使われていることで「先輩に追いつけない」という意味にも解釈できます。
この歌詞には、「手帳に書かれた目標通りに行動できない自分」と同時に、「先輩という目標に追いつけないだけでなく、追い越せない自分」への複層的な感情が含まれているように感じられます。
もうダンスダンスダンス 誰も気づいてない
ジェメオスよりもゆうもわな落書きに
もうステイステイ捨てる 下積み正義
嫌味に費やすほど人生長くないの
「ダンス」は自己表現の一形態であり、歌詞には「誰も気づいてない」というフレーズが続きます。
主人公は、自身の表現をして誰かに認めてもらいたいと望んでいるようです。
アニメーションMVでは、主人公が絵を描いたり、歌ったりする場面も描かれており、歌詞の「ダンス」は自己表現そのものを指している可能性が考えられます。
「下積み」という言葉も登場することから、主人公は自分の表現をして認められるよう奮闘している様子が窺えます。
しかし、最後の一文からは、周囲から夢をけなされているようにも受け取れます。
目標に向かって順調に進めない自分への嫌悪感や、目標に向かう自分を非難する周囲の皮肉と戦う主人公の姿が、歌詞の中で描かれていると言えるでしょう。
葛藤を乗り越えて自己を認める
曲の前半は陰鬱な歌詞が続きますが、サビでは急に自信に満ちた歌詞に変わります。
どうでもいいから置いてった
あいつら全員同窓会
ステンバイミー自然体に
シャイな空騒ぎ
曲の歌詞には「あいつら全員同窓会」というフレーズが登場しますが、「あいつら」という言葉の使用から、主人公は同窓会を否定的に捉えている可能性があります。
MVの概要欄には、曲名の英訳が『Inside Joke』とあり、これは内輪ネタを指します。
同窓会では「同級生の〇〇さんは、今こんな風になっているらしい」といった話がよく出ることがありますが、主人公はまだ成果を挙げていないため、からかわれるような話題になる可能性も高いでしょう。
このようなからかいに対して、「その話はおもしろくないし、笑っているのはあなただけ」という気持ちや、「同窓会は単なる内輪ネタ」という思いが、「あいつら全員同窓会」という歌詞に込められているのではないかと推測されます。
「空騒ぎ」は「大したことではないのに、騒ぎ立てること」という意味を持ちます。
「どうでもいいから放っておいた」とか「自然体に」という歌詞からは、つまらない内輪ネタを話す周囲に気を取られず、自分らしく目標に向かおうとする強い意志が感じられます。
ねばった戦績 飛んでった
なりたい自分に絡まる電柱
ぼーっとして没頭して
身勝手な僕でいい
「身勝手な僕でいい」というフレーズは、自己肯定を表す積極的な表現です。
歌の前半では、自己嫌悪が強く現れていた主人公ですが、周囲を気にせず自分らしくあり、その内面の葛藤を乗り越えて自己を認めることができたと捉えることができます。
自己を信じて前進したい
人の ダメなとこばっか 見つけて
指摘して、自分棚に上げすぎ
心と体終わってく
曲の終盤では、ACAねがラップを披露し、周囲からの批判によって心や体が疲れ果てていく様子が率直に歌詞に表現されています。
こんな自分そんな身分じゃない
言い切れることはない
いい切れたことは自分に言い聞かせてること
また笑い転げられるのさ あばらの骨が折れるまで
周囲からの断定的な評価は信じられない。
確信を持てるのは、自分自身に向けて唱える言葉だけだという意味合いが含まれているのではないでしょうか。
周囲の言葉に左右されるのではなく、自己を信じて前進したいという強い意志が感じられます。
歌詞の最後が笑いにつながるのは、くだらない内輪ネタではなく、自分を信じてたどり着いた場所で、自然な笑顔を取り戻したいという気持ちが込められているのかもしれません。