【今夜このまま/あいみょん】歌詞の意味を考察、解釈する。

今回は、あいみょんの人気楽曲『今夜このまま』の歌詞の深層に迫りたいと思います。
この曲は、日本テレビ系ドラマ『獣になれない私たち』の主題歌として特別に制作されました。
歌詞は恋の行方を「ビール」にたとえて描かれていますが、一体どのような意味が込められているのでしょうか?

ドラマ『獣になれない私たち』の主題歌

『今夜このまま』は、2018年11月に発表されたあいみょんの6枚目のシングルです。
この曲は、日本テレビ系のドラマ『獣になれない私たち』の主題歌として特別に制作されました。
興味深いことに、この曲はあいみょんにとって初めてのドラマ主題歌の制作となりました。
彼女はドラマの雰囲気に合わせつつ、歌詞を書き進めていったそうです。


『今夜このまま』では、あいみょんが初めて”転調”と呼ばれる音楽的要素に挑戦したことが特筆されます。
曲のラストサビ前において、雰囲気が急激に変わり、音楽のスケール感が劇的に増す瞬間があります。
これはまるで、楽曲の主人公の感情が高まっていく様子が音楽によって表現されているかのようです。


テレビドラマ『獣になれない私たち』(通称:けもなれ)は、人生の展開がうまくいかない”頭の良いけど自己表現が苦手な男女”の恋愛を描いた、もしかしたらラブストーリーかもしれない作品です。
このドラマは、主演に「新垣結衣」と「松田龍平」を迎え、彼らが演じる男女が簡単に本音を口にすることができず、まるで”野生の獣”のように素直な感情に溺れることができない様子が描かれています。
真面目な性格が仕事には向いているけれど、恋愛にはなかなか向き合えない女性にこそおすすめのドラマです。
こうした内容で展開される作品となっています。

「あいみょん」ならではの視点が感じられる比喩表現

今回の楽曲「今夜このまま」は、ドラマ「獣になれない私たち」への書き下ろしという背景もあり、ドラマの物語と深く関わっている要素が多いようですね。
物語の中心人物である「深海晶(演:新垣結衣)」は、仕事においては優れた能力を持つキャリアウーマンとして活躍しています。
しかし、多忙な日々や同僚のトラブルなどで、”仕事のプロ”としての悩みを抱えています。
そんな彼女が癒しを見つける場所として通うのが、帰り道に立ち寄るお気に入りのクラフトビールバー『5tap』です。
心身ともに疲れきった主人公が、ここでストレスを解消しに訪れます。
そして、バーのマスターが提供する「クラフトビール」が、傷ついた心をやさしく癒してくれるのです。
物語のすべてがこのクラフトビールバーを通じて展開され、新たな展開へと進んでいくようです。


苦いようで甘いようなこの泡に
くぐらせる想いが弾ける
体は言うことを聞かない
「いかないで」って
走って行ければ良いのに

『5tap』で味わうクラフトビールの風味のように、人生も時には苦く、そして甘い瞬間があります。
さまざまな思いや感情が、ビールの泡とともに爽やかに広がっていく様子を連想させます。
「体は言うことを聞かない」というのは、心の中では望んでいても、なかなか率直に行動できないというニュアンスです。
実際に感情を表現したり、大切な人に自分の気持ちを伝えることも難しい側面があるでしょう。
「いかないで」と言っても、勇気を出して走り出せるような純粋な感情になかなかたどり着けない、内面の葛藤が浮かび上がってきますね。


