「supernova(スーパーノヴァ)」はBUMP OF CHICKEN(バンプオブチキン)の11番目のシングル曲です。
この曲名は『超新星爆発』を意味し、恒星が滅亡する前に放つ大きな光を指します。
作詞作曲を手がけた藤原基央さんは、この最後の光に大きな意味を見出し、曲名にしました。
記事では、藤原さんがなぜ「supernova」というタイトルを選んだのか、そして「supernova」の歌詞の意味と制作エピソードについて解説します。
曲が持つ重要な意味に気づいたメンバー
2005年、BUMP OF CHICKENは「カルマ」のCDリリースを予定しており、藤原基央さんは「カルマ」のカップリング曲として「supernova」を作曲しました。
”カルマ”がシングルって確か決まっていて、そのカップリングの曲を書かなきゃみたいな感じで書いたのがこの曲だったんです。だから”ロストマン”の時みたいに、そんなに一生懸命ああでもないこうでもないとやったわけでなく、わりとサラっとできて。
藤原基央
藤原さんは過去にも、スタッフから「カップリング用」として依頼された曲を作曲したことがあります。
「睡眠時間」「乗車権」「銀河鉄道」などがその一例です。(「乗車権」は完成後に曲調を考慮してアルバム収録にされました。)
藤原さんは歌詞を書いた後、最終的に「supernova」というタイトルを付けました。
彼は「天体観測」の時から、《supernova》という曲を作りたいという考えを持っていました。
『天体観測』くらいのときからずっと“supernova”という曲はやってみたいと思ってたんですよ。なので僕の中ではすごい歴史の古い言葉ですね。
藤原基央
藤原さんは「カルマ」「メーデー」「R.I.P.」など特定のキーワードに強い印象を持ち、それを基に曲を作ったり、タイトルに取り入れたりすることがあります。
「カルマ」のレコーディングが終盤に差し掛かったある日、藤原さんの声の調子が思わしくなく、ボーカルの録音を中止することになりました。
その代わりに、「supernova」のデモ音源をメンバーに聴かせました。
「カルマ」の歌入れのときに、まったく声出なくて、「駄目だ、今日歌えねえや」ってなって。でも、せっかくスタジオ取ってるし、時間もったいないし、「あぁ、もう一曲出来てるよ」って。「それのデモを今録っちゃおうよ」ってことでやったんです。
藤原基央
カップリング曲として作られた「supernova」ですが、レコーディングを経て、その曲が持つ重要な意味に気づいたメンバーは、両A面シングルとして発表することを決定しました。
「今を歌う」概念
「supernova」とは、英語で「超新星爆発」を意味する天文学用語です。
超新星爆発とは、星の寿命が尽きる際に、大量のエネルギーを放出してしばらくの間、明るく輝きながら最期を迎える現象を指します。
ただし、地球から観測される超新星爆発の光は、何万光年も何億光年も離れた位置にあるため、実際に我々がその光を目にする時点で、その星は既に消滅している可能性があります。
藤原さんはこの「見えているものが既にない」「いなくなった後に気付くこと」に対して、切なさや深い感情を抱いていると語っています。
この”supernova”の感覚は、もうちっちゃい頃からあるんです、ほんとに。なくなった時に絶対大事だって思うんだから、そういうものに気付いていきたいんだっていう切ない気持が、ほんとにちっちゃい頃からあります。
藤原基央
「supernova」の歌詞では、消えた後や変わった後に気付く超新星爆発の概念を詳細に歌っています。
君を忘れた後で 思い出すんだ
君との歴史を持っていた事
君を失くした後で 見つけ出すんだ
君との出会いがあった事
そして、藤原さんの伝えたいメッセージは次の歌詞にまとめられています。
君の存在だって いつでも思い出せるけど
本当に欲しいのは 思い出じゃない 今なんだ
藤原さんは、「なくした後に後悔しないために」という防衛策ではなく、「なくした後に感じる大切さを、なくす前に気付いてあげよう」というメッセージを歌っています。
