椎名林檎の歌詞には、時折難解な部分が多く、彼女の言葉選びは一般的な理解を難しくさせることがあります。
しかし、彼女は文学的な要素を強調するのではなく、むしろ自身の美的感覚に基づいて漢字や単語を選んでいると言われています。
今回は、彼女の3rdシングルである『ここでキスして。』の歌詞の意味を紐解いてみたいと思います。
あたしは絶対あなたの前じゃ さめざめ泣いたりしないでしょ
それはつまり常に自分が アナーキーなあなたに似合う為
現代のシド・ヴィシャスに 手錠かけられるのは只あたしだけ
「さめざめ」「アナーキー」「シド・ヴィシャス」といった、通常の楽曲ではあまり見られない単語が椎名林檎の歌詞に散りばめられています。
これらの言葉は、その深い意味を理解しなくても、なぜか私たちの心に響き、共感を呼び起こします。
この歌詞の要点は、おそらく「私だけがあなたを理解している」という訴えでありながら、同時に「私を理解できるのはあなただけだ」という、女性の心情が込められているのでしょう。
行かないでね どこにだって
あたしと一緒じゃなきゃ嫌よ
あなたしか見てないのよ
いますぐにここでキスして
『ここでキスして。』の歌詞からは、登場する「私」と「あなた」がおそらく恋人同士であることがうかがえます。
しかし、歌詞を読むと、彼女であるはずの「私」の気持ちが、ちゃんと「あなた」に届いていないのではないかという不安や疑念が表れています。
恋人同士であるからこそ、お互いに愛し合っていることが前提とされ、それを言葉で伝える難しさが巧みに表現されています。
行かないでね
どんな時もあたしの思想を見抜いてよ
あなたの長い睫毛も 其の華奢で大きな手も全部 大好きなの
何処にだって あなた程のひとなんて居ないよ
あなたしか見て無いのよ
今すぐに此処でキスして
彼を大切に思う女性たちは、おそらく同じように感じていることでしょう。
しかし、普段はこれらの感情を簡単に口に出すことが難しいことがあります。
彼女たちは、感情を表現しないことによって、彼が他の女性に気を引かれることを不快に思うことがあります。
言葉にするのは難しいかもしれませんが、その気持ちは存在します。
言葉にはできないけれど、その気持ちが詰まった「今すぐにここでキスして。」という言葉が、その象徴と言えるでしょう。