【melt(with suis from ヨルシカ)/TK from 凛として時雨】歌詞の意味を考察、解釈する。

凛として時雨のボーカルTKこと北嶋徹さんのソロプロジェクト TK from 凛として時雨が、デジタルシングルとして世に放った楽曲「melt(メルト)」。
近年若者を中心に人気を集めるヨルシカのボーカルsuis(スイ)さんとコラボレーションしたとあって、大きな話題を集めました。

suisさんは、この曲をレコーディングした後から「胸が苦しい」状態にあったと語っており、今回は当事者さえも精神を揺さぶられるこの曲の歌詞に触れながら、考察していきたいと思います。

「melt」の意味とは?

曲名になっているmeltには「溶ける」という意味があります。
北嶋さんはインタビューで、suisさんの歌声について「すっと近くで溶けていくような 遠くへ離れていくような儚さ」と語っていることから、この「溶ける」という言葉を曲名にしたと考えることができるでしょう。

この曲では「溶ける」とはどういうことなのか、歌詞を見ていきたいと思います。

歌詞の考察①「僕」が「君」を留められない様子

この曲には「僕」と「君」が登場します。
僕は次のように考えているため、何かの行動を躊躇っている様子がうかがえます。

この時間をカプセルに閉じ込められるのは 永遠のフリをした儚い一瞬だ

答えを導き出そうとすれば 二人は粉々に溶けてしまうから

そして、「君は違う世界の腕に消えていく」とまで考えていますが、「僕だけが操れる時間が君の手を掴んだ」とあるように、「君」にとっての特別な存在であることを示しており、「暗闇と光を縫い合わせた 曖昧な愛みたいな感情」を持ち合わせています。

ここまでの歌詞をまとめると、「僕」にとって「君」は大切な存在であるが、何かしらによって報われる可能性が低いと読み取ることができます。

歌詞の考察②「あなた」との永遠が無いとしても今だけ「永遠」を願うさま

2番はsuisさんの歌声から始まります。
1番は北嶋さんでしたので、この時点で1番は男性の視点、2番は女性の視点を描いていると感じる方も少なくないのかもしれません。

心があなたを見つめていても 世界があしたを連れて来てしまう

このような歌い出しとあって、「君」も「僕」を留められない存在であることが分かります。
それでも二人は抗うように、「永遠」に「僕らを飲んでくれ」と願うのです。

次にくる歌詞「誰よりも離れたこの場所で抱き締めて 誰よりも近くで溶け合う」は、この楽曲の真髄なのかもしれません。
遠く離れているのに、「抱き締める」「近くで溶け合う」という行為は、もはや「魂」や「心」といったものの交流でしか成し遂げられないように思います。
従って、「僕」と「君」は魂の交流を続けますが、「無言で有限」「永遠が溶けるまでの永遠」という歌詞のとおり、その交流さえもタイムリミットが迫っており、「まだ溶けないで」と祈っています。

やがては「宇宙の中心へ」。
「僕」と「君」の魂の交流は、時間という概念に囚われにくい宇宙に到達すると感じるほど永遠を感じられたと考えることができるでしょう。

歌詞の考察③「僕」と「君」の物語の結末とは

まずは最後のフレーズに「Will miss you kill “miss you”」とありますが、killというと物騒な方の意味と捉える方も多いかもしれませんが、歌詞の流れからしてここでの意味は「苦しい」となり、「君がいなくて苦しい」と考えることができます。
それを裏付けるように、meltのMVでは最後に2つの光のうち、一つが消えてしまうことから、「君」は世界から消えてしまったと捉えることができます。

そのため「僕」は、「光よ未来を照らさないでくれ すべてが溶け出して消えてしまう」と、自身だけにある未来を光は照らすも、「君」の存在はその光と一体となり、消えてしまうことを恐れている、と捉えることができるのではないでしょうか。

この曲は大切な人、もしくは自身の中にある大切なものとの訣別の歌であり、その所々に胸を掴まれる切なさが散りばめられています。
suisさんの胸を苦しませたのも、こういった理由があるのかもしれません。

コラボレーションという意味での「溶ける」とも捉えられる

北嶋さんは、このmeltが入ったアルバム「彩脳」をリリースした際のインタビューで「自分の脳で描けない角度から自身の音や言葉を見てもらいたい」と言い、そのために様々なアーティストとコラボレーションした経緯を語っています。

このように、北嶋さんの楽曲に「他者を介在させる」ということも「溶ける」や「融合」といったニュアンスで捉えることができ、アルバムの中でも早い段階で仕上がったmeltはその象徴であるのかもしれません。

様々なアーティストの参加人数が過去最多となったアルバム「彩脳」は、まさに北嶋さんの新境地ともいえる一枚です。
meltのように多彩な才能の融合によって生み出された楽曲が詰まっていますので、気になった方はチェックしてみてくださいね。

まとめ

TK from 凛として時雨とヨルシカのsuisさんのコラボレーションが実現した楽曲「melt」は、切なさに胸を締め付けられる訣別の歌であるのかもしれません。
ただ、その切なさや儚さの裏にある美しさや繊細さは、このコラボレーションがなければ実現しなかったでしょう。

聴く度に表情を変える不思議な曲ですので、繰り返し聴いて新たな発見をしてみると良いかもしれません。