広いようで狭いようなこの場所は
言いたいことも喉に詰まる
体が帰りたいと嘆く
「いかないで」って
叫んでくれる人がいればなぁ

広がりに満ちて見える一方で、実際には狭くて息苦しい現実の中で生きている世界。
ドラマ「獣になれない私たち」の視点で言えば、主人公「深海晶」が勤める厳しい職場環境や、彼氏のはっきりしない態度などが該当するかもしれません。
彼女を取り巻く状況が次第に追い詰められていくさまが描かれています。
しかし、その中での不満や本音はどこかで詰まり、発露することができません。
限界寸前の彼女の体は、解放されたいという切実な願いを内に秘めています。
物語の中の「ガッキー」こと主人公の姿は、本当に同情を誘いますね。
努力してもなかなか報われず、責任ばかりが重荷として押し寄せてくる状況。
同じような境遇の人たちにとって、この心情に共感する方も多いのではないでしょうか?
こうしたとき、「無理せずにいいんだよ」と手を差し伸べてくれる人がいれば…。
自分の気持ちを叫んでくれる人がそばにいれば…。
そんな助けを求める心情が織り交ぜられています。


抜け出せない逃げ切れない
よくある話じゃ終われない
簡単にさめる気もないから
とりあえずアレください

「そんなにつらいなら、全部やめちゃえば?」というアドバイスを受けても、「でも、仕事を辞めるわけにはいかないし」「でも、逃げ出すことも難しいし」「でも、本音を言える状況じゃないし」と、たくさんの「でも」が立ちはだかり、結局なかなか抜け出せないことがあります。
一方で、「その程度のことはよくあることだよ」と軽く流し去ることもできない現実です。
しかし、一歩を踏み出すことが難しい状況で、なかなか決断できない主人公の心情が描かれています。
そうした時、選択肢はひとつしかありませんね。
そこで登場するのが「とりあえずビールをください」。
主人公は、それが唯一の癒しとなることに気付くのです。


消えない想いは
軽く火照らせて 飛ばして
指先から 始まる何かに期待して
泳いでく 溺れてく
今夜はこのまま
泡の中で 眠れたらな

埋もれない気持ちは、ただ悩み続けることに意味はない。
そうならば、ビールの酔いに身を任せて、その想いを一時的に吹き飛ばすことも大切なのかもしれない。
時折、アルコールの力を借りて現実から解放されることも必要ですね。
サビ前で歌われる「簡単にさめる気もないから」というフレーズは、「酔いの余韻を早く失いたくない」という心情を表しています。
時には酔って、気持ちを軽くすることもあるでしょうから。
「指先から始まる何か」とは、おそらくLINEのことを指していると考えられます。
ドラマ中にもLINEを通じたシーンが多かったですね。
そして、ドラマ後半で「深海晶(演:新垣結衣)」が口にした『今は恋がしたい…。』という言葉。
これが、今後の物語の転機を担うキーポイントになるのかもしれませんね。
「始まる何か」という出来事は、予期せぬものかもしれませんが、その進展は急である可能性があります。
今夜の雰囲気に身を任せ、恋に身を任せるのも、美しい側面があるのかもしれません。
ビールの泡のような包み込むような感覚と、最後に綴られる「眠れたらな」という言葉が、曲のタイトル「今夜このまま」に繋がっているのが分かります。
言葉の表現力を持つ「あいみょん」ならではの視点ですね。
この季節にぴったりな、秋の人肌恋しさが感じられる比喩表現を用いています。

鮮明に描写された、映像的な歌詞

だんだん息もできなくなって
心の壁も穴だらけで
制御不能 結構不幸?
自暴自棄 です。

恋によって胸が苦しくなる日々や、仕事に追われる忙しい日々。
これらのどちらも、この歌詞には詠み込まれているようですね。
「仕事ができる女性」という立場は、周囲からの期待や偏見にさらされることもあるでしょうし、確かに窮屈な思いをすることもあるでしょう。
主人公の心は傷つき、自分の感情をコントロールできなくなってしまう描写があります。
なんだか彼女の状況は、同情を禁じ得ないほど可哀想ですね。

