あなたがいた だから名曲
MOROHA(モロハ)の『六文銭』の冒頭の言葉は、名曲が単に作り手の技術や創造性によって定義されるわけではないことを示唆しています。
それは広く聞き手に受け入れられ、感情を揺さぶり、何らかの感覚を喚起する楽曲が、真に価値ある作品となる。
個人の努力だけでは成し遂げられないこの過程は、見えない聴衆の反応が、その楽曲を価値あるものへと高める。
音楽を奏でる上でこれ以上の喜びはない。
『六文銭』は、MOROHAが誇る『文銭』シリーズの第六弾であり、このシリーズの集大成とも言えます。
六文銭とは、冥界へ渡るための賃銭や、武家である真田家の象徴。
この楽曲には、シリーズのこれまでの一文銭から五文銭に至るまでのエッセンスが織り込まれており、シリーズの完結を象徴しています。
「一文銭」から「五文銭」までは自分たちの話が軸だったんですけど、《あなた》があっての自分たちになったのが大きな違いですね。歌う側が主人公ではありつつ、ヒロインが存在するというか。《あなた》がいないと成立しない曲。そのテーマにも、やっぱりやさしさが感じられます。
UK
言われてみると、そのとおりだね。俺らは性格が悪いから、いっそ「六文銭」でさらに憎しみをぶちまけるべきだったかなとか、今になって考えちゃったりもするけど。
アフロ
インタビューでの発言によれば、『文銭』シリーズの初期作品、つまり一文銭から五文銭までの楽曲は、アフロとUKに関するテーマが中心であり、憤りや直接的な感情表現を込めた歌詞が特徴です。
これに対し、六文銭は「あなた」という存在に対して特別な重みを置いています。
あなたが気高く凛と咲くのなら俺はあなたの土になりたい
あなたの名前を呼びたくなる曲
それを略した 言葉が名曲
目閉じる 誰思う故の名曲
あなたがいた だから名曲
あなたは美しい花、私はその花を育む大地。
あなたの姿を心に描くとき、いや、それだけではない。
あなたがそこにいること、あなたを象徴する言葉を紡ぐこと、あなたを想って詩を歌うこと、それら全てが、MOROHAの『六文銭』を特別な作品にしている理由です。
全員に受け入れられる「名曲」というものは本質的に存在しない。
しかし、ある人にとっての名曲が、その人が親しい人や大事な人であるならば、その喜びは計り知れない。
それが全て。