【輪舞曲(ロンド)/松任谷由実】歌詞の意味を考察、解釈する。

松任谷由実(ユーミン)は、彼女が最近オススメする楽曲として『輪舞曲(ロンド)』を選びました。
この曲はドラマ『たたかうお嫁さま』の主題歌としても知られています。
こちらの曲に込められた真の意味について、解釈してみましょう。

理想と現実の対比を辛辣に描いたドラマ

スペイン風のギターのイントロで幕を開けるこの曲は、『輪舞曲(ロンド)』というタイトル通り、軽快なリズムにのせて踊りたくなるようなアップテンポな楽曲です。
このタイトル『輪舞曲(ロンド)』には、同じ旋律が繰り返されるロンド形式という概念も含まれており、実際に歌詞中でも「さあ ヴェールあげて……フォルクローレになる」というフレーズが何度も繰り返されています。
では、この繰り返しのフレーズがどのような意味を持つのか、歌詞を通して考察してみましょう。


キャンドルに灯をともしましょう 思い出みんな照らすように
あなたのくれた微笑みで 泣き出しそうに見えるでしょう
おどけてほほを寄せれば 背中に置かれた手のひら
あなたの知らぬ傷跡も 雪解けに咲くクロッカス

結婚式当日、美しく灯りが灯った教会のキャンドルを見たお嫁さまが、昨夜の出来事を思い出しました。
彼女は泣き出しそうな表情を見せていますが、その涙は単純な幸福の涙ではないようです。

歌詞に登場する「雪解けに咲くクロッカス」は、結婚式の前夜、新郎ではない男性と過ごした思い出の象徴です。
この男性はお嫁さまの背中に愛のしるしを残しました。
この男性の行動はかなり大胆で、お嫁さまにとって特別な意味を持つようです。

歌詞を通じて、本来幸福なはずの結婚式ですが、お嫁さまには何か秘密が隠されているようです。
曲調がウェディングソングとして一般的な明るい長調ではないのは、お嫁さまの秘密の存在が影響しているのかもしれません。


「フォルクローレ」(folclore)という言葉は、英語の「folklore」がスペイン語化したもので、本来の意味としては音楽だけでなく民俗学や民俗的な伝承を指します。
しかし、日本においては、特にラテンアメリカ諸国の伝統的な音楽やそれを基にした大衆音楽を指す場合があります。

この「フォルクローレ」の意味を念頭に置きながら、以下の歌詞を考えてみましょう。

さあ ヴェールをあげて 初めての瞳で
誓いのキスに 高くはばたかせて
さあ ページあけて 名前綴ったなら
愛の証は フォルクローレになる

ついに訪れる誓いの瞬間、神の前で永遠の愛を誓い、約束のキスを交わす――これこそが古くから伝わる風習であるフォルクローレです。
『たたかうお嫁さま』の中でも、主人公の敦子は、古典的な習慣にこだわる婚約者の俊平の母親との間で、ドレスや引き出物の選び方などで対立しながら闘いました。
彼女の幼少時代からの夢であった結婚式も、美しい理想だけではなく、現実の中での戦いを描写した歌詞となっています。

奏でて消えないメロディー 想い出かき消すくらいに
誰ともできなかったほど 幸せに踊りましょう
私を愛したことを 後悔はしていないかしら
あなたと紡ぐ年月が たったひとつのタピストリィ

過去の思い出を薄くするように、新郎であるあなたと共に歩む未来を選ぶ覚悟を決めたお嫁さま。
ここで、初めて新郎の気持ちが気になります。

「タピストリィ」とはタペストリーのことで、石造りの家が多い西洋では、壁をタペストリーで覆うことで寒さをしのぐために使われます。
ここで言う「タピストリィ」は、お嫁さまが新郎と共に歩む人生で、過去の思い出を覆い隠し、新たな章を刻んでいきたいという願いを歌っているのでしょう。


あなたに抱かれ まわるまわる輪舞曲
涙も夢も めくるめく フィエスタ
もう神様しか 二人を離せない
語り継がれる フォルクローレになる

歓びとは 溶けて落ちる 哀しみの上にゆれる炎 Ah…

ここでもう一度「さあ ヴェールあげて……」と続きます。
結婚式の日までには、数々の現実との闘いがあったお嫁さま。
しかし、本当に結婚式が終わり、婚姻届を提出すれば、その先は平穏なのでしょうか?

あなたに抱かれ まわるまわる輪舞曲
涙も夢も めくるめく フィエスタ
もう神様しか 二人を離せない
語り継がれる フォルクローレになる

この繰り返されるフレーズ。
幼少のころ、ただ幸せなお嫁さんになりたいと願っただけだったのに。
ついに手に入れたお嫁さんの夢。今度は周囲から羨まれるほどの幸福な夫婦になってみせる!
お嫁さんの意欲を感じませんか?

あなたに抱かれ まわるまわる輪舞曲
涙も夢も めくるめく フィエスタ…

ドラマ『たたかうお嫁さま』では、主人公とその婚約者のほかにもう一組の夫婦が描かれています。
布施博さんと高木美穂さんが演じる4年間の結婚生活を送る夫婦。
彼らは理想の夫婦として称賛されてきましたが、実際のところ、離婚の危機に直面しています。
こうした理想と現実の対比を辛辣に描いたドラマが、『輪舞曲(ロンド)』を主題歌として採用した理由なのでしょう。

まとめ

ユーミンが歌う『輪舞曲(ロンド)』、いかがでしたでしょうか?
初めはウェディングソングのような雰囲気に感じるこの曲。
しかし、歌詞をよく読んでみると、結婚式というのは昔からの習わしであり、永遠の愛の誓いでも人間は変わるものだというシニカルな側面も浮かび上がります。

夢見る少女たちの幸せなお嫁さんになる夢を描いているのに、その夢を壊してしまうような側面もあるかもしれません。
しかし、そんな現実を知って結婚する夫婦は、どんな困難にも立ち向かっていける強さを持っているのではないでしょうか。