そんなに多くはいらないから
幸せの横棒ひとつくらいで
満たされたい 満たしてみたい
乱されたい 会いたい
いつかの誰かに

贅沢な願いは持たないけれど、些細な幸せを求めている!
そして、いつか出会うであろう運命の人に導かれ、そのままの自分でいたいと心から願っているんです。
「乱されたい」という歌詞から、成熟した男女の恋愛を求めている印象が感じられますね。
実際、これだけ日々が疲れているなら、恋愛の中で少しでも揺さぶられたいという気持ちも理解できます。


やるせない やりきれない
よくある話じゃ終われない
簡単に 辞める気もないから
とりあえずアレ下さい

仕事と恋愛。
ますます不満が積み重なっていく毎日です。
もやもやとした気持ちが募りますが、そうした日々から逃れる方法が見つからないまま…。
最終的に、日常を閉じるのはいつものあの手段(ビール)となる主人公の姿です。


言えない想いは
軽く飲み込んで隠しちゃって
鼻の先に取り付いた
本音に油断して
抱かれてく 騙されてく
今夜の夜風に
吹かれながら 揺れながら

抱えている気持ちを我慢する。
でもどうしても本音が漏れてしまいます。
そして、「今夜の夜風に 吹かれながら 揺れながら」という部分は、まさに「もう気にしないでしょう~」という気持ちに流されてしまいたくなる女性が描かれていますね。
ドラマの中の「ガッキー」の姿を思い出します…。


ねぇ もう 帰ろう 帰ろう
影も もぅ ねぇ 薄くなって
結局 味のない 味気のない
夜が眠る

日が傾き、影が長くなるほど遅い時間まで仕事で残業すると、心の中の自分が「もう帰りたい」とささやきます。
「影も もぅ ねぇ 薄くなって」という部分は、自分の存在が薄くなっているような気がしてもいることを示唆していますね。
もしかすると、自分は必要とされていないのかもしれない…。
そんな考えが頭をよぎると、辛くてたまりませんよね。
不満を抱えながらも何も変えられずに、今日も眠りにつかなければならない…。
退屈な日々が続いていくさまを、「味のない 味気のない 夜が眠る」という言葉で表現しています。


癒えない想いが
加速するばかりなんだ
止められない 放たれてく
夜になる 私はこのまま

消えることのない思い。
それは、職場に対する不満とも解釈できるし、恋情とも言えるものですね。
どこかに行く場所を持たずに溢れ続けます。
ビールを注いだときに、炭酸が下から上へと次々に上昇して弾ける様子に似ていますね。

消えない想いは
軽く火照らせて飛ばして
指先から 始まる何かに期待して
泳いでく 溺れてく
今夜はこのまま
泡の中で眠れたらなぁ

誰かの腕の中で
甘い夢を見ながら 眠れたらなぁ

退屈な毎日の中で、予期せぬ出会いや胸の高鳴りを待ち望む主人公。
積み重なる消えない思いは、ビールの泡と共に飛ばしてしまいたいと切望しています!
そして、大好きなビールの中で炭酸が弾けるように、自分も同じように楽しみたい、そして少し沈みたいと語っています。
仕事や恋愛に疲れた女性がビールで心を潤す場面が、目に浮かびますね…。
さらに、ビールの代わりに誰かの腕の中でぐっすり眠れたら、という甘い願いがこぼれ落ちています。
疲れ果てた女性が泡の中で溶けるかのように沈んでいく様子。
男性の側で穏やかな眠りにつく姿。
どちらも鮮明に描写された、映像的な歌詞が印象的ですね。
これぞまさにあいみょんらしいですね!

まとめ

いかがでしたでしょうか?
「今夜このまま」は、仕事と恋愛に奮闘する女性の率直な心情を、繊細に描写していました。
まさにドラマの物語と共鳴する歌詞と言えるでしょう。
過激な表現だけでなく、リアルな日常を美しい比喩で表現する、あいみょんならではの魅力が感じられます。
彼女の歌詞は、感情を深く引き寄せる力があります。
他にも、歌詞の解釈について触れていますので、お時間があればぜひご一読ください。