今回は、緑黄色社会の『Mela!』について深く考察、解説していきたいと思います。
音楽に詳しくない人でも耳にしたことがあるかもしれませんね。
メロディーとボーカルの長屋さんの声が素晴らしくマッチしており、初めて聴いたときからハマってしまう魅力がありますね。
背景
今回の考察では、以下の2つの要点に焦点を当てました。
・ 童話における悪役の象徴であるオオカミ
・ マッチ売りの少女が抱く正義
オオカミとマッチ売りの少女は対照的な存在に思えますが、社会における異端者(一方は悪役、もう一方は貧困層)としてラベル付けされています。
今回の視点はMVから得たものですが、このMVでは、童話の中で悪事を犯してきたオオカミの子孫が、豚や人間が支配する世界で疎外感を抱き、一つの正義観に基づくダークな世界が描かれています。
豚や人間(赤ずきん)、七匹の子羊がオオカミに苦しめられたというのは事実です。
しかし、その結果、彼らの社会システムは(偽善的な)平和を求めた結果、貧困層の「マッチ売りの少女」を生み出してしまいました。
「オオカミは悪だ」という単純化された正義感が広まっている社会は、快適な場所かもしれません。
同じ考えを持つ人々とのコミュニケーションは容易で、倫理観や価値観が一致するからです。
しかし、排他的で名ばかりの正義は多くの人々が思考停止に陥るリスクを抱えており、多くの貧しい「マッチ売りの少女」が無視されています。
これはいわば、ユートピアの先のディストピアです。
最近では、多様性の重要性が強調されていますが、これは異なる考え方や人種から対立が生まれる可能性があるという疑問を抱く人もいます。
しかし、多様性が世の中のバランスを保つ役割を果たしていることも、この歌からの警告から理解できるはずです。
このような背景を考慮すると、この記事を読む際にこれらの観点を心に留めると、考察がより理解しやすくなるでしょう。
共に苦難を乗り越えようという思い
今なんじゃない?
メラメラとたぎれ
眠っているだけの正義
こんな僕も君のヒーローになりたいのさ
曲の内容からは、オオカミが豚や人間が支配する世界の閉塞感を打破するために革命を起こそうとしていることが示唆されています。
MVを見ると、その一端が明らかになります。
特に「君」という歌詞は「マッチ売りの少女」を指し、彼女が売るマッチ箱にはオオカミとの共存を示唆する絵が描かれています。
そのため、彼女はオオカミにとってのヒーロー的存在です。
曲全体を通して、オオカミの性格が弱気であることが伝わりますが、彼は彼女のためにメラメラと気持ちを奮い立たせ、彼女のヒーローになろうとします。
かっこいい君には
僕じゃ頼りないのかなんて
そりゃそうだよな
だって今もこうして迷ってる
オオカミは、社会に反抗してさらなる仕打ちを受けるかもしれないという恐れを感じていると想像されます。
しかし、同時に自分自身の無力さも自覚しています。
豚たちがマッチ売りの少女に目をつけるように、この世界では「オオカミ」という存在がタブーとされており、その肯定さえも危険な行為となることが予想されます。
このような排他的な社会の中で、オオカミは孤立していると言えるでしょう。
手を取ってくれないか
ギブとテイクさ
君が僕のヒーローだったように
そして、迷いながらもオオカミはマッチ売りの少女にとってのヒーローになろうと努力します。
実は、マッチ売りの少女とオオカミの中にある正義は見かけほど似ておらず、意外と異なるものです。
マッチ売りの少女は、以前述べたように「オオカミは悪である」という歪んだ世界の見方を変えたいと願っています。
それに対して、オオカミは自らの社会的地位を守ろうとしている彼女を守りたいと思っています。
この構図自体が、彼らが暮らす世界の偏った価値観に疑問を投げかけているのですね。
今なんじゃない?
メラメラとたぎる
こんな僕にも潜む正義が
どうしようもない衝動に駆られて
ほら気付けば手を握っている
いったいぜんたい
そんなに荷物を背負い込んでどこへ行くの
ねえねえ待って僕にちょっと預けてみては?
オオカミを駆り立てる「彼女を守りたい」という感情が、ついに彼女の手を握らせます。
その感情が湧き出た理由は、次に説明されています。
ここの「荷物」とは、売り物のマッチだけでなく、彼女の正義や宿命、社会的責任なども含まれています。
それを「僕にちょっと預けてみては?」というのは、オオカミが彼女と共に苦難を乗り越えようという思いを表現しています。
リアルな部分に目を向ける姿勢
信じてばかりの僕と
信じることが怖い君と
どちらが正しいのかなんて
誰にも分からないさ
マッチ売りの少女は、オオカミの優しさや弱さを理解しているからこそ、自分の力だけで立ち向かおうとしていることを意味します。
彼女は、オオカミを頼らずに自分の力で事態を打開しようとしています。
そして、オオカミが傷つかないように身を挺しているのです。
彼女の行動は健気であり、二人とも幸せになってほしいと願ってしまいます。
この場面でも、異なる考え方や多様性を尊重する表現がありますね。
僕らだけの世界
ギブとテイクさ
補い合えた時には同じ夢を見たい
豚たちの歪んだ正義に左右されない、二人だけの世界を指していますね。
お互いの正義や能力で相手の欠点を補うことによって、誰もが幸せになれる理想の世界を夢見ています。
異なる考え方や能力が存在する世界では、無力な存在はなく、悪い側面しかない人間も存在しません。
多様な視点から見れば、誰もが何かしらの長所を持ち、良い面も持っているはずです。
君はかっこいいと苦しめて
ひとりぼっちにさせたのは
少し僕のせいなんだよなごめんね
だけど見るべきはリアルだ
抱えないで信じて頼ってほしいんだ
オオカミは、マッチ売りの少女に過度に依存してしまったことで、彼女がそのイメージに縛られて一人で頑張ろうとする気持ちになってしまったことを後悔しています。
そして、彼女の真実の姿を見る必要があると気づき、彼女を信じて彼女を支えたいと思っています。
オオカミが彼女のリアルな部分に目を向ける姿勢は、彼らの世界とは異なるものです。
一方で、自己中心的な考え方を持つ豚たちは、貧困に苦しむ「マッチ売りの少女」という現実を見ようとしていないのです。
今なんじゃない?
メラメラとたぎる
こんな僕にも潜む正義が
どうしようもない衝動に駆られて
ほら気付けば手を握っている
ほっておけない
そんなに荷物を背負い込んでどこへ行くの
ねえねえ待って僕にちょっと預けてみては?
こんな僕もヒーローになりたいのさ
マッチが重要な役割
話は少し逸れますが、MVではマッチが重要な役割を果たしています。
童話「マッチ売りの少女」ではマッチは幸せな理想を見るための道具として登場しますが、MVではオオカミと少女が描く理想を実現するための革命のツールとして扱われています。
また、MVは常に夜で、ネオンライトで溢れた街はどこか閉塞的な雰囲気を漂わせていますが、彼らの正義が街中を駆け巡り、温かなマッチの光で照らされていきます。
通常、ネオンライトよりも光量の少ないマッチですが、彼らだけであれば小さな炎でも、メラメラと周囲に広がれば、それはネオンライトよりも大きく、激しい輝きとなります。
いかがでしたか?
最後までお読みいただきありがとうございました。