【おなじ話/ハンバート ハンバート】歌詞の意味を考察、解釈する。

2004年から歌い続けられている大切な楽曲「おなじ話」は、ハンバート ハンバートによるものです。
温かみのあるメロディに触れた人々からは、心地よい癒しを感じた方も多いことでしょう。
この機会に、「おなじ話」の歌詞には人によって異なる解釈が生まれる不思議さについて考察してみたいと思います。

次第に感じる違和感

「FOLK 2」には、キセルという盟友を迎えたバージョンが収録されている「おなじ話」が存在します。
通常、この曲はハンバート ハンバートの2人だけで穏やかに歌われています。
楽曲「おなじ話」の特徴は、佐藤さんと佐野さんが交互に歌声を響かせることです。
歌詞を読むと、会話のような構造になっていることが明らかです。
こうした要素が、楽曲「おなじ話」の深みを引き立てています。
初めは男女の日常的な対話を歌っているように聞こえるかもしれませんが、曲が進行するにつれて、聴く人は次第に微妙な違和感を感じ始めるでしょう。

不思議な関係性

どこにいるの? 窓のそばにいるよ
何をしてるの? 何にもしてないよ
そばにおいでよ 今行くから待って
話をしよう いいよ、まず君から

「おなじ話」の始まりは、しっとりとしたアルペジオによるイントロで彩られます。
この響きからは、素敵な物語が幕を開ける予感が漂います。
楽曲内で男女の対話が繰り広げられる様子は、おそらくハンバート ハンバートが夫婦デュオであることによるものでしょう。
しかし、興味深いことに、「おなじ話」の登場人物は「僕」と「君」という2つの主語しか現れません。
このことから、性別や年齢が曖昧な要素となっています。

ハンバートの音楽性を仮にフォークソングと定義するとしましょう(こちらはあくまで仮定です)。
彼らの音楽のルーツは70年代初期のURCレーベルにあり、このレーベルに所属したアーティストは聴衆に解釈を委ねる余地が多いことで知られています。

「僕」と「君」の関係性は、恋人または夫婦のような関係性と考えることができます。
彼らはいつも一緒にいて、日常的な対話を楽しんでいることが「おなじ話」という楽曲を通じて伝わってきます。
歌詞の最初の部分からは、彼らの親密な関係が温かく描かれていることが感じられます。


どこにいるの? 君のそばにいるよ
何を見てるの? 君のこと見てるよ
どこへ行くの? どこへも行かないよ
・・・・・・ ずっとそばにいるよ

続く部分はおそらく翌日の出来事を描写しているのでしょう。
確かに、同じ会話が繰り返されていますが、ここで興味深い違和感が浮かび上がります。
曲の中で「僕」が自分を見つめている「君」に向かって何を思っているのか尋ねる場面があります。
この瞬間、会話が少しズレているのかもしれません。
そして、「僕」には一瞬の静寂が訪れます。
この瞬間から、二人の関係性が不思議な一面を持っていることが垣間見えます。


それから 僕も君を見つめ
それから いつもおなじ話

しかし、ここでほっと胸を撫で下ろします。
「僕」は確かに「君」を真摯に見つめていることが理解できます。
そして、今度は再び通常通りの会話が続くのでしょう。
しかしなぜいつも「おなじ話」なのでしょう?
共通の趣味や昨日一緒に鑑賞した映画についての話、あるいは前回の訪問で物足りなさを感じたレストランのことなど、さまざまな話題はないのでしょうか?
この二人の関係性は不思議で、想像をかきたてられます。

喜びと悲しみが交錯する

どこにいるの? となりの部屋にいるよ
何をしてるの? 手紙を書いてるの
そばにおいでよ でももう行かなくちゃ
話をしよう ・・・・・・・

「おなじ話」が繰り返される中、微妙な変化が顕著になります。
「君」が別の部屋で手紙を書いている様子が描かれます。
同時に、「僕」は「君」にもっと近くにいたいという願望が感じられます。
しかしながら、「君」は何か用事があるのか、どこかへ外出してしまいます。
その目的地はどこなのでしょうか?
「僕」は「君」との会話をもっと続けたいと切望し、その思いを伝えます。
この瞬間、「君」が黙り込む場面があります。
やはり、違和感の正体は二人の会話の不調和に起因するもののようです。
表面的には仲の良さがうかがえましたが、何か秘密や隠された事情が存在するのでしょうか?


それから 君は僕を見つめ
それから 泣きながらわらった

それから 君は僕を見つめ
それから 泣きながらわらった

物語は徐々に悲哀の面持ちを帯びてきます。
「僕」は「君」の姿を通して、その感情を感じ取っています。
「君」の目には涙が溢れています。
そして、同時に「君」は微笑んでいるのです。
ここで、違和感の正体がより明確に浮かび上がります。
泣きながら微笑む状況。
それは喜びの涙か、または悲しみを隠すための微笑みかもしれません。
二人の間には、外からは見えないけれども決定的な壁が存在しているようです。


さようなら ゆうべ夢を見たよ
さようなら いつもおなじ話

そして、「僕」は「君」に別れを告げます。
夢の中で昨夜、「君」と再び対話する「僕」の姿が浮かびます。
しかしながら、別れを告げたはずなのに、二人はまた「おなじ話」を繰り返しています。
この瞬間、明確な事実が浮かび上がります。
「君」は既にここにはいないのです。

「僕」と「君」は異なる次元で「おなじ話」を繰り返しているようです。
「僕」は写真の中の「君」に対話を続けているのかもしれません。
同時に、不在のはずの「君」も「僕」に何かを伝えているのかもしれません。
「君」はもはやこの世界には存在せず、彼女の存在は写真の中の微笑む顔だけとなっています。

「僕」と「君」は同じ空間に存在しながらも、異なる現実を生きているようです。
「僕」は毎日「君」の写真に対して語りかけ、寂しさや戻ってほしいという想いを伝えています。
そして、「君」もまた、「僕」に何かを伝えようとしているのかもしれません。

この物語は、生と死を超えて続く愛の形を描いています。
「おなじ話」のメロディーは穏やかでありながら、完成された愛の表現が感じられます。
この物語は筆者の解釈に過ぎません。
聴く人によって異なる物語が生まれる可能性があります。
「おなじ話」は、胸を締め付けるような感情、喜びと悲しみが交錯する不思議な涙を引き起こす楽曲です。
皆さんにとって、どのような物語が感じられましたか?