この「今を歌う」概念は、藤原さんが初めて日本語詞で書いた「ガラスのブルース」を含む、BUMP OF CHICKENの多くの楽曲で歌われています。
僕はいつも唄を歌うよ
ガラスのブルース
僕はイマを叫ぶよ
イマというほうき星
天体観測
君と二人追いかけてる
BUMP OF CHICKENのサウンド
「supernova」のレコーディングは2005年秋に行われました。
藤原さんが制作したデモテープの段階で、大まかなイメージが共有されたため、通常の制作よりも早く本番のレコーディングに取り掛かりました。
藤原さんは「supernova」の作曲時に、ゴスペルをイメージしました。
BUMP OF CHICKENの楽曲には「Ever lasting lie」「angel fall」など、ゴスペルをテーマにした曲があります。
この曲は、BUMP OF CHICKENのメンバー全員でコーラスを入れる楽曲としては初期の作品になります。
2005年夏、愛・地球博でのアコースティックライブ出演のため、ベーシスト・直井由文さんはウッドベースを手に入れていました。
その流れで「supernova」にもウッドベースを使用することを考えましたが、藤原さんから安易であると指摘を受け、エレキベースに変更しました。
「この曲にはウッドベースしか合わねえんじゃないか」って、勝手に思っちゃって。ウッドベースしか触ってなかったんですよ、リハでも。
直井由文
しかし、エレキベースに持ち替えた直井さんの演奏が硬くなってしまいました。
そのため、藤原さんはレコーディングブースに入り、直井さんの隣で打楽器やカホンを叩きながらベースの録音を行いました。
パーカッションで使った打楽器があったんですけど、それをペシペシ叩きながら(同じ部屋に)居たんです。なんだかんだで、一番大事なのは“気持ち”ですからね、音楽は。
藤原基央
藤原さんはギターだけでなく、ベースやドラムも含めた制作の指揮を執っています。
これはまさに、BUMP OF CHICKENのサウンドの中心が藤原さんであることを象徴しています。
この瞬間が大切だということに今気付こう
「supernova」はBUMP OF CHICKENの楽曲の中でも頻繁に演奏されています。
特に、ライブの終盤でセットリストに組まれることがよくあります。
藤原さんはリリース当初から、「supernova」がライブでの重要な役割を果たすだろうと予想していました。
そして、その曲がどのように成長していくかを楽しみにしているコメントを残しています。
この先、ライヴなどでずっと付き合って行くわけなんですよ。少しずつ、曲と俺らとレスポンスして、喧嘩したり仲良くしたり、上手く行けばお互いを育て合えたり、お互いがお互いを殺し合っちゃったりしながら、関係という歴史が築かれて行くわけですよ。それにすごく興味があります。ずっと将来、「supernova」と俺らがどうなってるのか、一歩一歩の階段を踏んで行くことが楽しみです。
藤原基央
BUMP OF CHICKENのメンバーは、「supernova」のライブでの重要性を認識し、必ずセットリストの最後の方に演奏しています。
ライブでは割と終盤の肝になってくる曲ですね。
藤原基央
ライブが終わってから、「もっと楽しめばよかったな」とか「もっと声を出せばよかったな」と後悔する人もいるかもしれません。
そんな人に向けて、藤原さんは最近のライブで次の歌詞を追加しています。
君の存在だって いつでも思い出せるけど
本当に欲しいのは 思い出じゃない今なんだ
今日なんだ
この瞬間が大切だということに今気付こう、というこの歌のメッセージはライブの終盤に演奏することで説得力が増し、さらに会場全体で「ラララ」を歌うことで深く共有されます。
まとめ
「カップリング用」として書かれた「supernova」が、こんなにも重要な意味を持つ曲になるとは、藤原さんの作詞の才能にただただ驚かされます。
もしライブで「supernova」の合唱に参加する際に、今回の記事のことを少しでも思い出せば、また違った聴き方ができるかもしれません。
以上、BUMP OF CHICKEN「supernova」の歌詞の意味と制作エピソードの紹介でした。