2020年にリリースされて以来、2022年末の紅白歌合戦でもパフォーマンスされたVaundy(バウンディ)の代表曲『怪獣の花唄』は、長期間にわたる人気を維持しています。
歌詞には過去を回想しながら未来を見つめるノスタルジックな要素が詰まっており、その意味を解き明かしてみましょう。
もう聴くことができない歌
思い出すのは君の歌
会話よりも鮮明だ
どこに行ってしまったの
いつも探すんだよ思い出すのは
君の歌
歌い笑う顔が鮮明だ
君に似合うんだよ
ずっと見ていたいよ
物語の主人公は、大切な「君の歌」の記憶を回想しています。
当時の具体的な会話は忘れてしまいましたが、その時期に友人が歌っていた曲や好みの歌は案外にも鮮明に覚えていることがありますよね。
それが、かつての仲間との楽しい瞬間を振り返っている様子を描写しています。
主人公は、友人が歌いながら笑っていた顔を心に焼き付けています。
その歌声からは、明るい幸福感と楽しさが伝わってきたことでしょう。
その姿に惹かれ、「ずっと見守りたい」という思いが生まれました。
彼の心を強く引きつける要因となっています。
しかし、歌詞中の「どこに行ってしまったの いつも探すんだよ」という部分から、現在「君」は主人公の近くにはいないことが窺えます。
お互いに異なる人生の道を歩み始めたことで疎遠になった可能性も考えられますが、むしろ「君」が亡くなってしまったことを示唆しているようにも感じます。
この歌をもう一度聴くことができないことから、主人公はその思い出を何度も繰り返し思い出してしまうのでしょう。
それが、彼らの絆と過去の美しい瞬間への敬意を表しているのかもしれません。
タイトルにある花唄とは
思い出すのは
君がいた
ギター持ってる
君がいた
忘れられないんだよ
だから僕が歌うよでも最後に見たいのは
きっともう君の夢の中
もう一度
また聞かせてくれよ
聞きたいんだ
物語の主人公は、「君」がギターを弾きながら歌っている姿を回想しています。
その風景はどうしても忘れられず、今では主人公自身が同じ曲を歌い続けています。
歌詞の後半を見ると、もしも願いがかなうならば、最後に「君の夢の中」をのぞいてみたいと願っている様子がうかがえます。
これは「君」がどのような思いを抱いていたのか、どんな夢を追い求めていたのかという真実に触れてみたいという欲求かもしれません。
歌を歌う時、その姿からは「君」の本心が露わになっていたため、主人公は再びその歌声を聞いて彼の心に触れたいと切望しているように感じられます。
もっと
騒げ怪獣の歌
まだ消えない
夢の歌唱えて
君がいつも
歌う怪獣の歌
まだ消えない
口ずさんでしまうよ
サビの歌詞には「怪獣の歌」というフレーズが登場します。
このフレーズから考察すると、「君」は主人公にとってまるで怪獣のような存在だった可能性が示唆されます。
怪獣というと、本能に従って行動する大胆さを連想させますね。
こうした視点から、「君」は無邪気で自由な行動をしていた強さを持っていたと解釈できます。
しかし、もはや「君」の歌声を聴くことは叶わない現実に直面して、主人公はその歌声が記憶の中で消えないように願っています。
「もっと騒げ」という歌詞から、主人公はその歌声を再び聴きたいという強い渇望を感じていることが伺えます。
タイトルが「怪獣の花唄」となっているのに対し、歌詞に登場するのは「怪獣の歌」です。
Vaundy自身が「怪獣の花唄」と「怪獣の歌」を異なるものと説明していることから、ここでは友人が歌っていたのが「怪獣の歌」であり、主人公が口ずさむのが「怪獣の花唄」だと考えられます。
この解釈から、主人公は亡き友人への思いを込めて、花を捧げるように歌を歌っていることが示唆されます。
そして「夢の歌」と表現することで、主人公にとってその歌は自身を励まし、希望を抱かせる大切な存在となっていることが感じられます。
蘇る青春時代
落ちてく過去は鮮明で
見せたい未来は繊細で
すぎてく日々には鈍感な君へ
過去の出来事は、主人公の心には永遠に鮮やかに焼き付いています。
しかしその一方で、未来は脆くて崩れやすいように感じられ、主人公は先行きの不確かさに不安を抱えています。
このような心情を胸に、主人公は友人に向かって「すぎてく日々には鈍感な君」と語りかけています。
「すぎてく日々には鈍感」という表現から、日々の大切さに気づかずに過ごしている様子が伺えます。
これは若さからくる未熟さを示唆しており、同時に「君」と主人公の成長の違いを対比させていることがわかります。
主人公は成長し、大人になっていく一方で、「君」は子供のままであることが描かれています。
ねぇ、僕ら
眠れない夜に手を伸ばして
眠らない夜をまた伸ばして
眠くないまだね
そんな日々でいたいのにな
懲りずに
眠れない夜に手を伸ばして
眠らない夜をまた伸ばして
眠くないまだね
そんな夜に歌う
怪獣の歌
青春時代、誰しもが悩みを抱えて「眠れない夜」を過ごしたり、一方で楽しみを求めて夜更かしして「眠らない夜」を過ごしたりしたことでしょう。
物語の主人公も、子どもから大人へと成長する途中に位置しており、「そんな日々でいたいのにな」という思いが心に漂っています。
しかしながら、時間は確実に流れており、大人の一員になるという現実も目前です。
そして、このような転機の中で主人公が口ずさんでいるのが「怪獣の歌」です。
ここまでの描写から、「君」は実際に亡くなった友人かもしれませんし、または成長と共に別れる子ども時代の自己像かもしれません。
いずれにしても、10代の自分を力強く支えた歌が、大人になっても変わらず心の支えとなることでしょう。
無邪気に日々を楽しむことは難しくなりますが、過去の楽しい思い出を大切にしながら未来へ向かう主人公の姿勢が、リスナーの心に響いてきます。
MVも必見
『怪獣の花唄』の歌詞は、未来に向かう大人の一歩を踏み出す中で、過去とのつながりを胸に刻む温かな切なさが綴られていました。
また、鈴鹿央士が出演するミュージックビデオも、歌詞の深い意味を反映しており、その内容は心に響くものとなっています。
ぜひ、この曲がVaundyが伝えたかった感情や思いを考えながら聴いてみると、一層深い響きを感じることができるかもしれません。