「凛として時雨」のボーカルであるTKこと北嶋徹さんのソロプロジェクト「TK from 凛として時雨」の言わずと知れた曲と言えば「unravel(アンラベル)」です。
この曲はテレビアニメ「東京喰種トーキョーグール」のOPとして起用されるや否や、世界中に知れ渡り、2020年には日本人で二人目の「Spotifyで1億回再生突破」という快挙を成し遂げました。
何故これほどまでに愛される曲なったのかというと、北嶋さんが東京喰種という作品に丁寧に寄り添った結果だと言えます。
この記事では「unravel」に込められた、北嶋さんの作品をリスペクトし、寄り添う精神に迫っていきたいと思います。
「unravel」の意味は?
まずは楽曲のタイトル「unravel」がどういう意味なのかというと、「(結んだ紐などを)ほどく」や「謎を解く」という意味があるそうです。
これらを踏まえてこの曲の始まりの歌詞を見てみると、
教えて 教えてよ その仕組みを 僕の中に誰がいるの?
とありますから、この曲の意味合いとしては「謎を解く」という意味が近しいのかもしれません。
さらに歌詞はこう続きます。
壊れた 壊れたよ この世界で 君が笑う 何も見えずに
これだけを聞いても何のことかさっぱり分からない方もいるかもしれませんが、これは「unravel」が主題歌になった東京喰種の主人公である金木研(以降カネキ)の心情を表していると言え、作詞作曲をした北嶋さんは「実は金木研なのではないか」と賞賛されるほどにシンクロしているのです。
「東京喰種」と「unravel」がシンクロしている点:歌詞①
ここからは、物語と曲のどのような部分がシンクロしているのか見ていきたい思います。
まずは、Aメロの歌詞に注目してみましょう。
壊れた僕なんてさ
ほどけない もう ほどけないよ 真実さえ freeze
これは人間だったカネキが、人間を食べる喰種(グール)という生き物に変貌してしまったことに対しての困惑や不安などの表れです。
さらにこう続きます。
壊せる 壊せない
狂える 狂えない
この歌詞からも分かるように、何かに苦しんでいる様子がうかがえますが、それは人間を食べたいという欲と、それを拒絶する理性が入り混じり、壊れそうになる自分自身を必死で押し留めているというものです。
理不尽にも喰種になってしまった彼の心情を、北嶋さんは的確に捉えており、作品のファンであれば序盤から心を掴まれたことでしょう。
「東京喰種」と「unravel」がシンクロしている点:歌詞②
サビの歌詞は次のように綴られています。
歪んだ世界にだんだん僕は 透き通って見えなくなって
これは、喰種を討伐するべく結成された組織CCGとの抗争や、喰種であることを伏せて人間を愛する喰種、喰種間争いなどを目の当たりにするうちに、自身の立ち位置にカネキが迷っていることを表しています。
それでも彼は、
誰かが描いた 世界の中で あなたを傷つけたくないよ
という部分に見られるように、自身にとって大切な人だけは守りたいと考えているのです。
そして、喰種間の大規模な抗争に巻き込まれた際に彼なりの答えを見つけます。
それが次の部分です。
Unravelling the world(世界を解く)
この部分は叫ぶように歌われていますが、カネキが導き出した答えによって、彼自身が大きく変わったことが上手く表現されています。
実際それまでカネキは、自身は喰種でありながらも人間にも喰種にもどっちつかずな姿勢でありましたが、彼を救ってくれた喰種たちのために戦うことを決め、非情な性格となってしまったのです。
このようなカネキの変化を表現できたのも、北嶋さんが作品からカネキという人物を汲み取り、合致する音や言葉を選んでいった賜物だと言えるでしょう。
「東京喰種」と「unravel」がシンクロしている点:曲調や緩急
歌詞でも見られたように、優しく穏やかな少年だったカネキは、己の二面性を自覚し、凶暴性が増していきます。
そんなカネキを表すように、「unravel」も始まりこそ静かですが、サビや中盤、終盤になるにつれて激しさを増していくのです。
歌詞とも相まって、カネキの辿った軌跡がひしひしと伝わってくるため、作品のファンは胸が熱くなったことでしょう。
北嶋さんの作品に寄り添うスタイル
北嶋さんは、演奏時は激しくギターをかき鳴らして叫ぶように歌うこともありますし、作曲時のストイックさは彼のファンの間でも有名です。
しかし、時々メディアに現れたかと思えば、初めて見る方が驚くほどに物腰が柔らかく、そういった静と動を併せ持った人物でもあります。
まるでカネキのようですよね。
このように、北嶋さん自身が独特な世界観を持っており、それらを作り出すための研ぎ澄まされた超感覚が、「unravel」と東京喰種の脅威のシンクロ率を生み出したのではないか、と考えると納得できます。
まとめ
世界的に有名な曲となり愛され続ける「unravel」は、東京喰種の世界観や主人公のカネキとシンクロしていたこともあり、作品のファンを中心に高く評価されました。
こういった作品に寄り添った曲を生み出せるのも、研ぎ澄まされた超感覚を持つ北嶋さんにしか成し得ない所業であり、彼の作品をリスペクトし、丁寧に汲み取ろうとする姿勢が素晴らしい曲の数々に繋がっているのでしょう。
北嶋さんは他にも多くの作品とタイアップしていますから、気になった方はその作品と共に曲に浸ってみてはいかがでしょうか。