今回は、クリープハイプの「蜂蜜と風呂場」について真剣に探求してみます。
この曲は、アルバム「死ぬまで一生愛されてると思ってたよ」に収録されており、過去に廃盤となったインディーズ時代の2ndミニアルバムにも収録されていたそうです。
年代を重ねた名曲であることが分かりますね。
「蜂蜜と風呂場」は、私自身にとって「心の琴線に触れる楽曲」です!
アップテンポながら、その感情移入は涙を誘います。
それでは、歌詞をご紹介いたします。
蜂蜜みたいな味がするなんて 嘘ついて嘘ついてくれた
こうしてバカみたいに歯医者で 口開けてると君の気持ちがわかる
こうしてカバみたいに歯医者で 口開けてると君の気持ちがわかるよ蜂蜜みたいな味がするなんて 嘘ついて嘘ついて嘘ついてくれてありがとうね
蜂蜜みたいな味がするなんて 嘘ついて嘘ついてくれた蒼く燃える惑星の恋人 左手の薬指と未来の話
月額定額制の僕の恋人 もう時間無いから口でよろしくね蜂蜜みたいな味がするなんて 嘘ついて嘘ついて嘘ついてあげたんだからね
蜂蜜みたいな味がするなんて 嘘ついて嘘ついてあげた蜂蜜みたいな味がするなんて 嘘ついて嘘ついて嘘ついてくれてありがとうね
蜂蜜みたいな味がするなんて 嘘ついて嘘ついてくれた嘘ついて嘘ついてくれた
クリープハイプの魅力の一つは、始まりたった10秒、いえ、5秒でもリスナーの心を引き込んでしまう力があるところだと思います。
イントロのないダイレクトな入りで、
蜂蜜みたいな味がするなんて 嘘ついて嘘ついてくれた
尾崎世界観が持つ気持ちよい高音と、楽しさが伝わってくるギターの響きに乗った歌詞には、思わず「???」「蜂蜜みたいな味って?」「具体的に何が?」と引き込まれます。
そんな風に考えているうちに、いつの間にか間奏が流れ過ぎ、Aメロが始まるのです。
こうしてバカみたいに歯医者で 口開けてると君の気持ちがわかる
こうしてカバみたいに歯医者で 口開けてると君の気持ちがわかるよ
歯医者の椅子に座り、無防備に口を開けている光景が目に浮かびます。
「蜂蜜と風呂場」というタイトルには、なんとも奥深い意味が込められています。
そして歌詞を追うことで、その象徴的な表現が徐々に明らかになりますが、「バカ」「カバ」という言葉に対しては、率直に納得がいかない気持ちもあります。
こちらは精一杯努力しているのに、なぜかそういうレッテルを貼られてしまうことがあるんです。
歯医者とは全く異なる訳で、ただ口を開けているだけではなく、自分なりに一生懸命取り組んでいるんです。
「君の気持ちがわかる」という言葉を、あまり軽々しく使わないでほしいと思います。
蜂蜜みたいな味がするなんて 嘘ついて嘘ついて嘘ついてくれてありがとうね
蜂蜜みたいな味がするなんて 嘘ついて嘘ついてくれた
ここで、先ほどの歌詞に微細な変化が現れます。
「蜂蜜みたいな味がする」という言葉に対し、私は「ありがとう」と言っているんです。
つまり、それが嘘だと気付いていることを意味しています。
蒼く燃える惑星の恋人 左手の薬指と未来の話
月額定額制の僕の恋人 もう時間無いから口でよろしくね
この曲の歌詞で、私が特に心惹かれる部分です。
実際、クリープの歌詞の中でも、最も愛着を感じるかもしれません。
初めて聴いたとき、その意味には全く追いつけませんでした。
しかし、徐々に意味を拾い集めていくうちに、全体のつながりが明らかになり、どれほど切ない関係を歌っているのかが理解できて、気付いたときには涙がこぼれていました。
「蒼く燃える惑星」とは、恐らく「地球」を指しているのだと思います。
そして「地球」は「現実」を象徴しているのかもしれません。
その次の歌詞から、君が結婚することがうかがえます。
左手の薬指に指輪を光らせながら、約束された未来の話を僕に語った瞬間もあったのかもしれません。
相反する言葉が登場する、「月額定額制の僕の恋人」。
この言葉から、君と僕が、自由に使い放題のような関係を持っていたことが窺えますね。
現実の恋人関係とは真逆で、アブノーマルで非倫理的、公然とは語れないような関係にあったのでしょう。
しかし、もう残された時間は限られています。
君が誰かのものになる瞬間が、すぐそこに迫っています。
だからこそ、「口でよろしくね」という言葉が出てきたのでしょう。
この時点で、「蜂蜜」や「口でよろしく」というフレーズがどのような意味を持っているのかが、気づかれることでしょう。
しかし、一方で、その行為は時間のない状況で行われるべきではない行為ではないかと疑問を持ちます。
より多くの労力や時間が必要な行為でありながら、なぜ「口でよろしく」なのでしょうか。
個人的に、口に含むという行為は、非常に?もしかしたら最も?ハードルが高いと思います。
行う側も、受ける側も同じです。
おそらく、私たちにとっては、その行為が非常に重要であることが、そこから感じられるのでしょう。
どれだけ大切な人のものであっても、蜂蜜のような味がするとは限らない。
蜂蜜みたいな味がするなんて 嘘ついて嘘ついて嘘ついてあげたんだからね
蜂蜜みたいな味がするなんて 嘘ついて嘘ついてあげた
ここでは、ただ一度だけ、君(私)の視点から歌われる歌詞が登場します。
私は、君に嘘をついてしまったんです。
「蜂蜜みたいな味がする」と言ったんです。
でも、それは実際にはそうではないのに。
僕も、その嘘に気付いているんです。
もしかしたら、君も、僕がその嘘に気付いていることを、わかっているのかもしれません。
蜂蜜みたいな味がするなんて 嘘ついて嘘ついて嘘ついてくれてありがとうね
蜂蜜みたいな味がするなんて 嘘ついて嘘ついてくれた嘘ついて嘘ついてくれた
最後に、再び僕の視点から、曲は幕を閉じます。
この曲が歌っている行為には、計り知れない羞恥心の向こう側に、受け入れられるかという不安が含まれています。
当然、デリケートな部分ですよね。
そうした大切な要素を、自分の奥深い部分を、君は受け入れてくれて、さらに肯定してくれた。
それが「蜂蜜」という形で表れたんです。
その行動は、優しさから生まれたものなのか、はっきりとはわからないですけどね。
ただ、その嘘にも僕は気付いている。
その一点から、私たちは「月額定額制の恋人」でありながら、心から想いを通じ合っていたのかもしれません。
どのような事情で、君が現実の世界に戻る選択をするのか、それははっきりと分かりませんが、限られた時間の中で、私たちは心を込めて愛し合っていました。
お互いの本心を言葉にすることはありませんでしたが、その想いは確かに通じ合っていました。
これからはもう、交わることのない二人ですが、最後に選んだのは「口」でした。
未練を残さないためか、そう思いましたが、口を通じる行為の意味深さを考えると、自分にとってこの解釈の方がしっくりくると感じました。
これほどまでに思い入れるのは、私自身も似たような経験をしてきたからでしょう。
結婚していないし、将来の結婚予定もないし、婚約者とそうした関係になったこともありません。
ただ、恋人とは言えないけれど、心から大切な存在だった人のことを思い出しますと、その存在は蜂蜜のような甘さがありました。
「月額定額制の関係」であっても、そうした深い感情を抱えることはできるのです。