ハンバートハンバート『ひかり』の歌詞に込められたメッセージとは？
『ひかり』の歌詞は、冒頭から読者や聴き手に衝撃を与える展開で始まります。主人公は自ら命を絶とうとした後、意識を取り戻し、身体が動かない状態で生きていることに気づきます。静かで淡々としたメロディに乗せられたこの状況描写は、圧倒的なリアリティをもって私たちに迫ります。
その後、歌詞は訪れてくれた「誰か」の存在によって変化を見せます。「あなたがきてくれて うれしかった」と、感情を取り戻す描写が挿入され、そこには確かに人とのつながりが生きる意味を再発見させる力があることが示されています。
最終的に主人公は「死ななくて 生きててよかった」と思えるまでに至り、リスナーにも「生きる」という選択が持つ可能性や力をそっと投げかけてくれます。
『ひかり』の背景にある実話と映画の影響
この曲には、ただの空想や物語ではなく、作詞・作曲にあたって明確なインスピレーション元があります。特に映画『潜水服は蝶の夢を見る』の存在が大きな影響を与えています。この作品は、突然の脳梗塞で身体の自由を失った編集長が「まばたき」だけで自伝を綴った実話に基づくもので、身体が動かない中でも意思や希望を表現するというテーマが共通しています。
また、身近な人物が交通事故で身体に障害を負った実体験を聞いたことも、作詞の原動力となったとされています。その経験が、フィクションを超えたリアリティを持たせており、『ひかり』という曲に深い説得力を与えているのです。
ハンバートハンバートの音楽における「断絶」と「絆」の表現
ハンバートハンバートの音楽は、ただ優しくノスタルジックなだけではありません。『ひかり』のように、暗くて深いテーマを扱うことも少なくありません。しかしその中には必ず「人との絆」や「繋がり」が描かれ、どんなに絶望の中にいても希望の光が差す可能性を示してくれます。
言葉を失った主人公が、ただ「来てくれたこと」に涙する場面は、我々が普段見逃してしまいがちな「存在してくれることの大切さ」を浮かび上がらせます。会話や動きがなくても、気持ちは通じ合える──そんな「絆」の尊さが、この曲には濃密に詰まっています。
『ひかり』が収録されたアルバム『家族行進曲』の位置づけ
『ひかり』は、2023年リリースのアルバム『家族行進曲』に収録された1曲です。このアルバムは「家族」をテーマにした12曲から構成されており、それぞれが異なる物語を持っています。『ひかり』はその中でも、最も重く、しかし最も強い再生の力を示す楽曲といえるでしょう。
この作品に込められた想いには、アーティスト自身の生活が色濃く反映されています。夫婦ユニットとしてのリアルな経験や、育児を通して得た感覚が、歌詞や音に滲み出ており、単なるフィクションではなく「生活の延長線上にある音楽」として説得力を持たせています。
聴く人の心に響く『ひかり』の魅力と評価
リスナーの中には「歌詞の内容が怖い」と感じる人も多くいます。しかし、その「怖さ」は生きることの厳しさや痛みに対する真摯な向き合いから来るものであり、同時に「生きててよかった」と感じられる瞬間への感謝へと昇華されています。
SNSやレビューサイトでは、「涙が止まらなかった」「今の自分に必要な言葉だった」といった声が多く見られます。感情に寄り添う歌詞と、それを包み込むような優しいメロディの対比が、この曲の最大の魅力と言えるでしょう。
