いきものがかり「生きる」と『100日後に死ぬワニ』のコラボの背景
いきものがかりの楽曲「生きる」は、2019年末から2020年にかけてSNSで話題を呼んだ漫画『100日後に死ぬワニ』とコラボレーションした作品です。
この漫画は、死を迎えるまでの100日間のワニの日常を描き、読者に「日々の大切さ」や「命の有限さ」を強く印象づけました。
最終話の公開と同時に発表されたこの楽曲は、物語と深いテーマ的共鳴を持っています。
いきものがかりのメンバーもこの漫画に感銘を受け、作品の世界観に共感したことで、コラボが実現しました。
特に、作詞を担当した水野良樹は「死」というテーマに対して真正面から向き合い、命の儚さや別れの感情を歌詞に落とし込んでいます。
楽曲が発表されたのは、ちょうど漫画が最終回を迎えたタイミングであり、多くのファンに感動を与えると同時に、命の大切さについて考えさせられる機会となりました。
この楽曲は、ワニの最後の瞬間とリンクしつつも、聴く者に普遍的なテーマを投げかけています。
『100日後に死ぬワニ』が日常の尊さを描いたのと同様に、「生きる」は限られた時間の中で何を大切にして生きるべきかを問いかける、心に響くバラードとなっています。
「君」を想う切なさと桜の象徴的な役割
「生きる」の歌詞は、「君」を想う切ない感情が随所に描かれています。
特に冒頭の「もうすぐ 春だね さくらは 咲くかな 君の笑顔 思い浮かべたら なぜかな 泣けてきたよ」という一節から、別れた「君」を思い出し、涙がこぼれる主人公の心情が強く表現されています。
ここでの「君」は、亡くなってしまった大切な人、あるいは二度と会えない人を象徴しており、その喪失感が胸に響きます。
さらに、「桜」はこの楽曲において重要な象徴的役割を果たしています。
桜は、日本では春の訪れを告げると同時に、儚さや別れを象徴する花です。
短い期間で美しく咲き誇る桜の花は、命の一瞬の輝きと、その儚い終わりを象徴しており、歌詞に登場する桜の描写も、主人公が「君」と過ごした時間の儚さや、過去への未練を感じさせるものとなっています。
この楽曲では、「桜」という自然のサイクルを通して、季節が巡り続ける中で「君」を思い出し、その存在がいまだに心に残り続けていることが表現されています。
それと同時に、桜が繰り返し咲くように、「君」との思い出も、何度も心の中で蘇るのです。
この切なさと美しさが絡み合う描写が、リスナーの心を強く揺さぶり、共感を呼び起こします。
生きることと別れ、孤独をどう乗り越えるか
「生きる」の歌詞には、別れや孤独と向き合う人間の心情が深く描かれています。
特に「僕はいくから ひとりで」というフレーズは、別れの瞬間に伴う孤独感や、愛する人との別離を余儀なくされた際の孤独な決意を表現しています。
生きること自体が常に人と共にあるわけではなく、最終的には個々が独りで向き合うものだという現実が示されているのです。
また、「言えなかった気持ちばかり 胸に残る」という歌詞は、別れの際に抱く後悔や、伝えられなかった言葉が胸に残る苦しさを象徴しています。
このような心情は、多くの人が共感できるものであり、特に大切な人を突然失ったときに感じる感情とリンクしています。
別れは避けられないものであるが、その痛みを抱えながらも、どう生きていくかを問うています。
さらに、「生きる」の歌詞は、孤独を乗り越えるための一つの解釈として、再び巡る季節や自然のサイクルに希望を見出しています。
桜が何度も咲くように、人生もまた続き、新しい始まりが待っていることを示唆しています。
孤独を感じる瞬間はあるものの、その先には新しい可能性や出会いがあるというメッセージが込められているのです。
このように、「生きる」は、別れの痛みや孤独に対する人間の本能的な恐れと、それを乗り越えるための強さを優しく歌い上げています。
リスナーに対して、孤独な時期も含めて人生を受け入れ、前に進む勇気を持つことの大切さを伝えています。
命の尊さと残された者たちへのメッセージ
「生きる」の歌詞は、命の儚さとその尊さを繊細に描いています。
特に「たいせつなひとたちに もう一度 手を振って笑いたいな」というフレーズには、別れた相手への後悔や未練、もう一度触れ合いたいという切実な願いが込められています。
命がいつ終わるか分からないからこそ、今の瞬間に大切な人々と過ごす時間や、感謝の気持ちを伝えることがどれほど重要かを強く訴えかけているのです。
また、別れを経験した残された者たちに向けたメッセージも含まれています。
「生きる」は、愛する人を失った後に感じる喪失感や、伝えられなかった言葉への後悔を表現するだけでなく、それでも生きていくことの大切さを伝えています。
人生において避けられない別れや喪失感は、命が有限であることの証であり、それを通して命の尊さを改めて感じさせます。
さらに、歌詞に込められた「美しく しあわせに」という言葉は、悲しみの中でも生きることを諦めず、前に進んでいく力を象徴しています。
亡くなった「君」を忘れずにいながらも、残された者たちは新しい人生の一歩を踏み出していく。
命の終わりを知ったからこそ、今この瞬間を大切に生き、周囲の人々に感謝を伝えることが、残された者たちに求められるメッセージです。
「生きる」という楽曲は、命の尊さと、それを失うことの意味を深く考えさせる作品です。
同時に、命の儚さを知りながらも、残された者が生き続けることへの励ましとなるメッセージを含んでいます。
春の再来と「生きる」意味を見つめ直す
「生きる」の歌詞には、桜が象徴する春の訪れが何度も描かれています。
桜は毎年繰り返し咲き、新たな始まりを告げる一方で、その儚い美しさが命のはかなさをも連想させます。
この「春の再来」は、単なる季節の変化以上に、人生における新しいスタートや希望の象徴です。
命の終わりを経験しても、季節は巡り、桜が再び咲くように、人生もまた続いていくというメッセージが込められています。
「さくらは 咲くかな」という歌詞に表されるように、桜は過去と未来をつなぐ橋渡しの役割を果たしています。
春は新しい出発を象徴するだけでなく、失った者たちとの思い出を心に蘇らせる時期でもあります。
そのため、春の再来を通じて、過去を振り返りながらも、これからをどう生きるかを考えるきっかけが与えられています。
また、春は出会いと別れが交錯する季節でもあります。
桜の花びらが舞うように、別れの悲しみもやがて過ぎ去り、また新たな出会いが訪れることを示唆しています。
歌詞に描かれる「君」との別れを乗り越えつつ、春の再来とともに新たな道を歩む決意が感じられます。
春の訪れが持つこの二面性が、人生における希望と再生の象徴として描かれているのです。
「生きる」という楽曲は、春の再来と共に、過去の経験や別れを振り返りながら、再び歩み出す勇気を与えてくれます。
繰り返し訪れる季節の中で、何度でも生きる意味を見つめ直し、命の大切さを実感させる一曲です。
